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ウィーンの年末年始 1

私がウィーンへ来た頃は今よりもずっと冷え込みが厳しく、
まだ11月でも道路は真っ白でカチカチに凍っていました。

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建物もまだ煤で汚れたままの状態で、街全体が、
まるでブリューゲルの「雪の中の狩人」を
思わせるようなグレートーンで包まれていました。

それでも暮れから新年にかけては、音楽ファンには
ワクワクするような楽しみがあります。
それは、大晦日に国立歌劇場で上演される恒例の「こうもり」と、
元日に楽友協会で行われる「ニューイヤーコンサート」です。

「こうもり」はこの歌劇場が上演する唯一のオペレッタで、
筋書きはよく知られていますし、
何度も観ているウィーン子は沢山いるのでしょうが、
歌手も素晴らしい人たちが出演し、舞台装置もとても豪華で、
これを観ないと年が越せないなんて人たちもいます。

立ち見のチケットですら手に入れるのはとても難しく、
公演前夜の早い時間から、凍てつく厳寒の中、
まるまる一晩並んでやっとチケットを手に入れることができるのです。
私は パルテレ と云って平土間奥のとても良く見えるエリア
(もちろん立ち見です) のチケットが買えました。
ウィーンの年末年始 1_a0280569_0214810.jpg
チケットを買った後もまだまだ油断はできません。
今度は場所の確保をしなくてはならないのです。

一応はチケットを買った順に列になっていますが、
開場と同時にみんな我先とばかり良い席を探し走り出します。

結構前の方に並んでいたはずなのですが、パルテレに入ってみると、
何故かもう既に、前方の良い場所に子供やおお婆ちゃん達がいるではありませんか?
一体どうやって先に入れたのでしょうか???
このシステム、未だに不明です。

立ち見席…ではありますが、お婆ちゃん達は10分と立ってはいられず
大抵は腰をおろして聴いています。
しかし、曲が良いところに差しかかると「よっこらしょ」とおもむろに立ち上がり、
自然と足がステップを踏んでいます。
きっと昔は、彼女たちも上手に踊れたに違いありません。

この日は、ヤノヴィッツやクンツ等、素晴らしい歌手が出ていたのですが、
なんといっても、グルベローヴァ扮するアデーレには、あまりの上手さに唖然とさせられました。

シャンペンなどを飲むシーンでは本当に飲んでいるのではと思えるほど、
皆さんノリノリの演技で大盛り上がりのまま終演しました。

この年はステファン広場に大きなスクリーンが設置され、先程までこの「こうもり」の
ライヴを流していたそうで、今は広場の模様が映し出されています。
何万人いたでしょうか、溢れんばかりの人達が集まって来ました。
いよいよ0時のカウントダウンが始まり、皆大声でカウントをしています。

おもむろに内ポケットからシャンペングラスを取り出す紳士、勢い良く瓶を振っている若者達。

・・・drei,zwei,eins,null!!

一斉に降り注ぐシャンペンの雨、花火の炸裂、キスの嵐、
それを狙う人、護る人で大騒ぎです。
フト気が付くと何処からとなく微かに聞こえてくる妙なる調べ、・・・
そうゆったりと「青きドナウ」が流れだしていました。
人々の体は左右にと動き出し、自然にできた輪はだんだんと広がり
とうとう広場にいる全員の大円舞へと盛り上がっていきました。
曲はワルツからポルカへと移るにつれ、輪も小さなグループになりだした頃には、
もうすっかり踊り疲れて其々が家路へとつきました。

このお話はもうちょっと続きます。

by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2012-09-25 01:08 | ウィーン | Trackback | Comments(0)
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