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ナショナル・ギャラリーでの再会

先々週はロンドンへ行っていましたので、時間を見つけ再びトラファルガー広場にあるナショナル・ギャラリーを訪れました。
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それはちょっと前のブログでも書いたホッベマの「並木道」と再会するのがメインの目的でした。
ギャラリーの一番奥まで一直線に進み最初にこの絵と一年ぶりに再会しました。

女性との再会では年月が経っていると、それなりに変化もされているのですが、
絵の場合その美しさは何年後でも殆ど変りませんし、修復されていた場合などはより美しくなっている事すらあります。
(こんな事を書いたら女性たちからのヒンシュクをかいそうですが、イヤイヤ余り変らない方々もおられますよ。)

この日も「並木道」は相変わらず一番奥で輝を放っていました。
良く描きこまれた落ち着きのある絵で気持ちがホッとします。
フムフム、なるほどと訳の分からぬ独り言を云いながら暫く眺めていました。
2つほど先の違う部屋にもホッベマの他の作品が師匠格のロイスダールたちと共に展示されているのですが、
この「並木道」が群を抜いて素晴らしい作品だと再認識しました。

何時もですとこの広大なギャラリーを隈なく観るのは難しいので、早めに印象派辺りへ足を運ぶのですが、
この日は気分がルネッサンス方面に向かわせました。

そこにも名画の数々が所狭しと展示されているのですが、一枚の絵が浮き上がるようにして目を釘付けにしました。
それはダ・ヴィンチの描いた「岩窟の聖母」でした。
この部屋にはボッティチェリやリッピなども展示されていて、それらも素晴らしい名画なのですが、
やはりダ・ヴィンチのこの作品が群を抜いて際立っています。
大きさも2mほどの高さがあってダ・ヴィンチの絵の中では大きな一枚です。
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この作品は実は二枚描いているそうで、最初に描いた方はルーブルに展示されていて、こちらは後から描いた方だそうです。

まぁ構図と云い描写と云い完璧で私の拙い文章ではその賛辞を表現しきれません。
特に驚いたのは中央やや右の位置に差し出されたマリアの左手が宙に浮いて見えることです。
まるで3Dの立体映像を見ているようで、今から500年以上も前なのに今日的な感覚を持っていたとは驚きでしかありません。
その手は実際よりも大きく描かれ、指先から付け根にかけてもちゃんとパースペクティヴをかけて表現しています。
そのデフォルメ具合も自然で品を保つギリギリ位に保たれていますし、更に指先にはササッと早いタッチで輪郭の外に何本かの線が
微かに加えられていて動きすら感じるほどです。
ホトホト感心をしながらズッ~と観ていました。

幾つかの部屋を歩いて51番の部屋まで遡ってきました。
ここは1250年から1350年のイタリア絵画ですのでダ・ヴィンチよりも200年ほど前の作家でジョットーなども展示されています。

ここで気を付けなければならないのが全く見つけ辛い洞窟のような暗い小部屋が隠されている事です。
それはBonaventuraと云う作家の「Crucifix」という十字架型のベースに描かれた十字架上のキリスト像が展示されている
壁面の両サイドに小さな入り口があります。
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そこを潜るとなんと又ダ・ヴィンチが一枚だけ展示されています。

それは先程の「岩窟の聖母」の下絵かイメージを描きとったデッサンで、光に当てると退化するためこのような暗い部屋に閉じ込められています。
その墨やチョークで描かれたデッサンはもう下地なんて代物ではなく、それは素晴らしく描かれていて崇高な雰囲気を醸しだしています。
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その深みや闊達さデッサンとは云え色合いの凄さに、もうも完全に打ちひしがれ唯々、無言でウーンと唸りながら見とれているだけです。

この部屋は本当に目立たず見落としがちなので、写真があればと思うのですが、このギャラリーは堅く撮影が禁止されています。
美術館によってはフラッシュさえ炊かなければ撮影が自由という大らかな所もありますが、その辺は保存法など其々の美術館によって違うのでしょうね。

