カテゴリ:オペラ( 7 )

ビゼーのオペラ「カルメン」のこと 2 (ドイツ・ニュース・ダイジェスト7月のコラムから)

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この「カルメン」は名作中の名作で、上演すればほぼ満席となります。

内容はドラマチックながら叙情的なところも相まって起承転結がはっきりした明瞭な作品です。

それに何といっても音楽が素晴らしく、上演時間の長いオペラですが、
四幕通して飽きることなく緊迫感をもって観ることができます。

あのワーグナーもこの作品には、えらく嫉妬をしたようです。
というのも、彼が苦労して練り上げた理念を、まだ無名の若きフランス人作曲家がサラッと克服してしまったからです。

ワーグナーが提唱していたライト・モチーフ(示導動機。特定のイメージと結び付けられたメロディー)など、
すでに序曲から暗示され全編に渡って至るところで変奏をしながら効果的に展開していきます。

スペイン・バスク地方出身の主人公ホセはセビリアにあるタバコ工場の衛兵ですが、
気まぐれなカルメンからからかわれたれたところからドラマは始まります。
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結局は本気で好きになってしまったホセは、闘牛士のライバル出現後、
つれなくなってしまったカルメンを嫉妬に狂い殺害してしまいます。
 
オペラは全四幕ありますが、ホセとカルメンの衣裳が幕を追うごとに対比するように変化します。

ホセは伍長の制服から最後はこじき同然の格好に、
カルメンは工場での作業着から始まり最終幕の闘牛場のシーンでは華やかに着飾っています。

カルメンにとってはほんのお遊び程度だったのですが、
バスク人特有の実直で勤勉だけれど頑固で融通が利かない性格が、この事件の背景にあるようです。

ホセには故郷にミカエラという婚約者がいて、わざわざバスクから彼を訪ねて来るのですが、
カルメンの魅力に盲目になったホセは、葛藤の末つれなくあしらってしまいます。

このミカエラに付けられたアリア(独唱曲)に、ビゼーはフランス風の叙情的でロマンチックなメロディーを与えています。

控えめで品格さえ漂うミカエラは、オペラでは魅力的な登場人物です。

そんなミカエラに会いたくてバスク地方を訪ねたことがありましたが、
対するカルメンは美人の宝庫といわれるアンダルシアのロマ、エキゾティックな色気を漂わせていたのでしょう。

田舎者のホセにとってカルメンは、あらがい難い魅力を持っていたのかもしれません。

バスクに行ってみて、ちょっとその気持ちが分かるような気がしました。


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by Atelier-Onuki | 2016-07-17 23:18 | オペラ | Trackback | Comments(0)

ビゼーのオペラ「カルメン」-1 (ニュース・ダイジェスト6月のコラムから)

戯曲の中には、時代や場所の設定を変えても大丈夫な作品と、変えると雰囲気やテーマが崩れてしまう作品があります。

前者の典型的な例が、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」をリメイクした
バーンスタインの「ウエストサイド物語」や、「マクベス」をベースにした黒澤明の「蜘蛛巣城」です。

シェイクスピアの戯曲の登場人物は、人間本来の性格や内面を追求したもので、時代や国が違ってもその本質は変わらないのです。
 
その対極にあるのがビゼーのオペラ「カルメン」で、設定を変えると事件の背景がぼやけ、全体を取り巻く雰囲気が壊れてしまいます。
今まで様々な演出家がリメイクを試みましたが、おおむね失敗に終わっているようです。
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唯一、私が観た成功例は、ベルリンのコミッシェ・オーパーで上演された、奇才ハリー・クプファー演出のものでしょうか。
設定は戦後間もない頃のドイツで、歌詞もドイツ語での上演です。
 
3幕目の「ピレネー山中」のシーンが寂しげな駅に置き換えられ、
本来は案内人に連れられ馬に乗ってくるはずのミカエラは、古い路面電車に乗ってポツリと駅に降り立ちます。

