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「ナクソス島のアリアドネ」公演から

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昨夜のバイエルン国立歌劇場の公演はリヒァルト・シュトラウスの「ナクソス島のアリアドネ」で、会場が何時ものナショナル・シアターではなくイザール川を越えてプリンツレーゲンテン・テアターでの上演でした。

ここはルートヴィッヒ二世がワグナーの為に建てた劇場で、その直ぐ後に建てられたバイロイト祝祭劇場と建築スタイルが良く似ています。
外観も色こそ違えバルコニーを備えたファサードなど形はそっくりですし、劇場内も客席をギリシャ風の円柱がぐるりと取り巻いている所などバイロイトを連想させます。
それに歌劇場としては小ぶりで客席数も1000席ちょっと、これはステージにも近く声の通りも良くて観客にとってはとても贅沢な劇場です。
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普段は小編成のオーケストラやミュージカルなどの公演が多いのですが、このオペラのオーケストラ編成も小さいのでこの劇場での公演となったのでしょう。
それに終戦後ナショナル・シアターが空襲で使えなかった時代の20年間程は、この劇場で上演をしていて音楽監督にはクナッパーツブッシュやショルティの名が連なっていて、この頃に聴きたかったなぁと羨ましく思いました。

19時まだ明るいうちに会場へ着きましたが、もう大勢の人達が詰め掛けてきています。
道路を挟んで劇場の右側の広場にはドンと偉そうに座ったワグナーのモニュメントが
鎮座しています。
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劇場正面の入り口へは馬蹄形の上り坂が付いていて、かつては馬車で乗り付けたのでしょうが今はタクシーが何台か乗り付けていました。
劇場内のレストランやカフェテリアそれにロビーやクロークなどレトロ感たっぷりで時代が逆戻りしたような錯覚に陥りますが、味わい深い歴史を感じさせられます。
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まだザワザワとした客席に着きましたが、ステージのカーテンは空いたままでダンスの練習をしています。
オーケストラも殆ど揃っている状態、これはどうも既に劇は始まっている模様で、
これは観客をも巻き込んだ演出意図と推測されます。
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内容的にもある劇をこれから作っていく設定ですから、準備段階から観客も参加させています。
案の状、何の前触れもなく役者が登場してきて、これからダンスの練習をお見せしたいのでご覧下さいと、劇中の主人と思しき人に挨拶した処で、知らない間にピットに入っていた指揮者が突然振り始めました。
暫くのダンスのあと、これまた客席脇の扉から音楽教師役が現れイヨイヨお芝居の始まりです。
この芝居掛かった内容のオペラは何の事件らしい事件も起こらないし、あるお金持ちの退屈しのぎに催した余興を、オペラか茶番のダンスかと揉めながら結局は両方混ぜてしまうことになり、二幕目で実際の劇中劇を皆で観ると云う設定なので、知らない間にゴジャゴジゃとした始まりは中々上手い演出だと思いました。
オペラが進行している間も大きな鏡が付いた壁を大道具さんたちがさりげなく登場してきて粛々と静かに動かし場面を変えていきますが、まるで彼らも役者の一部のような扱いです。
鏡なのでバックやサイドステージが丸見えですが、お構いなしで如何にも今は準備中である事を印象付けています。
劇中劇でのアリアドネとバッカスの二重唱でも、二人だけの登場だとちょっと退屈しそうな部分では、まるで影のように衣装も鬘も同じ生き写しのような男女8人づつが同じ動きをしながら変化をもたらしていました。それも主役が目立つよう頭一つ分くらい小さな人達を良く揃えていました。
フィナーレに向かって三人の妖精たちの甘く幻想的なハーモニーにアリアドネとバッカスの二重唱が絡まってくる所などエコーが掛かっているような不思議な音響効果を発揮していました。
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歌手もアリアドネ役のWestbroekはワグナーのブリュンヒルデやイゾルデ役でも充分歌える声量と張りのある声で存在感たぷりでしたし、ツェルビネッタ役のFallyも歌いまわしは勿論のこと演技もこのコケティッシュな役を奔放にこなしていました。
その他の歌手たちも全体的に良く歌っていましたし、指揮者のビリーもフランス人ですがウィーンで長く活躍しているのでこの辺のオペラはお手の物といった感じで上手に纏めていました。

この劇中劇の間、舞台袖でずっと観ていた作曲家役はソプラノですが、途中から何だかシュトラウス自身とダブってきて、彼も作家のホフマンスタールもこのお芝居と同じ感覚、否自分たちの事を書いたのではと思えて来ました。

まぁリヒァルト・シュトラウス縁のミュンヘンで彼のオペラを観れたのも感慨深い一夜でした。

by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2013-07-09 05:24 | ミュンヘン | Trackback | Comments(0)
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