カテゴリ:ザルツブルク( 6 )

「久しぶりのザルツブルク」

先週は久しぶりにザルツブルクへ行ってきました。

それは日本のある会社がオーストリアの会社と合併して10周年になるそうで、
その記念行事の会場の下見と打ち合わせのため工場のあるGollingというザルツブルクから60kmほど南の小さな村まで行ってきました。

ザルツブルクの空港で日本からの一行と合流するため待ち合わせをしたのですが、
彼らが到着するまで3時間近くもあったので、屋上にあるカフェ・テリアでボーッと過ごすことにしました。

小さくて長閑な飛行場ですが、どこにでも飛行機好きがいるようで、
そこそこの人たちが手摺沿いの良く見える席に陣取っていて発着の度に立ち上がってはカメラを構えていました。

発着といっても殆どが小型の自家用機で中型の旅客機などは1時間に1本位しか発着していません。
事実私もプロペラ機でのフライトでした。

滑走路の向こうにはホーエンザルツブルク城が丘の上に望めますので市内から近いことが伺われます。
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時折飛び立つ自家用機を見ながら、「そう言えばかつてここからカラヤンも飛んで行ったんだなぁ~」と思いを馳せていました。
自らジェット機を操縦してウィーンやベルリンへ向かったのでしょうね。・・・
まぁ便数が少ないのでこの方が便利だったのでしょう。
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さて、無事合流をしてGollingへと向かいました。
その内の一人はヨーロッパが初めてだそうで、
牧草地を背景に点在する山々のパノラマに「ワ~、ジオラマみたい・・・」と、ちょっと興奮気味でした。

ゴーリングでは、会場候補のホテルで会食となりましたが、オーストリアの会社からも4人ほど出席していて
偶々来ていた技術者の人たちも交え、総勢10数人というものでした。
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このホテルのコックさんはオーストリアを代表するような人だそうで、メルケルさんも食したそうですし、
演出家のオットー・シェンクも時々宿泊しているようです。
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料理はコースを頼んでいたようで、可愛く盛られたお通しらしき小鉢から始まりました。
出てくる度に色々説明がなされ中々凝った料理に見えます。

「フム・フム どんなお味か・・・」とワクワクとしながら口に運びました。
「フ~ム・・・」 まぁ次の料理に期待をしました。

そんな訳で、其々上品な味付けで美味しいのですが、何かインパクトに乏しい印象でした。

翌日は候補になっている他の会場の視察をしたり、タップリと打ち合わせをして一日が終りました。

最終日はザルツブルクへ戻り、フライトまで時間があったので市内をブラブラして時間を過ごす事にしました。

先ずはミラベル庭園を目指しましたが、お天気も良く団体の観光客でもの凄く込み合っていました。
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団体を避けるため脇道に入った処、そこはちょとしたスペースの野外劇場になっていました。
ここへ迷い込んだのは初めてだったので、興味深く眺めていました。
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恐らくこの宮殿が建てられた1600年代から存在していると思われますが、小さいながらちゃんとオーケストラ・ピットもあるし、
植え込みが上手に設計されていて袖からの出入り口になっています。
ステージ奥の植え込みも湾曲をしていて、ちゃんとクッペル・ホリゾントの役割をはたしています。

昔、「舞台におけて宮殿の庭園シーン、(例えば「フィガロの結婚」の4幕目など)では
貴族は上手(右側)から出入りし、
庶民は下手からでいりするのが、基本的な演出方法だった。」と聞いたことがたったのですが、なるほどここでも宮殿は右手に建っています。
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感慨深く眺めていると、何処からともなく、ゆったりとした甘いメロディが流れてきました。
良く聴いてみるとモーツァルトのクラリネット協奏曲の2楽章です。
聴こえてくる方へと向かうと、音楽学生らしき二人のクラリネットでデュオをやっています。
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余りの心地よさに近くのベンチに座ってボーッと聴き入っていました。
この甘ったるくて気だるいクラリネットの音に、疲れもあってか本当に眠ってしまいそうになりました。
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小一時間ほどボーッとしていたでしょうか、イヤイヤ我に帰り旧市街へと歩を進めました。

