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ヴェルディ「運命の力」の公演から

先週からクリスマス休暇に入り、今はデュッセルドルフに戻ってきてボッーと過ごしています。

二週間前に聴いた「大地の歌」が余りにも素晴らしかったので、その頃からボッーとしている状況はなんら変らないのですが。・・・

暫く音楽も聴きたくなかったのですがチケットを入手していたこのプレミエの公演日がやってきました。
ミュンヘンのオペラは通常二ヶ月前に前売りが始まるのですが、
今回の様に人気絶頂のカウフマンなどが出演する場合は書面で申し込みます。
選出方法は分からないのですが取得できたら自動的に銀行から金額が引き落とされチケットが送られてくる仕組みです。

そんな訳で、折角カウフマンが聴けるので重い腰を上げて出かけました。

まぁ内容はドロドロした話で、そこまで運命に操られるのかと、そのシツコイ執念にはウンザリしながらも、
さすが音楽はヴェルディですし聴きどころも満載で楽しめるものです。

それにこの序曲が素晴らしい、・・・
これを聴きたさに暫く色んな公演を追っかけたことがあったほどです。

そのキッカケになったのはケルンで聴いたムーティとウィーン・フィルの公演でした。
この日はハイドンとスクリャービンのシンフォニーを演奏した後に、アンコールとしてこの曲が演奏されました。
アンコールですから事前に何の曲を演奏するのかは分かりません。

冒頭のファンファーレ三連音が鋭く研ぎ澄まれた響きで見栄を切った瞬間、恐ろしいほどの静寂が続き、
エッ何だろうこの緊張感はと唖然とするばかりでした。
意識的に取れるだけ長く続いたフェルマータにもう一度三連符が被ると、
緊張感あふれる刻みで弦楽群がグイグイと突き進んでこのドラマチックなオペラの内容を予感させます。

この全体を包む緊張感、それに高揚感は演奏している彼らにも予想が出来なかった程で、
オペラの序曲であることを忘れさせ、あたかも内容の深い大曲を聴かされたような感動に包まれました。

こんな演奏を聴かされたら又聴きたくなるのが人情です。
その後このオペラを初演したペテルスブルグ歌劇場のゲルギエフもウィーン・フィルとこの曲を取り上げましたし、
メータが振ったウィーンでのオペラ公演や最後は何とムーティがもう一度ウィーン・フィルと演奏する機会があったので聴きましたが、
残念ながらこのケルンでの衝撃的な演奏を超えるものには出くわせませんでした。

いや、思い出しただけで興奮してきたので、今公演とは関係のない事を長々と書いてしまいました。

全体としては歌手も揃っていたし、指揮者のアッシャー・フィッシュもキビキビと締りのある指揮ぶりで
この長いオペラにも関わらず最後まで緊張感をもって演奏していました。
処で、このイスラエル人指揮者、直訳したら「灰まみれの魚」とちょっとユニークな名前ですね。

演出はMartin・Kušej(クーゼフ?チェコ名で良く分かりません)、
オーストリア出身の演出家でブルク劇場を初め長らく演劇の演出をしていた人らしく、やはり一筋縄では行かない手法でした。

以前もここのオペラでの「ルサルカ」では鹿を殺すシーンがあって物議を醸しだし、
とうとう初日までには変更を余儀なくされた経由もありまいた。

この演出も時代をほぼ現代に設定し、衣装も今日風、兵士たちも迷彩服に自動小銃と今日そのままです。
一幕め最後の場面では争う積もりがない意思表示の為、アルバーロが床に落とした銃が暴発し、
偶然命中してしまったお父さんが死んでしまいますが、そのシーンではレオノーラの兄にあたる役者が最初は子供で
パニック状態の中、舞台の袖に出たり入ったりする度に段々と大きく成長して行き幕切れではすっかり大人に成人していました。
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そして、二幕目カーテンが開くと中年までに成人した男性(ドン・カルロ)がお父さんの脇に座っていて、
相当な時間の経過を上手く表現していました。
唯、このお父さんはズート横たわったまま放置されていて、
あれだけお父さんの事を思うが故に復讐に生涯を捧げた割りにはおろそかな扱いをされていました。
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三幕目の戦場でのシーンから物語は複雑に展開して行きますが、状況の説明的な演出も上手くスピーディに表現され、
この余りにも偶然が重なっていく展開も不自然な印象を与えませんでした。
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そして、この数奇な運命の糸口となってしまう、僧侶の役には再びお父さん役だった歌手が登場し、
この悲劇の原因となった役と再び結びつける結果となってしまう役の象徴のような存在となっていました。

普通ならば絶対に会うことなどなかった三人が最後に結び付けられ、
復讐の鬼と化した兄は断末魔にも関わらず妹のレオノーラすら刺してしまいますが、
このシーンではびっくりするほど血が吹き飛びます。

この悲劇オペラの象徴のようなシーンなのでこの様な演出になったのかも知れませんが、
我々音楽ファンはあくまでもオペラと云うジャンルとして観に来ていますので、
ここまでリアルな表現が必要だったのか、ちょっと疑問に感じました。
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歌手陣はカウフマン初め良く歌いましたし、演技も熱のこもった力演でした。
特にレオナーラ役のアンニャ・ハルテロスは声に張りがあり、フワッと抜けるような高音の伸びが素晴らしく大きな喝采を浴びていました。
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ドラマの内容は重くて、「そんな事ありっこないよ。・・・」と思いながらも、
さすがヴェルディだけに音楽には感心しながら彼の作品にしては長い上演時間でしたが、
最後まで飽きずに集中して聴くことができました。

by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2013-12-31 02:02 | Trackback | Comments(0)
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