途中から出てくる山賊たちは、なんとハーレーダビッドソンにまたがり、革ジャンにサングラスで登場します。

いつもは弱々しく小心のミカエラは、ホセの胸ぐらを引き寄せて「帰ろう!」と迫り、強いドイツ人女性に変身しています。

これは例外中の例外ですが、ここまで徹底していると説得力の強い納得の出来栄えでした(本作のあらすじは次回で)。
 
さて、この「カルメン」、オペラの中でも最も人気の高い演目ですが、
作曲者のジョルジュ・ビゼーも原作者のプロスペル・メリメも、今日の成功を知らずに他界しています。

考古学者でもあったメリメは、地質調査のために2度スペインを訪れていますが、
ある地方の居酒屋で出会った男(恐らくホセ)の話を基に、この小説を書いています。

小説は人気が出たため、戯曲に書き直され上演されましたが、当のメリメは戯曲化される前に亡くなっています。

一方、この頃新しい題材を模索していたビゼーは、この小説を読んでオペラ化を決意。周到な準備の後、
パリのオペラ・コミック座で上演される運びとなりましたが、初演では、斬新な内容に戸惑った観客から散々な酷評を受けてしまいます。(続く)
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by Atelier-Onuki | 2016-06-18 19:43 | オペラ | Trackback | Comments(0)

演出家パトリス・シェローさん逝去によせて

昨日は残念な事に又一人の偉大な演出家パトリス・シェローが亡くなりました。
未だ68歳と云う事で未々彼の演出作品を観たかったのにその早い死が惜しまれます。
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シェローは俳優から映画監督、演劇の演出そしてオペラ演出へとその活動を広げて行きました。
中でも1976年にブーレーズと組んだバイロイト音楽祭における「ニーベルングの指輪」での演出が
大きなセンセーションを巻き起こし世界にその名を轟かせました。
[ラインの黄金]では舞台一面に大きなダムを設定した装置も話題になりました。
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若い頃はやはり天才演出家のジョルジョ・ストレーレルの元「ミラノ・ピッコロ座」でも働いていて、その優れた手法を身につけたようです。
このピッコロ座は元来ヴェニスで生まれたコメディア・デラルテを継承しているのですが、
この16世紀に出来た全ての喜劇の元祖ともいわれる演劇を現代風に蘇らせ、
それは抜群の演技力と面白い仕掛けに溢れています。
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昨今はモダンな演出が多く溢れていて、物によっては演出家の独りよがりや、思いつき程度のレヴェルの低いものも多くあります。
シリアスな演劇なら多少は理解も出来るのかも知れませんが、オペラはあくまでも音楽が主役で
その様式を崩してしまったらまるで違う世界の出し物と化してしまいます。
それに最近はやたら汚らしかったり、エログロ的なものまで登場してすっかり幻滅してしまい途中で帰ろうかと思うものまであります。

同じモダンな解釈でもシェローの場合は音楽が持つ様式感をちゃんと心得ていて、それに則って均整のとれた演出を心がけています。
それに彼の場合は何といってもお洒落・・・それはそれはセンスに溢れていて観る側を気持ちよくさせてくれます。
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上の写真はテアター・アン・デア・ウィーンで観たコシ・ファン・トッテですが。

彼の演出作品では他に96年のザルツブルクにおける「ドン・ジョバンニ」を観る機会がありました。
その舞台装置は直方体の造形物で構成され一目見ただけでその形状の構成や色使いにセンスが溢れたもので、
まるで淡い色調のクレーの絵が立体になったような感じがしました。
そしてこの立体が場面ごとに上下左右にと動き其々のシーンの情景を作りだしているのですが、
実はこのドン・ジョバンニは装置家にとっては一番難しい演目の一つと云われています。
難しい問題点は幾つかあるのですが、その一つに1幕6場、2幕も6場と云う多くのシーンを
音楽が途切れることなく速やかに変えて行かなければなりません。
まぁ逆に装置家の腕の見せ所とも云われています。

さて、この装置には色んな仕掛けもされていて飽きないよう配慮がされています。
エルヴィラがバルコニーに出てくるシーンでは2mほどの鉄柱が壁の角からスーと倒れて来て、ブリッジを形成し、
その細いブリッジ上にぶら下るような格好でエルヴィラが登場しました。
もう観ている方が心配になるほどで、歌手の方はさぞかし怖かった事と思います。

