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ナショナル・ギャラリーでの再会

先々週はロンドンへ行っていましたので、時間を見つけ再びトラファルガー広場にあるナショナル・ギャラリーを訪れました。
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それはちょっと前のブログでも書いたホッベマの「並木道」と再会するのがメインの目的でした。
ギャラリーの一番奥まで一直線に進み最初にこの絵と一年ぶりに再会しました。

女性との再会では年月が経っていると、それなりに変化もされているのですが、
絵の場合その美しさは何年後でも殆ど変りませんし、修復されていた場合などはより美しくなっている事すらあります。
(こんな事を書いたら女性たちからのヒンシュクをかいそうですが、イヤイヤ余り変らない方々もおられますよ。)

この日も「並木道」は相変わらず一番奥で輝を放っていました。
良く描きこまれた落ち着きのある絵で気持ちがホッとします。
フムフム、なるほどと訳の分からぬ独り言を云いながら暫く眺めていました。
2つほど先の違う部屋にもホッベマの他の作品が師匠格のロイスダールたちと共に展示されているのですが、
この「並木道」が群を抜いて素晴らしい作品だと再認識しました。

何時もですとこの広大なギャラリーを隈なく観るのは難しいので、早めに印象派辺りへ足を運ぶのですが、
この日は気分がルネッサンス方面に向かわせました。

そこにも名画の数々が所狭しと展示されているのですが、一枚の絵が浮き上がるようにして目を釘付けにしました。
それはダ・ヴィンチの描いた「岩窟の聖母」でした。
この部屋にはボッティチェリやリッピなども展示されていて、それらも素晴らしい名画なのですが、
やはりダ・ヴィンチのこの作品が群を抜いて際立っています。
大きさも2mほどの高さがあってダ・ヴィンチの絵の中では大きな一枚です。
ナショナル・ギャラリーでの再会_a0280569_1281538.png

この作品は実は二枚描いているそうで、最初に描いた方はルーブルに展示されていて、こちらは後から描いた方だそうです。

まぁ構図と云い描写と云い完璧で私の拙い文章ではその賛辞を表現しきれません。
特に驚いたのは中央やや右の位置に差し出されたマリアの左手が宙に浮いて見えることです。
まるで3Dの立体映像を見ているようで、今から500年以上も前なのに今日的な感覚を持っていたとは驚きでしかありません。
その手は実際よりも大きく描かれ、指先から付け根にかけてもちゃんとパースペクティヴをかけて表現しています。
そのデフォルメ具合も自然で品を保つギリギリ位に保たれていますし、更に指先にはササッと早いタッチで輪郭の外に何本かの線が
微かに加えられていて動きすら感じるほどです。
ホトホト感心をしながらズッ~と観ていました。

幾つかの部屋を歩いて51番の部屋まで遡ってきました。
ここは1250年から1350年のイタリア絵画ですのでダ・ヴィンチよりも200年ほど前の作家でジョットーなども展示されています。

ここで気を付けなければならないのが全く見つけ辛い洞窟のような暗い小部屋が隠されている事です。
それはBonaventuraと云う作家の「Crucifix」という十字架型のベースに描かれた十字架上のキリスト像が展示されている
壁面の両サイドに小さな入り口があります。
ナショナル・ギャラリーでの再会_a0280569_1285858.jpg

そこを潜るとなんと又ダ・ヴィンチが一枚だけ展示されています。

それは先程の「岩窟の聖母」の下絵かイメージを描きとったデッサンで、光に当てると退化するためこのような暗い部屋に閉じ込められています。
その墨やチョークで描かれたデッサンはもう下地なんて代物ではなく、それは素晴らしく描かれていて崇高な雰囲気を醸しだしています。
ナショナル・ギャラリーでの再会_a0280569_1293233.jpg

その深みや闊達さデッサンとは云え色合いの凄さに、もうも完全に打ちひしがれ唯々、無言でウーンと唸りながら見とれているだけです。

この部屋は本当に目立たず見落としがちなので、写真があればと思うのですが、このギャラリーは堅く撮影が禁止されています。
美術館によってはフラッシュさえ炊かなければ撮影が自由という大らかな所もありますが、その辺は保存法など其々の美術館によって違うのでしょうね。

以前ルーブルで「モナリザ」の前に大勢の人が集っていて、凄い勢いでフラッシュを炊いていました。
余りに酷い状態なので「こんなにフラッシュを炊いて絵が痛まないの?」と係員に言ったのですが
「ここは特殊なガラスに入ってフラッシュの光は通さないので大丈夫ですよ。
・・・でも忠告ありがとう。」と言っていました。

それにしてもダ・ヴィンチさんは凄い。・・・
改めて彼の偉大さに感心させられました。


by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2013-10-29 01:30 | イギリス | Trackback | Comments(0)
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