ドーム前の広場では「イエダーマン」の仮設ステージが設置されていて、いよいよ今日から音楽祭が始まるようです。
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客席には解説者らしき人がTV中継用に解説シーンの撮影をしています。
たった一人ですが、ちゃんとコーディネーターさんとメイクの人もいて、「おお・いよいよ今日からか・・・」と思わされます。
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まぁ祝祭劇場へも回っておこうかと、先ずはザンクト・ペーター教会の方へと向かいました。
この入り口には岸壁下に古い水車があり、その脇には旧パン屋と書かれた看板があって、いまでもパン屋として営んでいます。
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その脇の門からは墓地になりますが、ここも岸壁にへばりつくような教会が建っていたり、趣があります。
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暫く歩いていると何処からともなく今度は大きなトランペットやティンパニーの音が響いてきました。
どうも教会内から聞こえてくるようです。
正面入り口に回ると中から立派な響きがこだましてきました。

たぶん今夜、この教会である演奏会のリハーサルをやっているようです。
ポスターを見るとこの教会付けオーケストラで演目はシューベルトの「ミサ ト長調」とありました。
まぁセミプロ級とはいえ中々の腕前で、歌手達も良く歌っています。
それに教会ですから響きが良く回るし、綺麗に消え行く残響はいつしかアリガタイ気持ちになり、
ちょっとグッと来るものがありました。
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音楽祭では特にオペラは劇場の間口が広く見応えがあるのですが、
如何せんチケット代がべらぼうに高く、我々庶民には中々手がでません。
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今月末には又行くことになると思うので、チャンスがあったら観たいものです。

何時かのようにキャンセルされたチケットを売りに来たホテルのドア・ボーイから格安に値切って買ったことを思い出します。


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by Atelier-Onuki | 2017-08-01 22:58 | ザルツブルク | Trackback | Comments(0)

「ザンクト・ヴォルフガング」にて

さてザルツブルク方面への帰り際、ザンクト・ヴォルフガングへと立ち寄りました。
ここへはかつてザルツブルクから“ザルツ・カンマーグート周遊”とか“サウンド・オブ・ミュージックを巡る”
なんてツアー・バスに乗って来たことがありました。
もう随分前の事ですが、歩いてみると「あぁここへもきたなぁ~」とそこそこ記憶に残っているものです。

バス停のすぐ前に登山鉄道を発見しましたが、昨夜山の方では雪が降ったそうで始発は12時までないそうです。
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諦めて次のバスで帰ろうと待ち時間に町をウロウロして戻ってきた処、何と急に1時間早まって11時に出発と変更されていました。
こりゃ折角なので慌てて乗ってみる事にしました。
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この登山鉄道のことは知らなかったのですが、あの「サウンド・オブ・ミュージック」の冒頭部分で草原を走るマリアをヘリから追っかけているシーンと
「ドレミの歌」の直前に出てくるシーンはこの山の途中で撮影されたそうです。
と云う事は、マリアはこのザンクト・ヴォルフガングの修道院にいたのですかね。?

この登山鉄道は“Schafbergbahn”(羊山鉄道?)といってオモチャのような蒸気機関車が押し上げて行くシステムです。
1893年に開業し当時から有名だったそうで、ひょとしたらその頃この辺を訪れているブラームスやマーラーも乗った可能性は充分考えられます。

列車はほぼ満席状態ですが、夏場のハイ・シ-ズンは予約をしないと乗れないほど込み合う人気鉄道だそうです。
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機関車はゆっくりと力強く動き始めました。
それにしても相当きつい勾配で「大丈夫かなぁ?」と心配になるほどです。

暫く森を抜けると左側にヴォルフガング湖が見えてきて、あちこちから「ウォー!」と歓声が上がっています。
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山の中腹辺りからは雪が積もり出し、後ろに座っていたアメリカ人一家は「snow・snow!!」と大はしゃぎをしています。
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途中Schafbergalpeの停車駅には山小屋が建っていますが、この光景は決して5月とは思えず、まるでスキー場へ来た感じです。
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列車はやっと終点のSchafbergspitzeに到着、ここから更に頂上に建っているホテルを目指すのですが、
雪がくるぶし辺りまで積もっていて歩くのも大変です。
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殆どの人達がこのホテルで一休みをするため登って行きます。

