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日曜美術散歩

折角の日曜日なのに朝から冷たい雨がショボショボと降っています。
こんな日は散歩に出るのも億劫になるし、かと云って家にいても気晴らしにはならないし・・・
なんて中途半端な気分でいる時、ここミュンヘンには打って付けの良い場所があります。
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それは道路を挟んで向き合う新旧二つの絵画館ピナコテークです。
名前の通りアルテ・ピナコテークは十三世紀から十八世紀初頭位までの古い時代の美術品を、
ノイエ・ピナコテークはロマン派辺りから印象派辺りが展示されています。
それに毎週日曜日は、なんと1ユーロで入場できるのですよ。
バス路線にもミュージアム・ラインと云って、ミュンヘン中のミュージアムを回っている路線があって、
この辺にも広く気軽に芸術に親しんで欲しいと願う市の思いが伝わって来て感心しています。

さて、いつも何方の方へ行くかと迷い、これは難しい問題です。
アルテの方はダ・ヴィンチを始め数々の名品が目白押しで、
その質・量ともに圧倒されてしまいますので、
「よし今日は行くぞ!!」と覚悟を決めてからでないと大抵は途中で降参してしまいます。

その点ノイエの方は明るくて好きな絵も沢山あるので、多少は気楽に観に行けます。
今日のように中途半端な気持ちのまま向かうのは当然ノイエの方です。

ここはモダンな建物で、天井からの採光も上手、程よい明るさで観易い美術館です。
中央の入口から時代順の指示に沿って歩いて行くと上手く高低の変化が付けられていて
知らない間にエッここは二階なのと、思うほど自然に上階へと上がって来ています。
所々には中庭があったり彫刻がさり気なく展示されているゆったりとした遊びの空間も施され
一息つける配慮がされています。
各々の展示室の空間もたっぷりとしていて、ゆっくり観ることができます。
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壁の色も淡いブルーグレーで特に印象派のイメージにはピッタリで心地良い雰囲気です。
最近オルセーの壁面は色々と実験した結果、ちょっとパープル系が入った
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ダークブルーと云う結論を出して改装をし、主役である絵が浮き立ち大いに成果を上げたそうですが、
これはこれでとても気持ち良く感じます。

ロマン派ではフリードリッヒやベックリンも結構あるのですが、やはり私の好みは印象派の人達です。
ここ印象派に与えられた四部屋では時の経つのも忘れて、もうっとりとして観ています。
最初には何故かルノワールの風景画が掛けられていますが、これは中々の力作です。
それにロートレックやシスレー、マネにモネと何だかバラバラな感じも。

次の部屋はゴッホとゴーギャンですからこれは納得の組み合わせ。
オランダのヌエネンで描かれた初期の機織の絵と向き合う壁面には、
「ひまわり」を中央に右にはアルル、左にはオーヴェールでの三作が並んでいます。
「ひまわり」は特に目玉らしく、チケットにも印刷されているほどです。
どれも素晴らしいのですが私は特に右側に掛けられているアルルの風景が好きです。
ブルーとグリーンの淡い色合いで、恐らく春でしょうか、あのアルルのジリジリした太陽の感じではなく
穏やかな絵です。手前のゴツゴツした三本の幹はブルーで描かれ、その向こうには果樹園が
広がっています。白い花を付けた木々はひょっとしてアーモンドの木でしょうか・・・
遠景にはアルルの街並みが、あの特徴的な教会の鐘楼も描かれています。
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私はこの絵を観ているとあのビゼーが作った「アルルの女」からの「カリヨン」の鐘の響きが
頭の中で鳴っています。
そして印象派の最後の部屋ではあの痛ましい大戦で傷ついたロダンの「青銅時代」に心を痛め、
最後にセザンヌの自画像に挨拶をしてから家路へと向かいます。
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処で、ある婦人なのですが、ここにあるマネの「アトリエの昼食」、あのカンカン帽を被った
青年が立っている絵が大のお気に入り、これを観るためにわざわざデュッセルドルフから
やって来るほどです。

実はその婦人とはウチの家内の事なのですが、その気に入り様は尋常ではなく、
そこに描かれたテーブル・クロスと同じ物をどこかで見つけてきた程で、
いつかはこれを敷いたモチーフを描こうと目論んでいたそうです。
結局は来客用として本来のテーブル・クロスの役割に戻り、今ではあちこちに赤ワインのシミが
見事に添えられています。

by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2012-11-14 23:43 | ミュンヘン | Trackback | Comments(0)
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