それに圧巻は騎士長の石像が現れるシーンで、突然壁が破れて強烈なストロボがチカチカと光ったと同時に
大きな石像の頭がゴロゴロと飛び込んで来てドン・ジョバンニが下敷きになってしまいます。
それは大きな頭で直径が2mはあったと思われ、これも危険な演出でしたが良く演技が出来たなぁと感心しました。
歌手もフルラネットのドン・ジョバンニ、ターフェルのレポレロなど豪華キャストで楽しめました。

この公演には日本から遊びに来ていた叔父と一緒に行ったのですが、チケット売り場ではもう完売との事、・・・
暫く様子を見ていたら急なキャンセルが出たのかホテルのベル・ボーイらしきお兄ちゃんが手にチケットを掲げてどうも売りたいようです。

「幾らの席?」と見せてもらったら、何と一枚は4500シリング、もう一枚も3600シリング、二枚で大体8万円・・・そんな高いチケットなど買えません。
「ちょっと一周回って又帰って来てちょうだい!」 と殆ど相手にしませんでした。

開演時間も迫り殆どの人達がゾロゾロと入場し始め、ちょっと焦りかけた処に先程のお兄ちゃんが未だ手にチケットを持ったまま帰って来ました。

まぁ8万円なんて払えませんが「どう・・・二枚で5000シリングでは?」と尋ねた処、
このお兄ちゃんアッケラカンとして「ああ良いよ!」と、これなら最初から訊けば良かったと思いつつ財布を見ると
何とそこには4500位しか入っていませんでした。

「すまん、足りないわ・・・これだけしかないけど・・・」、「それでOKだよ!」と交渉成立。向こうも早く売りたかったのでしょうが、
「もうもっと早く云ってよ!」と思いつつもイソイソと会場へ入って行ったのを懐かしく思いだします。

この時の公演は残念ながら映像も残っていませんし写真すら見つからないので、
もう観るチャンスがありませんが、何時かまた再演される事を願っています。
唯、彼は再演される際はキャスティングが変わるとわざわざ演技を付け直しにやって来たと云われていますから、もう観る事ができなでしょうね。・・・

あんなに素敵な演出をしてくれたシェローさんのご冥福を祈りつつ。・・・


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by Atelier-Onuki | 2013-10-09 00:28 | オペラ | Trackback | Comments(0)

ホフマン物語

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バルセロナのリセウ劇場での公演は、サン・フランシスコとリヨンの歌劇場との共同制作によるプロジェクトで
演出や演技、歌唱において周到な準備を重ねてきた成果が伺われとても楽しめる内容でした。

このオッフェンバッハ唯一の正オペラは、あれだけ多くの人気オペレッタを書いて来た彼が晩年になって
音楽史に残るような名作を書きたいと願って進められますが、遂に未完成のまま他界してしまいます。

その為、あの「カルメン」でもグランド・オペラ版へと加筆したギローを初め、多くの異なったバージョンがあり、
しかも初演を行ったパリ・コミック座が焼けた時に当時の楽譜も焼失してしまった為、
現在10種類くらいの異なった版が存在しています。
唯、大きく違うのはアントニアとジュリエットの幕を入れ替えたバージョンや、
それにミューズ登場の有無が挙げられるでしょうか。
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今回の公演では何も明記はされていなかったのですが、実は初演時の版もその後何処かで発見された様で、多分その版が使われたように思われます。
何年か前のザルツブルクでの公演でもケント・ナガノがこの版を使っていたようです。
指揮者のDenéve(デネーヴ?)はフランス出身の未だ若い指揮者ですが、ショルティやプレートルの元でアシスタントの経験を積んだり、サイトウキネン・フェスティバルでも小澤さんのアシスタントをしていたようです。演奏会は何度か聴いた事がありましたが、フランス物はさすがにお手の物で、しっかりとツボを押さえ、雰囲気も十分で安心して聴く事ができました。
フランスも若い世代で中々この人と云えるような指揮者が育って居なかったので、
この人は久々の期待ができる指揮者かも知れません。
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演出はLaurent Pellyと云う人で、初めてみる演出でしたが、中々良く考え抜かれた物で、
説得力がありました。
若干モダンなスタイルながら衣装(デザインもPelly)や小道具や装置の装飾部分などは
ちゃんと物語の時代に沿ったスタイルで納得ができます。
当然オランピア(人形)のシーンなど仕掛けも面白く喝采を浴びていました。
暗幕をバックに歌に合わせて自在に宙を飛び回り、観客をオッと驚かせていました。
アリアのフィナーレが近づいた頃にカーテンの後ろからクレーンが三人の黒子に操られながら登場し、
それがグルグルと舞台中を回りハラハラする程でした。