ここで一息を付いて、ホテルの裏側まで歩いて行きましが、ここからの眺めが絶景でその険しい崖淵のせいもあって緊張感溢れる素晴らしい景色でした。
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遠くモント湖やアッター湖それに振り返ればヴォルフガング湖と数々の湖を眺望することができました。
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それに山の途中から下の方は雪が段々となくなり木々が生い茂り、
その更に下の方からはゆっくりと春の訪れが進んでいる光景をまざまざと見ることができました。

それ程期待せずに行ったのですが、これはスイスのロート・ホルン鉄道に匹敵する面白さでした。

ちょっと慌しく訪れましたが、大満足をして下山しました。


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by Atelier-Onuki | 2014-05-16 22:43 | ザルツブルク | Trackback | Comments(0)

ブラームスとシュトラウスは・・・

「変えれぬものは、変えられぬ 唯忘れる事のみ幸せかな!」と云ったのは
あの優美なワルツや楽しく軽妙なポルカを作曲したヨハン・シュトラウス二世でした。
彼は作曲された曲想とは裏腹に、とても考え込み思い悩む性格でした。

一方で楽想にそのままの性格が現れているブラームスは渋くて奥深い人でした。

この全く違った趣の音楽を作曲した二人は時を同じくしてウィーンで活躍をしていましたが、その似かよった性格ゆえ、
自然と交流が始まり意外と仲が良かったようです。
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事実ブラームスは8歳年上のシュトラウスに対し、(どう見てもブラームスの方が年上に見えるのですが・・・)
その卓越した管弦楽法には大変敬意を払っていたようです。

ある時シュトラウス夫人が扇子を差し出し、ブラームスにサインを求めた処、五線を引いた上に「美しく青きドナウ」の冒頭を書き、
「残念ながらブラームスの作にあらず。」と書き記したそうです。

そんな二人もシーズン中は演奏家としても忙しく、作曲は主に夏休みの休暇中に集中して作曲されたようです。
彼らもマーラーと同じく「夏休み作曲家」とも言えるでしょうか。・・・

そんな中、彼らはザルツカンマーグートの“バート・イシュル”へ良く出かけたようです。
ここは文字通りBad(温泉)が出るので古くから保養地として栄え皇帝フランツ・ヨーゼフも毎年夏に訪れています。

今から120年ほど前のある年、バード・イシュルで作曲されていたブラームスのピアノ三重奏の二番が、
ここよりもっと山奥に入ったAltaussee(アルタウス湖)湖畔に建つワグナーさんと云う人の館で試演される運びになったそうです。

この湖は山奥だけにまだ訪れる人も少なく、ちょっとした秘境だそうです。
この館も今はホテルになっているとの事で、ちょっと寄り道することにしました。

アッター湖のシュタインバッハからバスでWeissenbach(バイセンバッハ)で乗り換え先ずはバート・イシュルを目指すのですが、
時刻表を見るとこのバイセンバッハからのバスには”Rufbus”と書いてあって乗りたいバスの
一時間前に電話を掛けて確認をしなければなりません。

恐らく普段から乗客が少ないのでこんなシステムになっているのでしょう。

誰もいない停留所でちょっぴり不安になりながら待っていると、暫くして来ました来ました・・・
まるでタクシーのようなミニバンがやって来ました。

ミニバンはドンドン山道に入って行き延々と景勝路線を走ります。
結局はバート・イシュルに到着するのに40分もの道のりでした。
たった一人の乗客のためにわざわざやって来てこんなにも長い距離を走ってくれ、
とても申し訳ない気持ちになり何度もお礼の言葉を掛けることになりました。
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バート・イシュルで少し時間があったので町をブラブラしてみました。

さすが保養地だけあって小さいながらも活気があり建物も様式が整っていて趣きがあります。
歩行者天国の一角にファサードがピンク色の”Zauner"という可愛いカフェが、・・・
看板には双頭の鷲のマークと共に“Hofzuckerbäcker”と書かれていて、ここが皇室ご用達である事を示しています。
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ここで軽く昼食を取ることにしました。
内装も伝統的なウィーン風ですが、何処となく地方色も漂わせています。
ここに限らずザルツブルクやインスブルックにあるウィーン風のカフェでも同じような事を感じるのですが、
やはり何処かにローカル独特の雰囲気が加味されているようです。
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さて、一息入れたので、ここから列車に乗って更に南東へ、途中ハルシュタットを湖越しに見ながらBad Ausseeを目指します。
ここからはバスで30分ほど乗れば終点がAltausseeです。