以前ルーブルで「モナリザ」の前に大勢の人が集っていて、凄い勢いでフラッシュを炊いていました。
余りに酷い状態なので「こんなにフラッシュを炊いて絵が痛まないの?」と係員に言ったのですが
「ここは特殊なガラスに入ってフラッシュの光は通さないので大丈夫ですよ。
・・・でも忠告ありがとう。」と言っていました。

それにしてもダ・ヴィンチさんは凄い。・・・
改めて彼の偉大さに感心させられました。


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by Atelier-Onuki | 2013-10-29 01:30 | イギリス | Trackback | Comments(0)

ラヴェルの「子供と魔法」それとツィムリンスキーのオペラ

頭の中では昨夜聴いたマーラーの7番の二楽章辺りの旋律が朗々と鳴り響いていますが、
前からチケットを買っていたのでシュターツ・オーパーへと出かけました。
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演目はラヴェルの「子供と魔法」それにツィムリンスキーの「小人」の二本立てでした。
これらはマーラーとはまるで違う世界の音楽なので頭の中で鳴っている曲を払拭しようと努力しましたが、
それは無駄な抵抗のままで開幕を迎えました。

ラヴェルの「子供と魔法」はちょっとユニークなオペラで登場人物と云っても家具や動物なども登場しますので人だけではないのですが、
その動きや衣装などはこの時代に全盛期だったバレエ・リュスの影響が色濃く反映されているようです。

ちょっと口うるさい母親の云うことを聞かないワンパク小僧が、この日も叱られてしまったので、
部屋中のありとあらゆる物に当たり散らします。
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ソファにすわろうとした処、突然ソファが動き出し何時も受けている乱暴を嘆いたり、それに安楽椅子が加わりダンスを始めたり、壊された古時計まで嘆きを訴え出します。
いつも使っているウェッジウッドのポットも中国製のティー・カップと威嚇しはじめますが、このシーンでは歌詞が英語になって面白い配慮です。
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その後いろんな物の化身が登場し、猫を追っかけて2場にあたる月夜の庭に出ていきます。

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ここでも幹を傷つけられた木が嘆いたり、彼氏を標本にされてしまったトンボや夫を殺されたコウモリ、
雨蛙の集団に有りとあらゆる鳥たちが一斉に訴え大騒ぎに発展して行きます。
皆が襲いかかろうとした時にペットだったリスが怪我をしてしまいますが、これに驚いた子供が
自分のリボンで介抱した処で事態は収まり、皆でこの子を母親の元まで返しに行きます。
ホットして母親に抱きつき、小さく「ママ」と云った所でライトダウンとなります。

この日の舞台は既に幕が開いていてこれから始まる準備を芝居として見せています。
ステージ上には舞台監督が何やら確認の打ち合わせをしていたり、出演者もウロウロと出番の準備など
普段はカーテンが閉まっているステージ上の様子を見せています。
芝居上のTVクルーも入っていて、カメラのクレーンが2台も動いていて大掛かりです。

舞台上には大きな幹の木が背景として何本も配置されていて、その前にトレーラーを使った室内と
大きなスクリーンがその上部に吊られています。
室内はちゃんと作っていて壁紙などちょっとレトロなフランス風ので、子供部屋に相応しい柄が貼られています。
スクリーンにはアップの映像が写しだされていますが、ソファやカーペットの柄はカラフルな市松模様です。
(これは30年ほど前に流行ったイタリアのメンフィス風でソットサスがデザインした柄にそっくりでした。)

どうも日本風に聞こえてしまう音楽で始まりました。
家具類は歌手がそれらしい衣装を付けて演じているのですが、中々良くできています。
グルッと直角に回転したトレーラーの下から、絵本の中の王女がせり上がってくる仕掛けも上手に
見せていましたし、その内登場する動物たちも被り物を含め上手く作っていました。

カエルやリスもそれらしく見える大きな被りものですが、ネットで作られているのでちゃんと歌うことができます。
トンボや鳥はスーッと舞台上にせり上がり相当高い所で浮いていました。
大勢登場する鳥たちの衣装もオジさんが混じっているにも関わらず可愛らしく見えました。

