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7日間の入院生活・2

病棟は廊下を挟んで医療室や看護婦の控え室と10部屋ほどの病室に分かれていていました。
この廊下には何時もコーヒー紅茶に、水もガス有り、無しの2種類が置いてあって
自由に摂取する事ができ助かります。
3日目には食事の時間や回診、検診などのタイミングにも慣れて来ました。
食事も当初は流動食しか与えられませんでしたが、もう3種類の中から選べる様になりました。
朝夕は食パン2枚にバターやチーズとハム2切れと粗食ですが、お昼は温かい料理が出て、
薄味ながらも結構美味しい味付け、下手にこの街のレストランで塩っポイ味付けの物を食べるより
余程美味しい物です。
                          普段ペンネは余り食べないのですが、これが入院中一番のご馳走でした 
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唯、ちょっと量が少ないのでドイツ人の人達には物足りないのではと心配になるほどです。

相部屋のオジサン2人は食後、申し合わせた様に上着を来て一服するために出かけて行きます。
一度「どう、一緒に行く?」と尋ねられましたが、「もうちょっと我慢する。」と断りました。
彼らは耳の病気なのでそれ程問題ではないのでしょうが、
私は喉も切っているのでさすがに後2週間位は禁煙です。
それに傷口が完全にふさがるまで、禁酒で安静、運動も控え、重い物も持たない様に咎められています。
体は未だダルイし喉も痛くて喋るのも辛いのですが、やはり限りなく退屈で、
病院内をウロつき始めました。

あの新館への迷路の様な迂回路にも慣れ随分と詳しくなりました。
そんな中、エントランス・エリアにはカフェとキオスクもあるし、
人の出入りも多いのでちょっとした退屈凌ぎにもなりよく出かけました。
この小さなロビーには椅子が10脚ほど点在しているのですが、
行くと必ず一番出口に近い端っこの席に背中を丸めて静かに座っているオジサンがいます。
この人は余ほど退屈で人見知りなのか、殆ど喋りません。
時折、立ち上がってゆっくりと歩くのですが、足を引きずりながら小さな声で
シャイセ!・・・シャイセ! (意: くそ~!)」
と独り言を云っています。
最初の頃は目があっても背けていましたが、こう頻繁に会うので、
3日目辺りにはとうとう会釈をする程にまでなりました。
そして次の日に 「どうしました?」 と尋ねた処、
ようやく、足の手術を受けた事やその後の不満などを、小声でボソボソと話し始めてくれました。
何と明日には退院をするのだとのこと。
次の日の朝、ロビーへと降りて行きましたが、案の定そこにはもう彼の姿は無く、
何だかちょっぴりセンチメンタルな気分になりました。

病室前の廊下へも頻繁に出ては、ベンチに座ってヘッドホーンで音楽を聴いて時間を過ごしていました。
隣の病室は大きくて6人部屋のようですが、この部屋からも頻繁に出てきてベンチに座っている
若人がいます。
この人は鼻の手術を受けたようで、包帯を巻いたブリッジを何時も両方の鼻の穴に突っ込んでいて、
何時しか私は彼の事を「ブリッジ君」と勝手に命名しました。
ドイツ語が全く喋れない彼は看護婦さんとはカタコトの英語でやり取りをしていますし、
ある日訪ねてきた怪しげなマリオ青年とは何語だか全く判明がつかない言語で会話をしていました。
マリオも偶々彼が着ていたジャンバーの背中に Mario Crew と書いてあったので
彼のこともそう勝手に呼んでいただけです。・・・
月曜日の夕方、閑散とした廊下でブリッジ君と私だけがベンチに座ってボーッとしていました。
もう面会時間も終わろうとした時、バタンとドアが開きドヤドヤと
黒ずくめで威勢の良い男たち7・8人がブリッジ君めがけ急ぎ足で迫って行きました。
あっブリッジ君危うし・・・私もとっさにどうしようか・・・と思いきや、
これはどうも私のアクション映画の見過ぎだったようで、彼らは仕事帰り、
ギリギリ面会時間に間に合うよう急いでやって来たのでした。
黒ずくめのジャンバーには皆 Mario Crew と書かれていて大勢のマリオが訪ねて来た訳です。

またある日から、廊下をペタペタとスリッパの音をちょっと気になるくらい大きくたてて歩くオバサンが
加わりました。しかも小股で歩くので余計気になります。
どこの国出身なのか分かりませんが、ちょっとラテン系?・・・ドイツ語はこなれた感じなので
長くドイツにいるのでしょうが、文法などはメチャメチャなので余り理解ができません。
ある夕方、例によって廊下で座っていると、このオバサンがやって来てシャワー室へ行きたい様子。
直前に別の人が入っていくのを見かけたので、「今は使用中ですよ!」・・・「下の階にもあるよ」、
などの会話を機にやたらと話しかけてくるようになりました。
シャワーからの帰りにも「明日手術なの・・・だからシャワーを・・・」と照れくさそうに話していました。
翌朝も早く目が覚めたので、院内をブラブラ散歩をしていると、丁度このオバサンが
手術室へ運ばれて行く処に出くわしました。私を見つけるとスガルような目付きで
「コレカラ、オペなの~」と十字を切りながら不安そうに訴えていました。
朝が早く未だボーッとしていたせいもあって、何だか映画のワン・シーンを見たような錯覚に陥りました。
まぁ彼女の手術も無事終わったようでしたが、耳だけでなく数箇所の手術を受けたそうで、
一旦退院をして、後日、また反対側の耳の手術を受けるそうです。
大変でしょうが彼女も全快することができるよう祈っています。

もう院内は隈なく散歩をし、いろんな物を見つけました。
ここにはチャペルまであってちゃんと礼拝も行われています。
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しかし流石に院内にも飽きてきました。
まだ喉は痛いし頭もボーッと熱っぽいのですが、例の疎水沿いが気になりますし、
まぁちょっとだけ と思い、脱出してみる事にしました。
疎水はなみなみと水を貯え、静かながら勢いよく流れています。
並木道も想像以上に自然が残っこていてまるで森に来たような錯覚さえ覚えます。
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それにしても何処まで続いて行くのでしょうか、途中にあった自転車道の案内板には
ステルンベルク湖まで19kmと書かれているので、おそらくこの疎水もこの湖から
流れて来ているのでしょう。
雪でボーッと霞んでいた教会も、期待通り素敵な姿です。
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この辺、Pasingへは来たことがなかったのですが、古くて趣がある建物も多く、
なかなか素敵ですっかり気に入りました。

一週間の入院は退屈でしたが、環境は素敵だったし、看護婦さんたちも優しくて
至れりつくせりの看護にはいくら感謝をしてもし尽くせない程です。
病院へ提示したのは健康保険のカードたった一枚とパスポートだけで、
外国人である私に対しても、何の分け隔てもなく、丁寧に看護をしてくれました。

たった数日前までの事だったのに、もう随分昔の出来事の様な気がして、
幻のような印象しか残っていませんが、しっかり喉はまだ痛むし、
ちょっとアレルギーの様な後遺症もあって、あぁ~確かに手術を受けたのだなぁと再認識しています。

by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2013-01-26 03:09 | ミュンヘン | Trackback | Comments(0)
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