このBad Ausseeも鄙びていますが、温泉が出る関係上ここも保養地だったそうで、あのクララ・シューマンも滞在しています。
「ひょっとしてそんな事もあったのでブラームスはここまでやって来たのかなぁ~」と勝手な想像をしていました。

Altausseeはこれだけ奥に入っているので流石に鄙びた村です。
水も綺麗で何でもここの水は飲めるほどの純度だそうです。
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それとこの湖はヒットラーの財宝が何処かに埋蔵されているとの噂もあります。
何でも塩鉱の奥深くには美術品の数々が、そして湖の奥底には金塊がとの事です。
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ここを訪れた音楽家はブラームスのみならず、マーラーもこの近くで「少年の不思議な角笛」や交響曲の4番の一楽章を作曲していますし、
リヒャルト・シュトラウスもホーフマンスタールと訪れていたようです。
もっともマーラーは何度もバート・イシュル滞在中のブラームスを訪ねていますし、
この辺は辺鄙な所にも関わらず一時ちょっと大作曲家達で賑わっていたのですね。
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さて、ブラームスが滞在した館には、ピアノ三重奏が試演された部屋が「ブラームス・サロン」として残っています。
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湖が見渡せる落ち着いたサロンでブラームスの肖像写真を始め、関係者など当時の写真が飾られています。
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その隣の部屋からテラスに出られるのですが、そこはガラス張りの明るく心地よいウィンター・ガーデン風になっています。
しかもここが喫煙サロンになっていて、殆ど利用する人もなく当然ながら我が隋一の「お気に入り部屋」となりました。
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I-phoneを取り出し当時を偲びながら聴くピアノ・トリオは至福の一時をもたらしてくれました。

そうそう、この二人はウィーンの中央墓地に行ってまでも仲良く隣り合わせに眠っています。
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一方はドナウの乙女たちに囲まれ、片や今なお悩み続けるように・・・

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by Atelier-Onuki | 2014-05-12 00:50 | ザルツブルク | Trackback | Comments(0)

マーラー「アッター湖の作曲小屋」

「もう眺めなくても良いよ、それらは全て曲にしてしまったから。」と
マーラーの招きで初めてこのアッター湖畔を訪れ、険しい山々に感嘆しているワルターに語りかけられました。
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それは交響曲3番の一楽章を指しているそうですが、
この曲を初め凄い気合を入れて作曲された2番と共にこのアッター湖畔のシュタインバッハで作曲されています。

それにしても当時33歳だった彼はハンブルクの音楽監督だったので、
よくもまぁこんな辺鄙な所まで遥々やって来たものだと感心してしまいます。

それはマーラーの三つある作曲小屋の最初にあたり、きっと誰かの紹介があってこそ来れたのではないでしょうか。・・・

「一度は訪れてみたいなぁ~。」と長年思っていましたが、ちょっと行き辛い所だったので行きそびれていましたが、
何とかミュンヘンにいる内にと意を決して出かけました。

先ずはザルツブルクを目指しますが、この南バイエルンやオーストリア方面へは最近”Meridian”
と云う第三セクターが運営する様になり、列車は新しく綺麗になったし、何と云ってもスピード・アップされて快適です。
今までは2時間半の所要時間が30分も短縮され、「これは楽になったなぁ~」と実感できます。
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ザルツブルクでウィーン行きに乗り換えVöcklabruck(フェックラブルック)からバスに乗り継ぐのですが、
ウィーン行きと聞けば何だかこのまま乗り過ごしてウィーンまで行きたくなります。

バスは小さな村々や田園風景を抜け30分ほどでアッター湖畔を走りだします。
湖の南方に位置するシュタインバッハのSeefeld地区に入ると目的地はもう直ぐです。
Gasthaus Föttinger (ガストハウス フェッティンガー)とホテルの名前が付いた停留所で降りれば目の前にそのホテルが建っています。
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マーラーが来た当時からは名前が変更されましたが、正にこのホテルに滞在しています。

ホテルのレセプション脇のショーケースにはマーラーに関する資料などが展示されていて
「おお、これだこれだ!」と改めてその実感を感じ取っていました。

正面の壁にも肖像写真が掛けられていて、益々雰囲気を盛り上げています。

横にある小さなバーの入り口には、あのフリードリッヒ・グルダのポートレート写真も飾られていて、
「おお、彼も来たのだ!・・・」と暫く眺めていました。

階段室の一角にはピアノを中心に彼が滞在した当時の調度品が展示されていて、往時をしのぶ雰囲気を醸しだしています。
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暫く休息をして、いよいよ湖畔に建っている作曲小屋へと向かうことにしました。