2幕目はアントニアのシーンで一番地味な所ですが、このアントニア役をナタリー・ディセーが歌い、
そのしっとりとした歌唱力にじっくりと聴き入る事が出来ました。
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それに演出も退屈させないよう、ミラクル博士をあちこちから登場させたり、
挙句の果には奈落からランタンに乗ったミラクルが宙に吊り上がって来るという大胆なものでした。
舞台の三方向にセットされた階段はホフマンがアントニアと出会ったシーンでは、
会ってはいけない関係を暗示させる意図か中央のブリッジが壁ごと離れて行き邪魔をしますが、
とうとう抗しきれずに又繋がってしてしまうと云う手の込み様でした。

ジュリエッタのシーンも室内ですが、ソファーに寝そべったジュリエッタがカーペットごと静かに
ニコラウスの座っている所へと滑るように動き、ゴンドラをイメージさせていました。
ここで歌われる全曲中最も有名な「舟歌」は甘いメロディに乗ってロマンティックな雰囲気を醸し出しています。
ソプラノとメゾ女声二人によるこの二重唱はとてもハモるのが難しいそうですが、
途中から合唱も加わって心地よい響きの中に浸る事が出来ました。

それに全幕を通して照明が実に上手いし、プロジェクターの扱いも面白く、あちこちに色んな映像が
投影されますが、何処にプロジェクターが設置されているのか結局分からない程上手く処理をしていました。

ラテン系の劇場では良くある事ですが、結構長い出し物にも拘らず開演が20時と遅く、二回の休憩時間も
たっぷりと取ってあるので、終演はとっくに0時を回っていましたが、とても楽しむ事が出来ました。

このオペラは、昔クリュイタンス盤のレコードがパリ・オペラ座の夜景がドンと写っている綺麗なジャケットで
印象的だったのですが、如何せん内容も良く知らなかったし、3枚組なので当然手が届かない値段だったので、
あの頃は全く親しむ事もなく別世界の物として過ごしてきたのですが、こうして観るにつけ段々と親しんで、
今やとても好きなオペラの一つになり感慨深い物があります。
何年か前だったかパリのとあるアーケードをブラブラうろついていたら、レストランやお店と同じ並びで、
まるで埋もれるようにあったブフ・パリジャンに遭遇しました。
これはオッフェンバッハが自分の作品のために建てた劇場で、今も軽演劇や小さなコンサート会場として
連日のように使われています。
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中には入っていませんが写真をみると、可愛いながらちゃんと歌劇場の雰囲気をもった会場です。
オッフェンバッハが活躍した時代にはさぞ賑わった事でしょうが、今も現役として生活の中に溶け込むように存在している姿には、嬉しさと共に感動を覚えました。

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by Atelier-Onuki | 2013-03-09 23:39 | オペラ | Trackback | Comments(0)

ヘンゼルとグレーテル

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先日の日曜日は、我らが大野和士さんがここのシュターツ・オーパーデビューとなる
「ヘンゼルとグレーテル」を観てきました。
グレーテル役も中村エリさんで、こうして日本人の活躍を見るのも嬉しいものです。

クリスマス・シーズンになると、「ラ・ボエーム」やバレエの「くるみ割り人形」と共に毎年
数多く取り上げられますが、中でもドイツ語圏では一番多く取り上げられているのではないでしょうか。
内容的にはクリスマスとは関係がないのですが、二幕のフィナーレで沢山の天使が出てきたり、
最後は神への感謝の賛美で終わるので、この時期には相応しいのでしょうね。
実際、もしこのオペラがなかったらと思うと、オペラ・ファンと子供達には、
ちょっと寂しいクリスマスになっていた事でしょう。