TVクルーは最初は演技に絡むシーンのアップや状況の補足をするのに役立っていましたが、
段々と退屈で邪魔をするだけの存在となり最後の方はネズミが音響さんの役をやらせれたりと、
もう苦し紛れの演出と化してしまいました。

とは云え全体としてはとてもお洒落で見ていて楽しい出し物でしたし、なんと言ってもラヴェルの音楽が良いですね。
昨夜のマーラーもそうですが、ラヴェルあたりもライヴで聴くと色んな音のニュアンスが浮き彫りになってきてハッとするような綺麗な瞬間が訪れます。


休憩後のツィムリンスキーの「小人」と云うオペラは、全く予備知識がないまま観ることになりました。
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内容は(後から調べたのですが・・・)とあるスペインの王女が18歳の誕生日を迎え、皆でお祝いをしています。
その内、お祝いのプレゼントが贈られますが、どれもこれも高価な感じの物にも関わらずこのワガママ王女は気に入りません。
もう最後の手段っぽく運ばれて来た木箱の中からは男が出てきました。
この男、出てきた瞬間から皆に笑われていますが、
逆に王女はこれには興味をそそられたようで、ダンスをしたりとお気に召したようです。

その内余りに王女が絡んでくるので、この男には恋心が芽生えてきます。
それを告白したあたりで、王女は「エッ何言ってるの!!」とばかりと態度が一変します。

無理やり鏡を見せられた男はそこで初めて自分が「小人」であることに気付かされます。
余りのショックに息も絶え絶えとなった彼に向かって「今度は心を持たない人形にして・・・」と
王女が言い捨てて幕…と云うなんとも残忍な内容でした。

当夜はラヴェルがちょっと子供向きな出し物なので大勢の子供達が来ていましたが、
「こんなの見せて良いの?」とちょっと心配になるほどでした。

それでも衣装などはカラフルで女性の広がったスカート内にはライトが仕込まれていて、
まるでアンドンの様に光って綺麗でした。
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ツィムリンスキーの音楽は初めて聴きましたが、ちょっとワグナーとハリウッド映画音楽の中間くらいの感じがしました。
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まぁマーラーさん音楽においてもアルマについてもツィムリンスキーよりも優っていますよ。・・・


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by Atelier-Onuki | 2013-10-27 20:08 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

ドゥダメルとミュンヘン・フィルの演奏会から

演奏家の中にはパァ~と一躍有名になって世界的に人気が広まる人達がいるのですが、
私は天邪鬼なので余りその辺の人達の演奏会には出かけませんでした。

実はこのドゥダメルもその一人だったのでこの演奏会は当初予定には入れていなかったのですが、
知り合いの人が間違って二重に買ってしまったとかで譲り受けることになりました。

ベネズエラではストリート・チルドレン達が犯罪に関わるケースが多く、それらの防止策の一つとして考案されたのが、この子達への音楽教育でした。
それはもうユース・オーケストラとして活動をする程に成長を遂げたのですが、ドゥダメルはその音楽監督と云う立場でした。

そんな活動を知ったベルリン・フィルは人道的な見地から協力をし、アバドやラトルと云った巨匠が指導にあたったりしていました。

そんな訳で彼はベネズエラの星のような存在で、人気も高く引っ張りだこなのですが、
私にはそんな背景があるので世界的に支援をされているのかなぁ位に思っていました。

とは云えTVでしか聴いたことがなかったので、実際は如何なのか興味もありましたし、
演目がマーラーの7番なのでとても楽しみにして会場のフィルハーモニーへ向かいました。
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弦楽のオドロオドロした序奏に乗ってテノール・ホルンが吹く不気味な旋律で始まった曲はドンドンと複雑に絡みあって進行して行きます。