ホテルの裏庭へ回るとそこはキャンピング場になっていて、キャンピングカーがずらりと並んでいます。
中にはここに住んでいるのかと思われるような人たちもいて、小さな家を増設したり、ちゃんと庭を造って花々を植えているところもあります。

昔見たことがあるマーラーが来たころの写真では周りに何もない光景でした。

まぁある程度は覚悟はしていましたが、「やはりここもか・・・」とちょっと寂しくなりました。
それでも小屋を見つけた時はそんな周りの事など忘れてしまい、グワッ~と気持ちが高ぶりました。
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それは小さいながらも、そこで作曲された曲の偉大さ故にその存在感を堂々と放っていました。
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入り口の鍵を開け、慎重に中へと歩を進めました。
突然、弦のトレモロと共にザバザバザンとお腹に響くようなコントラバスが刻みだしました。
センサーが反応して2番の冒頭が鳴り始めたのでした。

真ん中には古いピアノがドンと陣取り譜面台には2番の表紙がコピーながら置かれ、ここで生まれた事を暗示しています。
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壁と云う壁にはここに纏わるマーラーの年譜や作曲された曲に関する資料、
手紙のコピーやワルターがここに送った電報などが展示されていて感慨深く眺めていました。

窓からの景色も素敵なので湖畔からもこの小屋を眺めていました。
水はエメラルド・グリーンでとても澄んでいます。
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隣がダイビング・クラブになっていますが、この水を見るとそれも頷けます。

小屋の前にあるベンチに座り、湖面やあのワルターが見たと云われる険しい山とはどれのことだろうかと周りの山々を眺めていました。
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せっかくなので持参してきたi-phoneを取り出し、2番の最終楽章を聴きだしました。

ソプラノとアルトの二重唱で
「おお、あらゆるものにしみ渡る苦痛よ、わたしはお前から身を離した。」
「おお、あらゆるものを征服する死よ、いまやお前は征服された。」
と歌いだされ、それに合唱が加わり曲はドンドンと高揚していきます。

オルガンに鐘も加わりだすクライマックスは圧巻で、その壮大さ崇高さに唯々打ちのめされてしまいます。
その凄さに圧倒されしばし別世界に行ってしまった状態に陥っていました。

ふと我に帰ると興奮と感動のあまりに不審な東洋人を一人で演じていたことにハタと気が付きました。

あ~あ、またやってしまった。・・・


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by Atelier-Onuki | 2014-05-06 21:10 | ザルツブルク | Trackback | Comments(0)

「ザルツブルクのマイスタージンガー」

6月にラトルによるマーラーの2番を聴いたり、先日は9番を作曲した小屋を訪れたりと、ここしばらくドップリとマーラーに浸かっていました。
しかも特にこの二曲は浮世離れした内容の曲なので、どうしても気持ちが現実から遠ざかってしまいます。
これでは社会人として欠陥人間に成りかねないので(否すでに欠陥だらけなのですが)、そろそろ聴くのを控えようかなぁと思っていました。

そこへ予期せぬことに突如ワグナーが出現して来ました。
ワグナーなのでこちらもマーラーに負けず劣らず浮世離れしていますし、
現実へ気持ちを復帰させるのには何の助けにもなりません。

と云うのは会社の同僚で毎年ザルツブルク音楽祭に通っている人がいるのですが、
彼の知り合いで日本から来られている音楽ファンの方が体調を崩してしまい、突如チケットが私に回って来たからです。
体調を崩された方にはお気の毒なのですが、エッこんな高いチケットを頂いても良いのかなと恐縮するほど高額でした。
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ミュンヘンからは近いので毎年「如何しようかなぁ~」とプログラムだけは見るのですが、如何せんチケット代が高くて二の足を踏んでいました。
特にオペラは会場の大ホールが通常のオペラ・ハウスに比べて間口の幅が二倍くらいありますので、
このステージ一杯を装置で飾るとそれは豪華で迫力があります。

