「ボリス・ゴドゥノフ」の公演から

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先週末の金曜日、何時もですとやっと週末を迎えるのでちょっと嬉しい気分になるのですが、この日は少し気が重く感じていました。

と云うのもこの夜はあの暗くて重い内容の「ボリス・ゴドゥノフ」の公演が控えていたからです。
しかも開演が20時からと遅い上に休憩もありません。

だったら行かなければ良いのですが、この公演が私にとってケント・ナガノをこの歌劇場で聴ける最後のチャンスだったからです。
ここ数年、順調に彼の業績も上がって来て、これからと云う矢先の一昨年、ここの支配人と意見が合わず任期を延長せず辞任する事になってしまいました。
秋からはPetrenkoと云う新任の音楽監督になりますが、未だ一度も聴いた事がないので何とも言えませんし、
折角良い感じになって来たケント・ナガノが去って行くのは寂しい限りです。

さてこの夜の公演は“Oper für Alle”(全ての人にオペラを)のモットーの元オペラ前の広場には大型スクリーンのパブリック・ヴューが設置されています。
開演30分も前には既に大勢の人で埋め尽くされていましたが、慣れている人達は石畳の上に大きなマットレスを敷いて、
中にはバスケットに飲み物や食べ物を一杯詰め込んでいてまるでピクニック気分です。
それにしてはもうちょっと楽しめるオペラを選んで欲しかった処です。
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会場内も満席の中、ケント・ナガノの指揮は引き締まった演奏で始まりました。
キビキビと音楽を進めながらも指揮ぶりは丁寧な表現です。
それに歌手への指示も的確そのもので豊かな歌劇場での経験を感じさせます。

史実を元に書かれたこのオペラの冒頭は誰が皇帝に決まるのかを知る為に民衆がクレムリン広場へワラワラと集まってくるシーンですが、
迷彩服に身を包んだ機動隊をイメージさせる兵士達によって制圧されています。
彼らはプラカードを手にしてまるでデモ隊の様相です。
このプラカードを途中で掲げた処、プーチンを初めそこには主要各国の大統領や首相の肖像写真が、
日本の安部首相まであってちょっと笑いだしそうです。
恐らくイコンの代わりとして現代風にアレンジしています。
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気が付けば舞台奥からはゆっくりと戦艦か工場かを思わせるような無機質で巨大な造形物が静かに迫上がってきました。
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これはクレムリン宮殿の代わりなのでしょうが、何ともSF映画を見ているようです。
このオペラで唯一華やかなボリスの戴冠シーンでもこの無機質な造形物の甲板と思しき所で行われます。
この造形物は舞台上を縦横無尽に動いたり、大きな壁面が開いて室内のシーンを作ったりと終始各シーンを演出しています。
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オペラ中盤でのまたこのデモ隊が集まって来て抗議行動を起こすシーンなどは、
城壁に見立てた装置をめがけて何本もの火炎瓶が投げ込まれますが、
こんなのあり?? と思うほどこれでもかと一杯投げ込まれます。
まぁ劇場は耐火構造なので生火を使うシーンは良く見てきましたが、こんなに激しく使ったシーンは初めてでちょっと心配になるほどでした。
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全体としてはボリスを初め歌手も良く歌っていましたし、終始緊張感を切らさず纏め上げたケント・ナガノの指揮も賞賛に値しました。

終演後、出演者は劇場前の階段まで出てきて、屋外の観客にカーテンコールの挨拶をしていました。
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この“Oper für Alle”の催しは土曜日もあって、今度はメータがヴェルディのレクイエムを指揮するので、これも聴きに来る積りだったのですが、
土曜日のお天気が余りにも良くてツイツイ遠出をしてしまい、疲れ果てた体はもうビールを飲む力位しか残っていませんでした。


by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2013-07-30 19:04 | ミュンヘン | Trackback | Comments(0)
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