オゥ~このドゥダメルさん、中々良いじゃないですか・・・
まぁ名前がグスターヴォでマーラーのグスタフと同じだからかなぁ・・・と如何でも良い事を考えていました。

溌剌とした指揮ぶりは、この複雑極まりない曲を完全に振りこなしていますし音楽的なセンスも申し分なく感じさせます。
それにテンポが良い・・・実に自然で呼吸とあっているし、時折テンポが動くシーンでも違和感がなく説得力があります。
最大級の人数が入っているオーケストラもバランス良くコントロールされていて、変に飛び出してくる部分がありません。
このテンポ感と云い表情の付け方と云い何処となくアバドの演奏に似た感じがしてきます。
これはきっとアバドからも習っているのかも・・・と思わせるほどです。

それにしてもマーラーさん面白い曲を書いたものです。
ありとあらゆる楽器が絡みあって面白い・・・弦を初め管楽器もソロ・パートが多用されコリャ奏者も緊張するだろうな・・・
自然の環境に自分の心象が絡みあって、時には激しく、又時には甘美に絡み合います。
甘いメロディーには色気すら感じる程で気持ち良くなってくるのですが、すぐさまそれが不協和音によってかき消されたりと混沌としています。
楽器はありとあらゆる楽器が絡み合い、まるで人生における不条理や理不尽なことを表出するかの様に、
うねったり歪んだりと複雑で面白い音響効果を上げています。
打楽器なども大きさの異なった鉄板やカウベルまであらゆる種類が使われていますし、
四楽章のセレナーデと云われる楽章ではギターにマンドリンまで主役として登場して来ます。
彼は指揮者としても優秀だったのでこの辺の効果的な楽器の鳴り方など熟知していたのでしょうね。

まぁ余りお知り合いにはなりたくありませんが、面白いオッちゃんだなぁ~とつくづく感心してしまいます。

ミュンヘン・フィルもこの夜は最後まで集中力を持って演奏仕切りました。・・・やったら出来るジャン・・・
(ここ最近は、問題はあったにせよ厳しく鍛えられていたチェリビダッケ時代を懐かしく思う事もシバシバありました。)
この夜もそれは指揮者の功績かもしれません。・・・
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ラトルさんが2018年には64歳になるそうで、この年齢の時ビートルズは何をしていたのだろうかと
自問自答をした末に2018年以降のベルリン・フィルとの契約延長をしませんでした。(彼も面白い人ですね。)

そこで気の早い事にもう何人かの候補者が上がっていますが、ドゥダメルさんもその一人に選ばれていました。

候補者の顔ぶれを見ていて、まぁこの演奏会を聴くまではフム~ベルリンもつまらなくなるかなぁとちょっと心配をしていたのですが、
ドゥダメルだったら面白いかもと思うようになりました。

まぁプロ野球のドラフトで云うならば社会人の即戦力と云うより、将来性が楽しみな高校生で大化けしそうな期待が持てそうな気がします。

処で今年の紅葉は色付きが濃くて、ことのほか綺麗です。
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オッとマーラーを聴いたせいか支離滅裂な文章になってしまいました。



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by Atelier-Onuki | 2013-10-26 16:57 | 音楽 | Trackback | Comments(0)

ドビュッシーの「海」は

以前ロンドンに滞在していた折、日帰り旅行をする時間が出来たのでヴィクトリア駅から列車に乗り込み、
南東にあるイーストボーンと云う海岸の町へ向かったことがあります。

ここはドビュッシーがあの「海」を完成させた町だと聞いていました。

長閑な丘陵地帯を列車に揺られること二時間ほどで到着しました。
遅い朝食を取ろうと駅前のPabに入りましたが、結構混んでいてその殆どがお爺ちゃんたち、
皆と云って良いほど殆どの人が朝からビールを飲んでいます。
かつては逞しい海の男たちか・・・今は昔を懐かしむだけの酔っ払いと化してしまったのでしょうか。・・・

町も人出はそこそこあって活気はあるのですが、あの港町独特の何処となく侘しく寂しさが漂っています。

先ずは駅前からバスに乗って有名らしい「セブン・シスターズ」と云う白い断崖絶壁の方から見に行く事にしました。
30分ほどでバスを降り川に沿って丘陵を海に向かいました。
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周りの牧草地にはたくさんの羊が放牧され長閑ながら寂しい風景が続きます。
道と云っても人が歩いた跡が付いている程度で、しかも湿地なのか何処もかしこもぬかるんでいて靴はドロドロの状態です。