もう16・7年前でしょうか我が師匠の一人、装置家の高田一郎先生が演出の浅利慶太さんと組んで「エレクトラ」を上演し、
その時に招待して頂いて以来です。
その折ついでに観たパトリース・シェロー演出の「ドン・ジョバンニ」も特筆もので、
我がオペラ鑑賞の中でも五指に入る素晴らしい内容で懐かしく思い出されます。

さて、今回の演目はワグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」でした。
会場前はサラサラとした霧雨にも関わらず大勢の着飾った人達で賑わっていました。
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バイロイトに対抗して設立されたこの音楽祭(音楽だけではないので祝祭とした方が良いのかも知れませんが。)は、
バイロイトが意外と地味な格好の聴衆が多いのに対して、もうどんなに頑張って着飾っても埋めれてしまう程、聴衆の格好が一番派手な音楽祭でしょう。
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それは日本からの人達もそうで、プッと笑いが出てしまいそうなちょっとユニークな方々もおられました。
(でも皆さんさすがにお金持ちらしいザマスノヨとした雰囲気を醸し出されていました。)
唯、この雰囲気は場違いな気がしてきて途中からとても居心地が悪く感じだしていました。

さて場内はほぼ満席状態です。
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最初からステージの幕は開いていて室内の舞台装置がセッティングされています。
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客電も落ち前奏曲が始まる前にバタバタと寝巻き姿のワグナーと思しき人物が登場し、あれこれと作曲過程での創作に関する葛藤をし、
これだと閃いたと同時にバーン・バーババンと例の前奏曲が始まりました。
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曲の後半になって彼はステージ袖から白い半透明のカーテンを引いて一部右端の装置を除いて被ってしまいますが、
このカーテンには装置と同じ映像がピッタリと合うように投影されています。
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引き終えた後、彼はこのカーテンの中へ消えて行きました。
同時に映像は段々とアップになり左端にあった古風な机へとパーンし、正面へと回り込んで最大に映し出された処でカーテンは開きます。
中からはそのアップになった机が映像と同じ大きさで今度は巨大な装置として舞台一杯に現れ大勢のコーラスが乗っています。

ハハァこれは架空の世界であることを暗示するように人々を小さく非現実的に扱っているのでしょう。
先ほどのワグナーもこの架空の世界に入っていったのだとこの辺で納得です。
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この映像がアップしてから幕が始まって行く手法はとても上手だと思いますし、
第二幕、三幕もセットの違う部分をクローズ・アップしてから入って行きました。

それにしても机を初めあちこちに置かれている巨大な古い本までも、装置はきめ細かな配慮がされた素晴らしいもので、
材質の表現や小さな装飾に至るまでちゃんと作っていて、これは随分コストが掛かっただろうなと余計な心配をするほどです。

暫くあって登場してきたハンス・ザックスは先ほどのワグナーを演じていた人ではないですか。
そうか前から疑っていたのですが、このザックスはワグナーの化身だった訳です。
そういえば生れて間もなかった長女のエファも同名でこの物語りに登場しますし、
ザックスとのあのアイ情関係は一体何だったのでしょうか。
この作曲家は後に作曲する「指輪」でも長男のジークフリートの名を英雄として登場させますし、
この辺の感覚は私には理解が困難です。
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それと最初からステージ中央に思わせぶりに置いてあった3体の胸像ですが、左が小ぶりのゲーテで右端が等身大のベートーヴェン、
中央が一番大きく緑の布が掛けられ見えなくしています。
もうこの辺でハハァあれはワグナーだな・・・と想像が付きますが、・・・
案の定最後に姿を現し、この緑の布は最終幕でマイスター達が纏っていたマントや衣装、
それにワグナーの象徴とも云うべき変な形のベレー帽まで緑色と云う徹底的にワグナーをマイスターの象徴のように扱っていました。
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最終幕ではザックスによってドイツ民衆の精神や芸術性に付いて延々と語られますが、
これはドイツ人(オーストリア人も含め)はしっくりと受け入れられるのでしょうか。
そのまどろっこしく理屈っぽい語り口は、時折面倒な理屈を云う弊社ドイツ人スタッフの顔がチラチラ浮かんできたりして、
私には理解しずらい感覚で、それでぇ~?と段々面倒くさく感じていました。

