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「サイモン・ラトルとウィーン・フィル定期演奏会」から

先週に引き続き週末だけウィーンへドンボ帰りです。

それはウィーン・フィルの定期演奏会のチケットが取れたとの連絡を受けたので急遽行ってきました。
この演奏会は今シーズンの目玉の一つと思われたのですが、如何せん定期演奏会、・・・ 
それも日曜日の公演は殆どの席が先祖代々受け継がれた会員の人たちによって埋まってしまい、一般には中々チケットが出回りません。

そこでウィーン・フィルの公演に強いチケット・ビューローに頼んでおいたのですが、やっと入手ができた訳です。
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珍しくポカポカ陽気のなかイソイソと会場へ向かいました。
案の定この日はお年寄りの姿を多く見かけます。
入手した席はパルテレ・ロジェと云う平土間の両サイドにある一段高い所でした。
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ムジーク・フェラインは何処に座っても素晴らしい音響なのですが、特にこのロジェはオーケストラから臨場感溢れる音がダイレクトに伝わって来るし、
時折、跳ね返って来た音とが混ざり合ってふわっと音に包まれたような感触に浸ることができます。

演目は前半がヤナーチェクの「利口な女狐の物語」からの組曲と、後半がマーラーの「大地の歌」でした。
ソリストはメゾ・ソプラノがラトル夫人のマッダレーナ・コジェナ、テナーがミヒェエル・シャーデとバリトンにサイモン・キエンリーサイドでした。

「利口な女狐」は動物達が一杯登場するしオペラを観た方が楽しめるのでしょうが、
場面を想像しながら聴く事になります。
幻想的な音響に自然描写も綺麗だし、オーケストレーションも手が混んでいて盛り上がりも充分な音楽で楽しめました。
唯、歌詞は何語?モラビア語?か分からず聴き取ることができなかったので残念でした。
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いよいよ後半はメインの「大地の歌」です。
この曲は当然ながら、マーラーが音楽監督だったウィーン・フィルとは深い縁があります。
マーラーの弟子だったワルターが戦後初めてウィーンに復帰した公演でこの曲を取り上げましたし、
バーンスタインがウィーンに初登場した時もこの曲で、時代の節目に取り上げられて来ました。
尤も私にとっても初めて聴いたマーラーは山口君家で聴かせてもらったバーンスタインのこの演奏でした。

ラトルのマーラーは6月に2番を聴いたのですが、それは曲と演奏の余りにも素晴らしさに、
暫くの期間立ち直れないほど打ちのめされましたので、
この日も最初の音がどう出てくるのかワクワクしながら待っていました。

ポポーンポン・ポポポ、ポーンと力強くも味わい深くホルンが響きだしました。
この一撃でもうこの先が「こりゃ良いぞッ!」と期待できる出だしです。
生き生きとしたオーケストラをバックにテノールのシャーデもリリックながら張りのある声で力強く歌い出しました。
ラトルはもう少し室内楽的に鳴らすのかなぁと思っていましたが、ウィーン・フィルを相手にオーケストラを充分に鳴らしシンフォニックな表現です。
そりゃこんな音で鳴らされたら大きな音を出したくなるでしょうね。
これは指揮者が一番気持ちよく聴いているかも知れません。

それにしてもこのオーケストラはやっぱり別格、・・・ 
フォルテでもウルサイなんて感じとは無縁で気持ち良く身を委ねられるし、あくまでも柔らかく響きます。
逆に静かな所でも痩せることなく充分豊かに響いているエネルギーが伝わってきます。
それにバイオリンにしろ木管にしろソロで出てくるとウットリと聴き入ってしまいます。

一楽章はあっという間に過ぎて行き、ヴァンと言う金管と低音弦のピッチカートで渋く締めくくられました。

二楽章はメゾ・ソプラノのコジェナが移ろうオーケストラの響きに乗って静かに歌い出します。
これは本来アルトが歌うのですが彼女は多分声域が広いのでしょうね。
彼女の歌唱を聴くのは2番に引き続き二度目でしたが、最初の一声からリリックで清涼な声に感心です。・・・ 
伸びやかな声で通りの良さも充分、歌い方も丁寧で、「コジェナやるなぁ!」
とすっかり虜にされてしまいました。

五楽章の「春に酔えるもの」でもシャーデは熱唱を繰り広げ、見事に歌いきりました。
これにはラトルも大満足をしたのか、まるでオーケストラに残響のビブラートを指示しているかの様に、
これ以降出番のないシャーデに向かい空で熱い握手をしていました。

寂しくも夢見心地の部分や躍動する所など、多彩な表現でグングン進んで来た曲も、惜しまれつつとうとう最終楽章の「告別」を迎えてしまいました。

グァ~ンと寂を効かせた不気味な響きで、この厭世的な曲のメイン・テーマでもある長い楽章の始まりです。
「夕日は西の彼方に沈み・・・」と静かに慈しむように歌われ、中間部ではオーケストラのみで長いフレーズを面々と語られていきます。

フム? ・・・前方中程の平土間席辺りで何か不審なザワめきが、・・・
どうやら一人のお爺さんに異変が起こったようです。
お爺さんの元へ集まる人々、係員に知らせに走る婦人・・・
ソリストやオーケストラの数人は気づいていますが、後ろ向きのラトルは見えないし、
この果てしなく深刻な音楽は面々と綴られています。

数人がお爺さんを抱えて退出して行きました。

その間、再びソリストが歌いだすと、とうとうクライマックスを迎え最後は「永遠に、・・・永遠に・・・」と静かに静かに惜しむように曲が閉じられました。

まぁ内容も「告別」なのでお爺さんにとっては、ある意味良かったのかも知れませんが、
介抱されていた方々はもう席に戻ってくる事はなく本当にお気の毒でした。
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by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2013-12-18 05:07 | ウィーン | Trackback | Comments(0)
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