それでも途中に点在する潅木の中からはヒバリの鳴き声がひっきりなしに聞こえてきて、
ああそう云えばこの辺出身の作曲家だったヴォーン・ウィリアムズの「揚げひばり」なんて曲もあったなぁ~と納得していました。

20分ほどでようやく丘の麓にある民家に到着しました。
もうここから白い岸壁が遠くに見えています。
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更に丘の方へと登って行きましたが、途中のベンチには未だ供えたてと思われる瑞々しい花束が二つ置かれています。
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近くには「“Cliff Edge”から先へ行かないように」と看板が設置されていますが、どうも
白浜の三段壁と同じ不名誉な自殺の名所のようです。
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丘からはセブン・シスターズの岸壁が時折差し込む陽の光に白く輝いています。
これは太古の時代に北フランスの海岸線と繋がっていたのが、地殻の変動で引きちぎられたのでしょうか、まるでパンを引き裂いたような形状です。
そのクッキリと裂かれた線に沿って牧草地が広がる風景はシュールそのものです。
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ちょうど引き潮だったので海岸を沖の方まで歩き眺める事ができました。
対岸のノルマンディ辺りでもそうですが、この潮の満ち引きの激しさは相当のものです。
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岸壁を眺めるのも堪能したので今度は別のもっと川に近いルートを取って歩き出しましたが、道は更に泥るんでいて苦労を強いられました。

バスは町を通り越し更に海岸線まで進みます。
この海岸はイギリスでは有数のリゾート地だそうで、立派なホテルが立ち並んでいます。
さてドビュッシーが泊まった云われるホテルは、まぁグランド・ホテルと云う位ですからそこそこ大きなホテルだと思われるのですが中々見つかりません。
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もう諦めようかと思うほど歩いて行きましたら要塞の向こうに白亜の殿堂のような建物が見えて来ました。
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その大きさはホテルと云うよりも御殿と云った感じですが、その屋根の形やファサードの雰囲気はフランス風でなるほど、
それでドビュッシーが選んだのかなぁと納得していました。
それにしても宿泊代はとんでもなく高そう・・・彼はもう有名になって結構稼いでいたのでしょうね。
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あの「海」の最終楽章を頭の中にイメージしてみたのですが、このホテルから見える風景は海原が広がって行くだけで、ちょっと感じが違うようです。

恐らく「セブン・シスターズ」にも訪れその荒々しい光景もイメージしたのでしょうか。・・・
尤も作曲し始めたのはブルゴーニュだと云われていて、そこには海などはなく彼自身も「昔に見た海の印象を元に作曲した」と言っています。
印象と云えばジャポニズムも意識しているのかちょっと東洋的な雰囲気が醸し出されるシーンもありますし、
事実初版の楽譜には北斎の描いた「神奈川沖波裏」が採用されていて、その大胆な構図の絵は後々もレコード・ジャケットの表紙として多く使われていました。
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逆に私個人はドビュッシーと云えば直ぐにモネを思い出し、
彼が描いたエトルタの暴風雨の絵やベル・イル島で描いている大きな岩に波がぶつかっている絵を思い浮かべます。
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以前マルセイユのバスに乗っていて町外れの丘を登りきった時、パァ~と青い海が開けてきました。
そしたらバスの後方から女の子の声で「ラ・メール~ラ・メール~」と興奮気味に聞こえてきました。
誰でも海が見えるとワクワクするのですね。・・・
まぁこっちの「海」はシュルル・トレネでしたか。・・・



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by Atelier-Onuki | 2013-10-23 02:33 | イギリス | Trackback | Comments(0)

偶然の出会い

私の旅は何時も下調べを余りしないで行き当たりバッタリなのは以前のブログでも書きましたが、
それは美術館へ行く時も一緒でどんな展示品があるのか良く知らないまま入ってしまいます。