個人的にも昔まだ学生だった頃、大谷洌子先生の演出での公演をお手伝いさせて頂いた事もあって、
とても好きな作品です。

このオペラはフンパーディンクの妹さんでヴェッテ婦人と云う人が教会の子供劇のために、
グリム童話の中からこの題材を選び、原作の残酷なシーンをカットして、やんわりとした内容に
自ら台本を書きました。
そこで作曲を音楽の先生でバイロイトでもワグナーの助手を勤めていた兄に、
「お兄ちゃん、ちょっと音楽をつけてよ。」と気軽に頼んだ処、
こんな立派なオペラに仕上がってしまいました。

おそらく、クリスマスには毎年、教会で子供たちによる降誕劇を行ってきて、
ちょっとマンネリ化していた劇を何か新しいやり方で試したかったのだと思われますが、
妹さんとしてはその出来の余りの立派さに、驚くと共に少々困惑したのではないでしょうか。
私も以前、降誕劇の装置のお手伝いをした事がありましたが、
気まぐれな子供達の扱いは大変で、しかもこんな立派なオペラは素人だけでは
到底できそうもありません。

実際、これを知ったワグナーも、自分自身が目指していた楽劇と云うスタイルで、
素晴らしい出来栄えとなったこの作品には大いに嫉妬をしたそうです。
事実、ヴェッテさん達が上演したという記述は見たことがありませんし、
初演はクリスマスの二日前にヴァイマールで何とリヒァルト・シュトラウスの指揮で
行われていますから、文字通り音楽史に残る名作の誕生と云えるでしょうか。
子供向けに分かり易いとは云え、話の内容、音楽共に素晴らしく、
ジーンと来るシーンもシバシバあります。

この日の演出は1965年の復刻バージョンでリストさんと云う演出家、
この方の事はよく知らないのですが、伝統的で分かりやすい演出で安心して観ている事ができました。
14時と18時からの二公演で、歌手は流石にダブル・キャストでしたが、
指揮の大野さんは両方共の出演でさぞかし大変だった事と思います。
丁寧に出だした序曲は自然なテンポで進み、フィナーレではたっぷりと歌って
気持ち良くまとまりました。観客の反応も暖かい拍手で好意的でした。

まぁ初登場の指揮者にとっては試金石の様な扱いをされている作品の一つですが、
ここでは数年前まではルイージが振っていましたし、
二年前だったかロイヤル・オペラではコリン・デイヴィスが豪華キャストを起用して振っています。
(どうもこれはDVDになっていて今年、日本でアカデミー賞を取ったようです)
レコーディングを見ても、かつてはカラヤンを初めクリュイタンスとショルティはウィーン・フィルと録音
をしていますし、巨匠と云われた人達にも興味のある作品なのでしょうね。

大野さんの場合は多分、数年前グラインドボーン音楽祭での実績もあって、
招待されたと思いますが、これから徐々にメジャーの出し物にも登場してもらいたいものです。
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歌手陣はお父さんがちょっと張り切って歌い、テンポを崩していましたが、
我らがエリさん初め皆さん良く健闘していました。
唯、この貧しきはずの一家、皆さん良く栄養が行き渡っているようで、ちょっと微笑ましい。
まぁ考え方によっては、返って悲劇にはならない救いとして良いのかも知れません。

Wenn die Not aufs höchste steigt,
Gott der Herr die Hand uns reicht!

たとえ困難が最高潮に達しても、
神はその手で私たちを守りたもう!

下手な訳で済みませんが、皆によるこの歌で終幕となります。

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by Atelier-Onuki | 2012-12-23 01:58 | オペラ | Trackback | Comments(2)

ミラノ・スカラ座の初来日は

ミラノのスカラ座が初めて来日したのは確か81年の事だったでしょうか。

それまでイタリアオペラと云えば、NHKが召集した通称「イタリア歌劇団」により
戦後間もない頃から伝説の公演がなされてきました。
オーケストラやコーラスは日本の団体で構成されていましたが、演出と歌手に関してはデル・モナコやテバルディ初め豪華キャストが出演した日本だけの特別な公演でした。

実際のイタリアの歌劇場が引越し公演の形で、これ程、大規模でやって来るのは初めての事でした。
演出や装置も噂によると凄いらしいし、指揮者はアバドとクライバーが二演目づつ、
歌手陣もフレーニを初めドミンゴ、ギャウロフなど豪華布陣・・・
オペラファンの間では大きな話題になっていました。
これは行かねばと、前売り初日にはボーナスをすっかり叩き込んで四演目の全てを押さえました。
未だ半年以上も先なのに、もう9月の公演が待ち遠しくてワクワクしていました。

