処でニューイヤー・コンサートは、
公演の10日前にチケットが売り出されるとの情報を得ていました。 未々インターネットなど無い時代でしたから、情報を得るのも一苦労。 しかもウィーン特有の曖昧さ・・・この年も何枚売り出されるか、不透明。 なんとか200枚位売り出されるとの噂。 当然前の日から楽友協会のチケット売り場に並ぶのですが、 この厳しい寒さの中、ずっと外で並んでいるのは大変です。 このため、誰が考えたのやら、地元の人々の間では 点呼システムが確立されていました。 並んでいる順番にノートに番号と名前を書き込み、 時間を決めて点呼をし、その時本人が来ていないと ハネていくと云う仕組みでした。 それも夕方から、夜11時、夜中3時そして朝6時の点呼という なかなか厳しいスケジュール。 最後の点呼、朝6時の時点でやっと 手作りのナンバー・チケットを手に入れることができます。 朝10時頃だったか、チケット販売開始時間にチケット売り場へ行くと、 入手済みのナンバー・チケットに記載された順番通りに、 みんな順序良く並ぶことが出来るようになっていたのです。 地元の人々の情報に精通していないと難しかったこのシステム。 実は後に、あるオペラの公演の際、物議を醸し出すことになるのです…。 さて、我々は仲間と一緒に楽友協会の近くに住む作曲家Iさんのアパートで 合宿をさせてもらい臨戦態勢に入りました。 夕方並んでいますと見知らぬ日本人が寄って来て、自分は旅行会社の人間だが、 チケットを代理で買ってくれないかと尋ねて来ました。 規則では一人2枚まで買えるので、その内の1枚を売って欲しいとのこと。 出来るだけ良い席で、謝礼としてチケット額面プラス3000シリング (当時にして3万円くらい)を払うとの事なのです。 貧乏生活をしていた我々は当然ながら二つ返事。・・・ そこでフッと先出、絵描きのKさんを思い出しました。 そうだ彼にも連絡をしてあげよう、という事に。・・・ もう待つ間もなく彼もソソクサとやって来ました。 ドキドキしながらも一晩の苦労の甲斐あって 皆な無事にチケットを購入できました。 ![]() そしたら無欲なKさん「僕は2枚とも譲ります。」との事、 「それでは気の毒だから、この一番安いチケットを上げます。」と旅行社の人。 でも、着て行く服が・・・ 結局、彼は謝礼の6000シリングを元手に 仕立屋で一張羅をあつらえて、当日に備えました。 普段の演奏会とは違い、たくさんの花々で飾られたホールは華やかで、 改めてお正月気分も高まります。 この年はマゼールの指揮で、実に楽しく大いに満足させて頂きました。 この頃はまだ長閑で終演後にこの花々を持ち帰る事ができました。 何と楽団員の人達まで混じってステージ上の花を集めていたのですよ。 のんびりした時代でしたね…。 さて、このKさんは、その人柄がにじみ出たような、 精密で素朴なエッチングを描いていたのですが、 この純朴で欲のない性格が故に、後にまたラッキーな事が訪れて来ます。 この事は又別の機会にでも書きたいとなぁと思っています。 by Atelier Onuki ~ホームページもご覧ください~ 応援クリックありがとうございます! ![]() 人気ブログランキングへ
by Atelier-Onuki
| 2012-09-26 23:49
| ウィーン
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