それがゴッホ美術館とか特定の作家の場合はある程度の想像が付くのですが、
一般的に大きな美術館などは展示点数も多いし多岐に渡っているので何が展示されているのか分からない事が良くあります。

それでも画集で見たことがある有名な絵に思いがけず出合ったりする事もあって、これはこれで楽しみでもあります。
特にその絵が好きでズ~と何処の美術館にあるのだろうと気になっていた絵に出会ったりするとそれは嬉しくて嬉しくて、
まるで昔好きだった女性に偶然出会ったような喜びが込み上げて来ます。
(残念ながらそんな女性との出会いはないのですが・・・)
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もう3年前でしょうか初めてロンドンにあるナショナル・ギャラリーを訪れました。
トラファルガー広場に面したこの美術館はそりゃ大きくて立派、内装も重厚で風格が漂っています。
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入り口には「このコレクションは皆さんのものです。」と云う主旨の看板が取り付けられていて、入場は無料です。
いや~さすが大英帝国・・・その気風の良さたるや・・・唯々感心していました。が・・・
(昨年行った時はオリンピックの後だったのですが、もうこの看板は見当たらず、代わりに「寄付をお願いします。」の看板があちこちにやたら目立っていて、
「ありゃ・・・帝国もちょっと弱気になったのかなぁ~。」とちょっぴり寂しくなりました。
入場料は未だ無料でしたが、私見では僅かでも取った方が良いと思っています。)
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所蔵品はもうコレデモカと云わんばかりの名作の数々で何処から如何観て行って良いのやら分からなくなってしまいます。
とにかく広い館内を隈なく観て歩きました。
そして一番奥の左端の部屋に辿り着いた時、更に一番左角にその絵は掛かっていました。
それはホッベマが描いた「並木道」です。
「エッ~こんな所にあったのだ。・・・」とこの予期せぬ出会いに鳥肌さえ立つのを覚えました。

この絵を最初に知ったのは中学での美術の時間で、それは教科書に載っていた高々10cm位のしかもモノクロ写真でした。
多分遠近法の説明として取り上げられていたのだと思いますが、
中学の美術なんて真面目には全く聞いていなかったのに何故か印象に残っていたのでしょうね。

その後もこのホッベマと云うちょっと間の抜けたような名前が気に入っていたようで、何かの拍子に一度観たいなぁと思ったこともありました。

そんな絵に偶然出会って、もう嬉しくて堪りませんでした。
それは幅が畳より少し短か目ですが大きく立派な絵です。
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それに着色が淡くて深みがあり、未だ春遠からじで道には雪が残っている風景ですが、その色使いには温かみすら感じるほどです。
並木は新しく植えられたのでしょうか、木の先の方にしか葉っぱが付いていません。
そのお陰で大きな空が見えていてどこまでも広がって行く空間が感じられます。

この木はポプラと云われていますが、その絵からは判別するのは難しい感じです。
唯、右下にはこれと同じ木を植樹している農園の人も描かれています。
このライン川河口の島にあるミッデルハルニスと云う村に通ずる道も
最近出来たのかなぁと300年前へと想像が膨らみます。

遠景の村も丁寧に表現されていますし、左の手前は川か何か水溜りがあってその周りを鬱蒼とした雑草や木々が描かれています。
これが良く描かれていて、まるでその水や木々のムッとした独特の匂いや湿気までも感じられて来ます。

さて、来週は仕事でロンドンへ行きますが時間を見つけて又この絵と再会するのが楽しみです。
それにこの絵はそれ程知られていない様で観ている人も少なく、心行くまでゆったりと鑑賞することが出来ます。

さあ当日は途中のベラスケスを初めとした名画の数々の誘惑には目もくれず一番奥へと歩を急がせます。



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by Atelier-Onuki | 2013-10-09 21:17 | 絵画 | Trackback | Comments(0)

