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ダボス会議の思い出

毎年1月末に開催される世界経済フォーラム、いわゆるダボス会議は
今年も25日から開催が予定されています。
日本も毎年参加していて、スポンサーが付いた年にはパーティを開き
各国の要人を招待して外交を行なっています。

ある年、結構大きな予算が付いたそうで、ジャパンデーと称し大きなパーティが企画されました。
会場の装飾やプレゼンテーションなど大掛かりで専門的な準備が予測された事もあり、
弊社に協力の依頼が回って来ました。
一番のメインテーマとなったのは日本文化の一つ、海外でもブームの寿司。
日本並みの本物のクォリティで寿司を提供したいとのこと、
しかも雰囲気やサーヴィスまでも日本の様にきめ細かく、来客を待たせたくないとの配慮から
寿司職人はズラッと5人位は並べたいとの事でした。

欧州ではこんな企画はよくあり、いろんな国にまで出張してくれる寿司屋さんもいて、
ちゃんと心得もあり手馴れた物なのですが、ズラッと5人となるとそう簡単には行きません。
先ず何時もお願いしているお店に訊きましたが、やはり人数が揃わないとのこと。
スイスを初め近そうな街にある店も何軒か問い合せましたが、
どこも寿司職人の人数がネックになってしまいました。
そんな中やっとミュンへンにある知り合いの寿司屋さんが、
「よっしゃ、何とか集めてみます!」と勢い良く引き受けてくれました。

会場装飾も、中央にドンと大きな生花を置きたいので、生花ができる人を探さなくてはなりません。
調べてみると、何とチューリッヒに草月流の支部で師匠格のスイス人がいる事が分かりました。

会場はダボスでもそこそこ大きなホテルの宴会場で、
下見を兼ねてホテル側との打ち合わせをしましたが、
彼らは過去にこのジャパンデーを行なった経験があり心強い対応でした。
当然ホテル側からもコックさんがズラリと並び当地の料理を提供すると云う、和食・洋食の饗宴。
会場装飾も着物の反物による案で決まり、当日に向けて準備が進められて行きました。

順調に準備も進み準備万端、当日、開場を待つばかりとなりました。
例の寿司コーナーにはネタケースが日本の様にズラッと並び、
その後ろには頼もしい寿司職人の方々が予定通り5人で手際よく握り始めました。
しかもネタは特別ルートで良いものを仕入れたそうで、リーダーは自信たっぷりです。
着物を着たサーヴィスの女性達まで揃っています。
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中央の生花はお弟子さん達と数時間の格闘の末、オブジェの如くモダンで堂々した作品が完成しました。
このおっ師匠さん、中々気が利く人でメインの生花だけでなく、
各テーブル用の可愛い飾花も作ってくれるし、受付のテーブルやプレゼンテーションのコーナーには
中型の生花までも用意してくれました。
このシーズンは花の種類が少なく、これだけの数を揃えるのはとても困難なのだそうですが、
おっ師匠さん、特別ルートを通じてサンレモの園芸店に直接予約を入れて、準備をしてくれていたそうです。
「この花、昨日着いたばかりだからフレッシュでしょ~。」と自慢げに語っていました。

いよいよ今回の主催者である大臣ご一行が到着、リハーサルも終え、招待客もパラパラと集まりだしました。
この年はやはり気合が入っていたせいか、大臣クラスだけでも5・6人は来られていたようです。
企業関係でも、テレビで見たことのあるような有名社長さん達が次々と来賓されています。

宴もたけなわになった頃、ホテルのオーナーが私の所に歩みよって来て、
「あの~、このお寿司ですけど、5人前程お持ち帰りする事ができますか?」と尋ねてきました。
「まぁこのパーティが終わって、余っていたら可能ですが。」と答えると、
「イヤ今すぐに欲しいのです。」
・・・「それは無理ですね。」・・・

実は別のホテルから問い合わせがあって、
何処かでこの寿司パーティの噂を聞きつけたあのビル・ゲイツ氏が、
寿司が食べたいと言い出したそうです。
いや私としては相手が相手だけに提供してあげたかったのですが、
やはり受けている仕事の方が大事で、万が一足りなくなってしまったら困りますので、
まぁ食べに来て頂くのは大いに歓迎致しますが、
そちらに届けることは残念ながらできませんと丁重にお断りしました。

結局は、充分に準備していた食材は余り、
終了後には、宴会中、指をくわえて見ていただけのスタッフの為にお弁当の寿司を作ることができました。
こんなに余るんだったら彼にも食べて貰えたのにな…と、今となってはちょっぴり後悔をしています。

by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2013-01-15 00:29 | スイス | Trackback | Comments(0)
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