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コートールド美術館のセザンヌ

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アヌシー湖のタロアーへ行って以来、何時かはこのセザンヌの絵を見たいと思っていました。
セザンヌの絵は折に付け今まで結構見てきたつもりでしたが、この絵には出会った事がありませんでしたので、それではと調べてみると、ロンドンのコートールド美術館にある事が判明しました。
私はそれまでこの美術館の存在を知らなかったのですが、素晴らしい収集品が集まっているようで、この度ロンドンへ行く機会があったのを機に訪れてみました。

ここは現在キングス・カレッジに属しサマセット・ハウスという大きな建物の一角に美術館として併設されています。それに素晴らしいのは美術館と云うだけでなく、学科の一部となっていて美術史などの研究だけに留まらず、その保存方法や修復の研究にも役立っているそうです。
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中に入ると瀟洒な館と云う感じで、美術館としては小さいながら落ち着いた雰囲気です。
入ってすぐ右側の部屋には中世からルネッサンスの絵画や工芸品が非常にさり気なく展示されています。
奥の方にある半円型をした素敵な階段を上がったら、これも拍子が抜けるほどあっけなく、そのままにゴッホとゴーギャンの名作が目に飛び込んできます。

それにしてもこの美術館はまるでどこかの家庭で観ているのかと錯覚をするほど無防備で実に身近に飾られています。暖炉や素敵な調度品の上にも飾られていて、その調和は暖かい温もりを感じさせます。しかもガラスが入っていない額縁が結構存在しています。
これは鑑賞者にとってはとてもありがたい事で、画家の筆使いや息遣いが間近に迫ってきてドキドキ、ワクワクしながら観る事ができますが、万が一の事があったら…と思うと、とても心配になってきます。

次のちょっと大きな部屋にはマネの「草上の昼食」やモネの素敵な松の絵「アンチーヴ」、更にドガなどが展示されていて、ついついじっくりと観てしまい全然前へ進めません。それにしてもこの部屋の圧巻はマネが描いた「フォリー・ベルジュールのバー」でしょうか、それはそれは気合が入った力作で私の知る限りマネの最高傑作ではないでしょうか。
そしていよいよ一番奥の部屋、右角にもうこの部屋からチラチラとお目当ての絵が見えています。
はやる気持ちと後ろ髪を引かれる葛藤の中、意を決して歩を進めました。
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これです、それはセザンヌだけが6点ほど飾られた一部屋の、窓際の壁に静かに粛々と佇んでいました。
横幅80センチ位のそれ程大きな絵ではありませんが、堂々としていてズシッとした絵です。
やたらダイナミックに描かれた左側の大木を通してほぼ中央の浮島のように見える所にお城が描かれています。
これは前の文章でも書いたように実際よりも、ずっと近くに引き寄せられしっかりとした存在感を与えています。この辺もやはりこの画家の人並み外れた洞察力が伝わってきます。
画面上部のはみ出した所から始まり、斜め右へと力強く流れて行く木の枝葉は、同じリズム感で遠景の山肌へと受け継がれ、最後は左下の岸部で受け止められています。逆に湖面には写し出された山肌が正反対の方向にやや控えめながら描かれバランスを保っています。そして中央には湖に映るお城が強調して描かれよりその存在感を高めています。

全体にブルーと緑をふんだんに使用し寒色系の静かで落ち着きのある絵ですが、手前の木の幹からお城そして一番遠景の山肌の一部には暖色系の淡い色が程よく配色されてこの絵に暖か味を添えています。
その光の指す方向から多分朝日が差し込んでいるのでしょうね。
実際には白い壁のはずのお城や周りの建物にも、淡いコーラルレッドと赤でアクセントを付けるなんて・・・フ~ムとしばし感心の瞬間です。

私は風景画ではコローを始め、次に来る印象派の人達の数々が大好きなのですが、このセザンヌに関しては特に敬虔の念を持って襟を正しながら接しています。
絵に対して何時も真摯に取り組んでいるこの厳格な画家は、実直で人間的には不器用でありながら、ウワッ~羨ましいなぁと感嘆するほど大胆に筆を走らせている部分もあります。
それでいて何時も冷静で哲学的ですらあります。

例えばシスレーなどはもっと人間的で、とても好きな画家(ひょっとして一番)ですが、「ああここなんか苦労しているなぁ」とか、その筆使いから試行錯誤の跡が感じ取られとても親しみが伝わってきます。

その点、セザンヌの絵はいつもちょっと高い位置から距離をおいて、言葉少なに語りかけて来るようです。

by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2012-11-07 01:35 | イギリス | Trackback | Comments(0)
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