演出家パトリス・シェローさん逝去によせて

昨日は残念な事に又一人の偉大な演出家パトリス・シェローが亡くなりました。
未だ68歳と云う事で未々彼の演出作品を観たかったのにその早い死が惜しまれます。
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シェローは俳優から映画監督、演劇の演出そしてオペラ演出へとその活動を広げて行きました。
中でも1976年にブーレーズと組んだバイロイト音楽祭における「ニーベルングの指輪」での演出が
大きなセンセーションを巻き起こし世界にその名を轟かせました。
[ラインの黄金]では舞台一面に大きなダムを設定した装置も話題になりました。
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若い頃はやはり天才演出家のジョルジョ・ストレーレルの元「ミラノ・ピッコロ座」でも働いていて、その優れた手法を身につけたようです。
このピッコロ座は元来ヴェニスで生まれたコメディア・デラルテを継承しているのですが、
この16世紀に出来た全ての喜劇の元祖ともいわれる演劇を現代風に蘇らせ、
それは抜群の演技力と面白い仕掛けに溢れています。
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昨今はモダンな演出が多く溢れていて、物によっては演出家の独りよがりや、思いつき程度のレヴェルの低いものも多くあります。
シリアスな演劇なら多少は理解も出来るのかも知れませんが、オペラはあくまでも音楽が主役で
その様式を崩してしまったらまるで違う世界の出し物と化してしまいます。
それに最近はやたら汚らしかったり、エログロ的なものまで登場してすっかり幻滅してしまい途中で帰ろうかと思うものまであります。

同じモダンな解釈でもシェローの場合は音楽が持つ様式感をちゃんと心得ていて、それに則って均整のとれた演出を心がけています。
それに彼の場合は何といってもお洒落・・・それはそれはセンスに溢れていて観る側を気持ちよくさせてくれます。
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上の写真はテアター・アン・デア・ウィーンで観たコシ・ファン・トッテですが。

彼の演出作品では他に96年のザルツブルクにおける「ドン・ジョバンニ」を観る機会がありました。
その舞台装置は直方体の造形物で構成され一目見ただけでその形状の構成や色使いにセンスが溢れたもので、
まるで淡い色調のクレーの絵が立体になったような感じがしました。
そしてこの立体が場面ごとに上下左右にと動き其々のシーンの情景を作りだしているのですが、
実はこのドン・ジョバンニは装置家にとっては一番難しい演目の一つと云われています。
難しい問題点は幾つかあるのですが、その一つに1幕6場、2幕も6場と云う多くのシーンを
音楽が途切れることなく速やかに変えて行かなければなりません。
まぁ逆に装置家の腕の見せ所とも云われています。

さて、この装置には色んな仕掛けもされていて飽きないよう配慮がされています。
エルヴィラがバルコニーに出てくるシーンでは2mほどの鉄柱が壁の角からスーと倒れて来て、ブリッジを形成し、
その細いブリッジ上にぶら下るような格好でエルヴィラが登場しました。
もう観ている方が心配になるほどで、歌手の方はさぞかし怖かった事と思います。

それに圧巻は騎士長の石像が現れるシーンで、突然壁が破れて強烈なストロボがチカチカと光ったと同時に
大きな石像の頭がゴロゴロと飛び込んで来てドン・ジョバンニが下敷きになってしまいます。
それは大きな頭で直径が2mはあったと思われ、これも危険な演出でしたが良く演技が出来たなぁと感心しました。
歌手もフルラネットのドン・ジョバンニ、ターフェルのレポレロなど豪華キャストで楽しめました。

この公演には日本から遊びに来ていた叔父と一緒に行ったのですが、チケット売り場ではもう完売との事、・・・
暫く様子を見ていたら急なキャンセルが出たのかホテルのベル・ボーイらしきお兄ちゃんが手にチケットを掲げてどうも売りたいようです。

「幾らの席?」と見せてもらったら、何と一枚は4500シリング、もう一枚も3600シリング、二枚で大体8万円・・・そんな高いチケットなど買えません。
「ちょっと一周回って又帰って来てちょうだい!」 と殆ど相手にしませんでした。

