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リッカルド・ムーティとバイエルン放送交響楽団

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バイエルン放送交響楽団にとっても、私にとっても今年最後の演奏会に、
いよいよ大取としてリッカルド・ムーティが登場しました。

もうムーティに付いては今更何も説明の必要がないかもしれませんが、
この才能に溢れたナポリ出身の指揮者は今一番油が乗っている人で、
才能に任せたスタイルだけではなくすごいインテリだし、
何と云っても作品に対する真摯な取り組みが素晴らしい指揮者だと思います。

それに私の一番好きなウィーン・フィルとも一番相性が良くて、
このオーケストラの良さを存分に引き出しているのではないでしょうか。

プログラムはメンデルスゾーンの4番のシンフォニー、いわゆる「イタリア」と
後半はシューベルトの普段あまり演奏されないMesseの5番と云う内容でした。

先ずはメンデルスゾーンですが、もう登場する姿から風格が漂っています。
冒頭の木管がポンと何とも軽妙に出だした音は、すぐさま弦へと受け継がれ
その爽やかな暖かさは五月のポポロ公園あたりに吹く心地良い風を連想させました。
あの頭の方だけ枝を付けた独特の形をした松が気持ち良く揺れているようです。
二楽章もしみじみ歌いますが決して重くも暗くもならず程よい明るさ。
三楽章の出だしも揺れながら弾きだされる弦は何か萌えいずるよう期待感に溢れ、
オーケストラも良く健闘していました。
終楽章は颯爽としたテンポながら密度の高い丁寧な演奏で一気にフィナーレに達ました。
唯、ちょっと残念だったのは結構大事な所でホルンが二回も外した事でしょうか。
音程を取るのが難しい楽器だし、韓国と日本ツアーの疲れもあったでしょうが、
このクラスのオーケストラだったらビシッと決めてもらいたい物です。

実はこの曲は以前ウィーン・フィルとの演奏で聴いたことがあったのですが、
この曲にしてはあまりにも立派な演奏で、ちょっと重いかなぁと贅沢な事を感じました。
今回のBRとの演奏では丁度程よい軽さで、この曲にはむしろ合っていたかも知れません。
とは云え曲としてはドイツの交響曲の系譜に入る訳ですから、単に明るいだけでは物足りません。

後半のシューベルトは初めて聴く曲でしたが、
流石に歌手や合唱が加わるとこの人の独壇場みたいな物で、
それはそれは綺麗なハーモニーで良く歌います。
オーケストラをこれだけ流麗に歌わせる事ができるのは彼本来の才能かと思いますが、
それがシューベルトに相応しい感覚なのでしょうね。
あれだけ歌曲に精通したシューベルトですから、どの曲にも歌が溢れ、
例え交響曲にですら歌詞を付けると歌えそうです。

次の日はBRがライヴ放送をして、休憩時間にはムーティのインタビューが入りました。
その中で彼はウィーン・フィルと唯一シューベルトの交響曲の全集を録音した指揮者云々の話を
していましたが、(確かケルテスも録音していたかも)、それはさて置き、
昔からウィーン・フィルとシューベルトを演奏をするのは大変勇気がいると云われて来ました。
あれだけ沢山の作曲家が活躍した街ですが、生粋のウィーン子は実はこのシューベルト唯一人で、
我々外国人、否ウィーン人以外には分からない何か特別の感情や表現があるのでしょうね。
あのカラヤンですら、ウィーンフィルとのシューベルトの録音は無いはずです。

ムーティさんは昨シーズンからシカゴの常任に就任されましたが、できればもっと
ヨーロッパでの演奏機会をお願いしたいものです。
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by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2012-12-29 22:35 | 音楽 | Trackback | Comments(0)
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