全体的にはビーダマイヤー調の舞台装置、カツラまで含めた衣装がとてもきめ細かな配慮がなされていて素晴らしいものでした。
それに照明が上手い、とても自然な表現でスポットも光源を悟らせずにさりげなく浮き上がる手腕は特筆物でした。

演出も面白いと云えば面白いコンセプトだと思いますが、徹底的にドイツ寓話であることを強調するためか、
二幕目からベックメッサーが絡むシーンではドイツで生み出されたお伽噺からのオンパレードのように
ありとあらゆるキャラクターがパロディ化されて登場してきます。
赤頭巾ちゃん、白雪姫をはじめ小人達にオオカミ、毒リンゴの継母、カエルの王様に長靴をはいたネコと書ききれない位で支離滅裂です。
それに大騒ぎの最中タンスの中で白雪姫が小人に犯されているシーンなど如何なものかなぁと・・・首を傾げてしまいます。

歌手陣はこの大きな劇場にも関わらず良く声も通り、全般的に立派なものでしたが、
特にザックスとベックメッサーが演技も含め素晴らしい歌唱でした。
このベックメッサーはワグナーが彼に敵対していたウィーンの評論家ハンスリックをモデルにしたそうですが、
私個人はこの敵役でコケにされてしまう彼の役柄の方が可哀想だし人間味があって好きです。
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それに大人数の合唱が特筆もので、その力強い所はボリューム満点ながら、
柔らかい表現でアンサンブルもきめ細かく静かな部分もハッとするほど綺麗な歌いぶりでした。
特に三幕目では上下三層に陣取った合唱がステージのほぼ全域に広がり、大きな面として伝わってくる声は
大迫力で素晴らしい効果を上げていました。

オーケストラもこの長いオペラをだれる事なく緊張感をもって演奏仕切りました。
ガッティも一部にブーイングをする観客もいましたが、ここまでオペラが振れる人とは知りませんでした。
ウィーン・フィルの皆さんお疲れ様でした。
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終演後は閉店間際のビア・レストランに飛び込んで、もうディスペンサーの掃除を初めかけていましたが、
最後の一杯とかろうじてグラーシュ・スープを確保する事ができました。


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by Atelier-Onuki | 2013-08-29 23:58 | ザルツブルク | Trackback | Comments(0)

ザルツブルク街歩き

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次の日も婦人は元気で、「何処かへ行く?」の問いに「何処でも~」と乗り気です。
山へは昨日行ったので結局ザルツブルクへと向かう事になりました。

それにしても婦人はバイエルン・チケットがすっかり気に入ったようです。
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これは、このバイエルン州内の一日だけ乗り放題チケットでICEなどの特急には乗れませんが、
とてもリーズナブル、人数によって値段が別れていて、

例えば今回のように二人ですとたったの26ユーロと格安です。
バイエルン州はドイツで一番大きな州ですから中々乗り出があります。
東の方だとチェコ国境まで行けますし、今日の様に南はオーストリー国境まで行けます。
ザルツブルクはオーストリーに入ってから暫く走りますがこの駅まで有効となっています。
尤もベルヒテスガルテンなんてドイツ国内ですが、
半島の様な形でオーストリーに食い込んでいますから更に南へと行く事になります。
ミュンヘンから2時間、長閑な風景にもちょっと飽きだした頃には到着します。
と云ってもこの日は霧が濃く立ち込めてボーッとしか見えませんでした。

ザルツブルクの駅はここ数年かけて大改装中でホームもガラス張りでモダンな天井の工事中、
以前は単なる地下道が見違える程大きなコンコースになって既に一部は営業を初めていました。
唯、昔を知る者にとっては、何だか違う所へ来た様な感じがして、ちょっと寂しい気がします。
以前はドイツ方面からのホームはちょっと隔離された感じの一番端っこにあって、日本でも昔あった柵だけのa0280569_18282841.jpg鄙びた改札口・・・入国審査もここで行われ駅員かと間違えるほどでした。
駅舎もこの一角は確か木造で味わいのある物でした。

まだあちこち工事だらけの道を街へと向かいました。
まずは駅から近いお決まりのミラベル庭園へ、まだ霧が立ち込めていて、お城は薄らとしか見えません。それでも人気がなく夏場とは違って、ちょっと幻想的で良かったかも知れません。