開演時間も迫り殆どの人達がゾロゾロと入場し始め、ちょっと焦りかけた処に先程のお兄ちゃんが未だ手にチケットを持ったまま帰って来ました。

まぁ8万円なんて払えませんが「どう・・・二枚で5000シリングでは?」と尋ねた処、
このお兄ちゃんアッケラカンとして「ああ良いよ!」と、これなら最初から訊けば良かったと思いつつ財布を見ると
何とそこには4500位しか入っていませんでした。

「すまん、足りないわ・・・これだけしかないけど・・・」、「それでOKだよ!」と交渉成立。向こうも早く売りたかったのでしょうが、
「もうもっと早く云ってよ!」と思いつつもイソイソと会場へ入って行ったのを懐かしく思いだします。

この時の公演は残念ながら映像も残っていませんし写真すら見つからないので、
もう観るチャンスがありませんが、何時かまた再演される事を願っています。
唯、彼は再演される際はキャスティングが変わるとわざわざ演技を付け直しにやって来たと云われていますから、もう観る事ができなでしょうね。・・・

あんなに素敵な演出をしてくれたシェローさんのご冥福を祈りつつ。・・・


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by Atelier-Onuki | 2013-10-09 00:28 | オペラ | Trackback | Comments(0)

サン・ジェルマン・アン・レーの一枚

この週末は急に冷え込み、どんよりとした雲が立ち込めて何処へも行く気が起こりませんでした。
逆にこんな時は気になっている絵の題材を仕上げるチャンスです。

もう随分前のことですが、ちょうど同じような季節に行ったサン・ジェルマン・アン・レー
のお城での絵に取り掛かりました。
行った時は時間がなかったのでササッと急いで描いたのですが、写真を元にちょっと気を入れて描き直しました。
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これはシスレーの洪水を描いた場所を訪ねた時でしたが、その場所が正確に分からなかったので、途中の様子を見がてら取りあえずはバスの終点まで行ってみました。

余り知らないで行ったのですが何とこの街でドビッシーが生れていて、その生家は街の観光局とドビッシー・ミュージアムを兼ねていました。
ちょうど月曜日で閉館中だったのですが中庭には入れてもらいました。
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回廊状の階段を彼が生れた3階まで登り、そこから見える家々の屋根越しに空を眺め、
あの「夜想曲」の一曲目での“雲”はこんな空を見てイメージしたのだろうかと、想像を膨らませていました。
まぁ後から分かった事ですが、この家には8歳くらいまでしか住んでなくてカンヌへと引っ越してしまったので、多分違う空をイメージしたのでしょうね。

それとこの街には街中のあっけないほどバス停から近い所にお城があります。
それも広大な敷地で庭など何処まで続くのだろうと思うほどです。
お城自体は門を入って直ぐに建っていて無防備な佇まいです。
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お城に沿って一番奥まで歩いて行きました。
そこは高台になっていて遠くパリの高層ビル群が見えています。
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丘陵にはブドウ畑が続いていて中々良い感じで、何とシスレーもこの辺りから石橋の方面を描いていました。
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一休みがてらスケッチをしたのですが、まさかシスレーさんと同じモチーフだと余りにもシツレーなのでグルッと反対側に向き返りました。
そこにはブドウ畑の向こうに素敵な赤い館が建っています。
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迷わずこれを描いたのですが、これも後から知った処によると、この館はアンリ四世館と云われるそうで、何とここでルイ十四世が生れていました。
このアンリ四世はメディチ家のマリーと再婚したのは有名な話ですが、ルイ十四世のお爺さんにあたります。

私の旅は何時も余り調べないで行き当たりバッタリばかりなので、よく後日に知って「エッそうだったのだ!」と後悔ばかりしています。

まぁ考えてみれば人生そのものも行き当たりバッタリ的なので、そりゃ仕方がないのかなぁと勝手な納得をしています。・・・

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追記
このブログを書いた後、何とコローさんも同じ所を描いていた事が分かりました。
偶然とは云え知らずにこんな巨匠と同じ題材を選んでいたとは・・・とても嬉しく思っています。
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by Atelier-Onuki | 2013-10-02 20:52 | フランス | Trackback | Comments(0)