![]() 毎年早春になると蕗の頭を摘みに行くのは暫く前に書いたのですが、この帰り道には エーベンハウゼンの駅前にある古いポスト・ホテルで遅い昼食を取るのも楽しみの一つです。 ここは1500年初頭に建てられた大きなホテルで、もうドイツでも段々少なくなってきた 伝統的なドイツ料理を味わう事ができます。 ミュンヘンのレストランでは気候が寒いせいなのか大抵塩が勝った味付けが多いのですが、 ここはちゃんと作っていて結構美味しく頂くことが出来ます。 大きなキッチンも入り口近くの廊下から見えるのですが、40代のシェフとそれに何歳でしょうか、 もうかなり高齢のお婆さんがいつも一緒に作っていて、見るからに伝統的な感じがします。 料理の種類は定番のシュニッツェルを初め、ツビーベル・ブラーテン(こんがりとしたフライド・オニオンが 乗ったステーキのようなもの)、 マウル・タッシェン(受難節には肉が禁じられていた時代に、どうしても食べたかった人が ラビオリのような袋の中にひき肉を隠して作った一品)、 シュバイネ・ハクセ(日本で云う豚足をこんがり焼いたヘビー級)、など当然古くからあるドイツ料理です。 先日は珍しくラムのハクセがあったので頼んでみたのですが、こんがりと良く火が通っていて、 もうコンビーフの様に柔らかく、それに良く煮込まれたコクのあるデミグラス・ソースもどきがかけられて とても美味しく頂きました。 これは受難節が明けイースター期間中の日曜日にはラム(生贄の象徴)を食べる習慣があるそうで、 そう云えばこの日も丁度日曜日でした。 ![]() 店内は古くて歩く度にギシギシ音を発てる分厚い木の床に、壁も風格のある板が腰まで取り付けられ、 その上の漆喰壁も長年の時の流れを感じさせる色合いに染まっています。 入口付近の壁には薪で暖を取る大きなストーブが未だ現役として活躍していました。 家具も古いままですが、ちゃんと清潔に保たれていてテーブルにはアイロンがけもビシっとした テーブル・クロスが掛けられています。 それに各テーブルに置かれた生花もちゃんとフレッシュな生の花で心地よい感じです。 壁という壁には所狭しとと古い絵が掛かっています。 このレストランへ入る手前には飲むだけの人用の小部屋もあるのですが、そこの正面の壁には 何とゲーテの肖像画がデンと掛けられています。 ひょっとしてこの店にゲーテが立ち寄った事があるのかもと、家に転がっていたゲーテの「イタリア紀行」を 読んで確認してみました。 ミュンヘンを朝早く発った彼はミッテンヴァルトを目指して馬車を急がせます。 それにしても約100kmの道のり、馬車とは云え良くここまでたどり着いた事です。 このバイエルンとチロル地方の国境に位置するミッテンヴァルトは風光明媚な小さな町で ヴァイオリン作りの町として知られています。 この途中ではヴォルフラートハウゼンに立ち寄ったと記されていますが、このポスト・ホテルは 丁度この町へ通じる街道に面しているので、間違いなくここで昼食かなんかを取ったのだと確信しました。 紀行文は翌日にはインスブルックを経ていよいよブレンナー峠を目指すのですが、 この辺まで読んでいる内に、この翻訳本の向こうで大層な言い回しをしているドイツ語が 聞こえて来るような感じがしました。 普段ドイツ人の会話は大した内容でもないのに、何だか勿体ぶった云い方で偉そうに喋っていて 疲れる事が良くあります。 ゲーテの文体はより一層偉そうに響いて来て、とうとう我が愛するブレンナーへ着く前に読むのを中断してしまいました。 by Atelier Onuki ~ホームページもご覧ください~ 応援クリックありがとうございます! ![]() 人気ブログランキングへ
by Atelier-Onuki
| 2013-04-22 19:25
| ミュンヘン
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Comments(2)
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欧米は本当に建物を大切にするんですね。歴を目の前で見られるって、すごいロマンだとおもいます。ブログを通して、ヨーロッパを楽しませていただいています。
ありがとうございますo(^o^)o
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Kukko様 コメントありがとうございます。欧州の建造物は石の文化なので何百年、何千年と歴史が刻み込まれて行きます。
ドイツも空襲で街の殆どを焼失したのですが、教会や旧市街地などは粘り強く瓦礫を拾い集めて再建されました。新しく建てる建造物や看板なども街の景観を損ねない様に厳しい審査があります。
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