ところが・・・予想も付かなかった大きな仕事が運悪く?この時期に入ってしまい、
それも毎晩遅い時間まで掛かってしまう羽目になってしまいました。
残念ながら、泣く泣く全てのチケットを手放してしまいました。

それでも突然一日だけ早く終われた時があって、そうだ今日はNHKホールで
クライバーの「オテロ」があるはずと思い出し、何の宛てもないまま駆けつけました。
案の定チケットなどあるわけがありません。
係りの人に頼んで何とか頭だけと云う事で、会場のドア越しに耳をあて付け中の様子を伺っていました。
ワッ~と歓声とともに異常に大きな拍手が沸き起こりました・・・カルロスの登場です。
一瞬の静寂があったと思ったら、ジァーン~(下手な表現で失礼)とオテロ冒頭の
嵐のシーンが異常な緊迫感と共に振り下ろされました。
もう向こうは大変なことが起こっているのだなぁとドア越しながらもヒシヒシと伝わって来ました。 「あのぉ~そろそろ」と係りの人に促されて、後ろ髪を引かれながらも、渋々そこから立ち退きました。

それから一月くらい経った頃でしょうか、一通の優待状が届きました。
どうも家内がオテロを観た日にアンケートに答えて、この優待状が当たったようです。
それはオペラ鑑賞のツアーでスカラをメインにパリやウィーン、フィレンツェでオペラを観て回ると云うもので、オマケにヴェニスやローマまで含まれた欲張りツアーでした。

内容の割にはお値段も手ごろだったので、オテロ以来すっかりオペラに興味を持ち始めた家内に「行くか?」と訊くと二つ返事。・・・あまり分かってはいないけど、熱烈なオペラ・ファンを自称している母親も誘わなければ、・・・(でも母は例のイタリア歌劇団の公演を第一回から何度も実際に観ており、この点に関しては嫉妬をしています)。それに何故か家内の妹まで行く!! と云いだす始末で、四人で参加する事になりました。

記念すべき初めてのヨーロッパは、パリにて第一歩を下ろす事から始まりました。
ここではシャルル・ガルニエで、何故かドイツ物の「ローエングリン」を観ました。
長いオペラにも関わらず夜8時の開演、2回の休憩も長くて、結局終わったのは夜中の1時をとっくに過ぎていたのには驚きました。
オペラは社交の場だと聞いていましたが、休憩時間の長さから納得できました。

憧れのウィーンでは「椿姫」を観たあと、昔からの知り合い達と再会して楽しい一時を過ごしました。

そしていよいよお目当てのスカラではプレミエの初日です。
演目は「アンナ・ボレナ」、何でも25年前の再演だそうで、その時はヴィスコンティの演出、カラスやシミオナートなどの出演で、その素晴らしさは凄かったらしく、今でも伝説として語り継がれているそうです。
今回も演出、装置はそのままに、カバリエ初め豪華キャストで前評判も上々でした。
劇場の中はもう何だか期待感で溢れそうな雰囲気で何時もと違うって感じが伝わって来ました。そしてシミオナートが臨席され聴衆に品格漂う挨拶をされた時には大きな拍手と共に、その興奮は最高潮に達しました。

緊張感が漂う一瞬の静寂があって、いよいよ開演かと思われた時、ステージ上に一人の紳士が現れ何か話しだしました。
何を云っているのかは分かりませんが、カバリエに代わってファルコムと云う所だけ理解できました。 場内はザワザワしだしブーイングや罵声が飛び交いだしました。
指揮者が出てきて演奏を始めようとしましたが、大騒ぎになりとうとう振り出すチャンスもなく退場して行きました。

暫くして今度は何とシミオナートがステージ上に現れ、なんとか上演できるように懇願しているようです。
処が、これが火に油を注いだようで、騒ぎはもっと膨らみ、もうヤレ、ヤルナで殴り合いの喧嘩まであちこちで勃発しています。
とうとう収拾が付かなくなった場内には「本日の公演は中止」のアナウンスが空しく響いていました。