川を渡って旧市街地へ、モーツァルトの生家がある小道へと向かいました。
この通りは看板がどの店も凝っていて楽しめます。
お店も小ぶりながらブランド店やお洒落にしている所が多くて目を見張ります。
それに何と云っても美人の店員が多いこと・・・ハッとさせられる事がシバシバ。
ある狩り用品の店など、私には全く用がないのにワザワザ後戻りをしてまで覗いてしまう有様でした。
それに引き換え我がミュンヘンの寂しい事。・・・滅多にお目にかかる事がありません。
何故かは良くわかりませんが、これは多分このバイエルン地方はコンサヴァティヴで、街も人もとてもレトロな雰囲気、歴史的にもあまり近隣諸国との交流も少なく、純血に近いのかも知れません。
ちょっと目の体力を使ったのでお腹が空いてきました。

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まぁこれもお決まりのコースですが、St.ペータースへ行く事にしました。
ここは岩盤にへばり付く様に建てられた修道院で、かつて人々に施しとして提供していたスープが有名です。
栄養価の高い材料を煮込んだものですが、特徴はその受け皿にあります。
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それは固いパンで出来ていてスープと共にお皿まで食べる事ができ、お腹も大きくなるし、
器も沢山用意しなくて良いと云う一石二鳥のアイデアでした。

我々は別に施しを受けに行った訳ではないのですが、今はレストランも営んでいます。
今と云っても803年からと入口のプレートに書かれています。
これは建物なのかレストランなんか明記していませんが、まぁ1200年以上の歴史があるわけです。
夏場は岩盤の下にある中庭でも気持ち良く食事ができますが、今日はガランとしています。
室内もアンティックそのもので雰囲気があります。
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気の早い事に、もうクリスマスの飾りが所狭しと上手に飾られていました。
食事もちょと精進料理に近いのか、お上品な味に盛り方も控えめでした。
トイレットが二階なので上がってみると、これ又アンティックな雰囲気、廊下を挟むように小部屋が
幾つかあってここも綺麗なクリスマス装飾がなされ準備万端と云ったかんじです。
奥の大広間も飾りが終わっていて、これは結婚式かなんかの準備をしているようでした。
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さて食後はブラブラとこの修道院に隣接した岩盤の下に広がる雰囲気のある墓地を歩いて、
これもお決まりのケーブルカーに乗って丘の上にあるお城へと向かいました。
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この日はあいにく霧が立ち込めて遠くの山々は見えませんでしたが、閑散とした城内の広場には
小さなクリスマス市の準備をしていたり、町並みを連想させる居住地は小さくて閉鎖的、
その区切られてた空間には人影もなくちょっとシュール、
まるでキリコの寂しさと哀愁が漂う絵の世界へ引きこまれた様な錯覚に陥りました。
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街へと戻りブラブラと駅まで、そろそろ帰るモードです。
来た時と同じ橋を渡ってちょっとコーヒー・ブレイク、たもとのザッハー・ホテルへと向かいました。
ウィーン風のカフェは何だかホッとする気がします。
窓際の席へ、椅子も白縁に淡いコーラル・レッドのフェルト張り、
注文は当然ながらメランジュ。このいわゆるウィーンナー・コーヒーは泡立てミルクがたっぷりで和みます。
壁には所狭しと著名人のポートレートが飾られています。
多分フェスト出演の為に訪れた音楽家が多く宿泊して来たのでしょうか、
モッフォを初めルートヴィッヒなど往年の歌手から、
指揮者ではカラヤン初めバーンスタインやショルティ、ムーティやラトルなどと
時の移り変わりも感じられます。

処で以前から気になっていたのですが、このホテルの隣に白い瀟洒な館があって、
この裏庭の中央にはカラヤンのブロンズ像が立っています。
それは彼の指揮スタイルを良く捉えた全身像で、この家の人は余程
彼のファンだったんだなぁと思っていましたが、壁に付いていたプレートをフト見た処、
ここはなんと彼の生家でした。
知らなかった・・・

さて、次の日は婦人もご機嫌よくデュッセルドルフへと帰って行きました。

私も何時も通りの電車通勤が始まりましたが、ザルツブルクとは大違い、車内は残念ながらその差
は一目瞭然で、ヘッドホーンで身を固めなるべく車窓から外を眺める日々が始まりました。

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by Atelier-Onuki | 2012-12-01 18:34 | ザルツブルク | Trackback | Comments(0)