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パウル・クレー展に寄せて

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デュッセルドルフのK-21(クンスト-21の略で21世紀芸術の意)と云うミュージアムで
クレー展が2月初旬まで開催されています。この美術館は、普段は現代アートが展示されています。

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今回の特別展は、NRW州(ノルト・ライン・ヴェストファーレン)の州立美術館が
クレーの100点目の絵画を購入したことを記念して開催されました。
クレーは戦前デュッセルドルフのアカデミーで教鞭をとっていた事もあって縁の地であり、
彼が住んでいたアパートも未だ現存しています。

デュッセルドルフの美術館は毎月、第一水曜日の18時から20時までは入場がフリーで、
しかも解説が付くそうで、これは芸術を気軽に親しんでもらう為の素晴らしい政策だと思います。
私の知る限りミュンヘンでは日曜日が1ユーロ、パリでは毎月第一日曜日がフリー、
ロンドンに至ってはナショナル・ギャラリーであろうが、大英博物館であろうが年中フリーと云う
気前の良さでで、芸術愛好家にとっては本当に有難い制度です。

さて、このベルン生まれの画家については既に良く知られているので説明の必要は無いと思いますが、
先ずなんといっても名前のKleeってのが素敵です。
これはドイツ語でクローバーを意味し、その響きや意味合いからも彼の絵のイメージにマッチしているような
気が致します。
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抽象画が全盛期を迎えようとしていた時期に、どの流派にも属さず彼独自のスタイルに辿り着き、
そのパッと見は幾何学的な感覚ながら詩情や音楽さえ聞こえて来そうな絵画の世界からは
控えめながら色んな事が語りかけられてくるようです。
彼自身、幼い頃からヴァイオリンに親しみ、これはプロ級の腕前があったそうですし、
文学にも関心が強く、詩的な感覚はその影響も大きいようです。
その後も私的な日記や芸術論の本を執筆しています。
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画家としての転機は、マルクと行ったチュニジアで受けた印象が大きな衝撃を与えたようで、
画風や色使いが一変いたします。
これには旅行記の様な画集が出ていて、その影響を受けた風景や建物、装飾品やタペストリーなど、
マルクの作品と共に紹介されていてとても興味深い物でした。

このクレーさん、私が学生だった頃には良く勉強をしたものでした。
その後、教えていた学生さんなんかにも試してもらった勉強方法があるのですが、
これは大いに成果を上げました。

彼の絵は、先ず何と云っても色使いの素晴らしさが傑出しています。
未だ色彩感覚に乏しく、自分独自の色使いが出来なかった頃、
なるべく明るい色使いをしている彼の絵画を選び、それと同じ色を作る事から始めました。
もっともオリジナルは水彩から油彩、パステル類まであって、キャンバスも様々、紙あり布有りで
その表面は一様ではありませんし、絵の具にもマチエールが付いていて簡単ではありませんが、
そこから一番近い色を抽出します。
それから大体何パーセントの割合で構成されているのかを割り出し、自分が作った別の構成の画面に
大体同じ位の分量で彩色してみると云うものでした。
出来上がった作品は、このお陰で、色使いに関しては何だか凄く良くなった様に感じていました。

彼の晩年は亡命や大病に煩わされ痛々しさを感じますが、絵画の世界を超えて、
その後にやって来るデザインの世界にまで大きな影響を与えた独自の世界は、
これからも沢山の芸術家やデザイナーにとって一つの指針であり続ける事でしょう。

館内のカフェもモダンです
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by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2013-01-05 23:06 | デュッセルドルフ | Trackback | Comments(0)
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