翌朝の新聞各紙はどれもこの事件を一面で取り上げていました。
現地ガイドさんの説明によると、今回の発端は稽古中にカバリエが何故かカラスの
亡霊に怯えだし、とうとうそのプレッシャーから突然降板してしまったそうなのです。
劇場側は控えのファルコムで凌ごうとしたのですが、口うるさい天井桟敷の人達が騒ぎだしました。彼らはその頃、天井桟敷の席数を減らしたり、段々と厳しい条件を突きつけてきた支配人に対し不満が溜まっていたのでしょう。そこで今回の事件。なぜ支配人自らでなくシミオナートに陳謝させたのだと、彼らの怒りは頂点に達してしまったのでした。
その騒いだ人達にとっても、チケットを手に入れるのは容易ではなかったはずです。
にも拘らず公演を中止に追い込むほどの入れ込みようでした。
以前、スカラの桟敷席の聴衆はオペラ通が多く真剣に観に来ていると、何処かで読んだ事がありましたが、これがそう云う事なのかと納得致しました。

ツアーの主催者側は気を遣って、この日、急遽ピッコロ・スカラを手配してくれました。
その後には晩餐会も企画したとの事、会場に入ると結構な人が集まっています。
我々とは別のグループも何組か来ていて、おそらく、同じ憂き目にあったのでしょう。

食事も終わろうとしていた頃、壇上に主催者の人が立って挨拶をされました。
あれこれと陳謝のあと、お詫びの印として今夜は素敵なゲストをお呼びしていますと。
そして登場してきたのはパァと人目を引くほどの大柄で見るからに上品な女性・・・
なんとテ、テバルディではないですか。・・・ 
あの伝説の大歌手・・・一瞬目を疑いました。
それはそれは物腰も柔らかく、仕草の其々に気品が漂っていました。
皆との記念写真にもにこやかに受け答えされ、一緒に写真に収まって頂けました。
これは参加者にとって今回一番のサプライズになったと思います。

この旅の最後はフィレンツェで「ウェルテル」を観ました。
プレートルの指揮でクラウスやテラーニらが出演し素晴らしい公演でした。
特に二幕目、教会前のシーンは並木道の土手が右奥から斜めに舞台を貫通する
ようにセッティングされています。その中央あたりにトンネルがあってそこから教会が
見えるようになっていました。その紅葉した並木の大きくて綺麗だった事・・・
その内容とあいまって未だに印象深く心に残っています。



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by Atelier-Onuki | 2012-10-23 05:27 | オペラ | Trackback | Comments(0)

バイエルン国立歌劇場 Tannhaeuser 2012年9月29日

今シーズン初回のオペラはタンホイザーでした。

バイエルン国立歌劇場 
【Tannhaeuser】
2012年9月29日(土)

指揮:Kent Nagano
演出:David Alden
舞台装置:Roni Toren
衣装:Buki Shiff

Hermann : Christof Fischesser
Tannhaeuser : Robert Dean Smith
Wolfram von Eschenbach : Matthias Goerne
Walther von der Vogelweide : Ulrich Ress
Biterolf : Goran Juric
Heinrich der Schreiber : Kenneth Roberson
Reinmar von Zweter : Christoph Stephinger
Elisabeth : Anne Schwanewilms
Venus : Daniela Sindram
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以下は私の個人的な嗜好に基づく評価ですので
含み置きの上ご参考ください。

演出:☆☆☆★★
装置:☆☆☆★★
演奏:☆☆☆☆★
歌手:☆☆☆☆★

演出は昨今流行りのモダンなスタイルだったけれども、嫌味のない、好感が持てるものであったと思う。当然ながら装置もモダンで、簡素なスタイルながら、登場人物が場面転換の動きにも積極的に組み込まれたものでさり気ないシーン展開がなされていた。
演奏は、ナガノの指揮でキビキビと活気のあるテンポで、細部まで気を配られたよく引き締まった演奏だった。歌手もゲルネはじめ、レベルの高いものであった。
ただ、まるで生贄のように横たわっていた牧童役の少年の設定が何を意図しているのか少し理解に苦しむところか…。 

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by Atelier-Onuki | 2012-09-30 19:10 | オペラ | Trackback | Comments(0)