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ヴェルディ「マクベス」の公演から

今週はそこそこ仕事も忙しいのに、月曜日にオペラ鑑賞でした。
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しかもシリアスでヴェルディの中でも演奏時間の長い出し物です。
尤もヴェルディのオペラは最後の「フォルスタッフ」以外は全てシリアスな悲劇ですが、
中でもこの「マクベス」はキツイ内容です。

原作がシェイクスピアなのは有名で、これは黒澤明の映画「蜘蛛巣城」でも日本の戦国時代に置き換えて製作されています。

ヴェルディもこの原作にはえらく興味をそそられたそうで、相当気合を入れて作曲をしたそうです。
ヴェルディやその先輩格にあたるベルリーニのオペラなどもシリアスでドロドロした内容のものも多いのですが、
唯、そこに付けられた音楽が綺麗なので救われています。

シェイクスピアの作品ではごく一部の作品を除いて必ずと言って良いほど流血シーンがあります。
興味深いことに、血生臭い歴史があったにも関わらずフランス人は舞台上での流血シーンをあまり好まず、
かつて世界三大劇場の一つであるパリのコメディ・フランセーズでもシェイクスピアは滅多に取り上げられませんでした。
シェイクスピアではありませんが、オペラ・コミック座で初演された、
あのビゼー飛っきりの名作「カルメン」も当初はこの流血シーンがある為に受け入れられませんでした。

さて、この夜の演出はMartin Kušejと云うやはり演劇畑の人で、覚悟はしていたのですが
案の定、音楽よりも劇の内容の方を掘り下げた過激な表現が間々登場致します。
人間のドロドロとした嫌らしい気持ちの部分に焦点があてられていて、露に表出して行きますが、そこまでやらなくても~と思ってしまいます。
確かに戯曲としての掘り下げを徹底的に追求するのも大事な部分だと思いますが、
これはオペラですのでもう少し音楽の様式に則した、観ていて居心地の良い部分にも配慮してもらいたいものです。

舞台装置はステージ上にこれでもかと思われるほど無数の頭蓋骨が敷き詰められていて、これは終始敷かれたままで情景が変わって行きます。
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戦闘に破れたシーンなどは大勢の負傷者たちが疲れ果ててうつろな状態ですが、
何人かは素っ裸で足をロープで縛られて釣り下げられています。
まぁ衝撃的な効果はありますが、そこまでやる必要があったのでしょうか。
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途中マクベスが不安になって再び魔女を訪ねていくシーンも十数名の魔女があまり意味もなくトップレスの状態です。

唯、この辺の厳しい役柄は歌手ではなく役者ないしはダンサーに委ねられその周辺に歌手達が配置された配慮は劇を良く心得ているなと思わせました。
それに鳥が撃たれて落ちてくるシーンでは実際の犬が登場し、この鳥を銜えて退場して行きました。
まぁ賢い犬で、オッーと観客に驚きを与えていました。

歌手陣は概ね健闘していましたが、中でもマクベス夫人を演じたNadja Michaelは
彼女自身の性格がキツイ感じの歌手で声量も充分で研ぎ澄まされたような歌い口はこの厳しい役柄にピッタリでした。
来シーズンはこの役でネトレプコが出演するそうすが、彼女もこの役柄にピッタリかな~
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それにしても週の頭にこんな厳しいオペラを観るのは体に良くありません。

今週末からちょっとデュッセルドルフで4・5日ノンビリと過ごして来ます。



by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2013-08-02 00:28 | ミュンヘン | Trackback | Comments(0)
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