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「トゥチングのブラームス」

先月ブロムシュテットとBRの演奏会に行った折にプログラムを貰いました。
BRの演奏会はありがたい事にプログラムを無償で配っているのですが、
これが良く出来たプログラムで何時もしっかりとした解説が載っていて感心をしています。

先日はオール・ブラームスのプログラムでパラパラ見ていたら、Comptonと云う画家のとても素敵な風景画が載っていました。
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それは「ハイドンの主題による変奏曲」の解説ページに載っていたのですが、詳しく読んでみると彼がこの曲を作曲した地の風景で、
何とミュンヘンから南へちょっと行った所にあるTutzing(トゥッツィング)と云うシュタルンベルガー湖畔の町でした。

「エェこんなに近い所へ来ていたのだ!」と初めて知りました。

ここへはS-バーンと云う普通電車に乗って行ける所で
「こりゃ暖かくなったら行かなきゃ~!」と思っていました。
しかも高校生の頃から親しんできた大好きな曲ですから尚更です。

先週はデュッセルドルフで神経を使う仕事をしたのでとても疲れていたのですが、
明けて日曜日はポカポカ陽気、近所の染井吉野も満開で見ごろでした。
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よし思い立ったら百年目、陽気に誘われて行くことにしました。

電車は湖方面に向かうので遠足気分の乗客で一杯です。
まぁ殆どの人達が行楽気分なので皆の顔はほころんでいます。

途中、森を抜けるともう直ぐにシュタルンベルク湖の駅に到着です。
ここからは湖沿いに高台を走るのでとても心地よい風景が続きます。

長閑なTutzingの駅からはダラダラと湖の方へと下って行きました。
ここは落ち着きのある町で途中流れていた小川も自然のままで水も鱒が泳いでいるほど澄んでいます。
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家々も大きなヴィラが点在していて豊かさを感じさせます。
それに山荘風のヴィラはその殆どが木造の四階建てと背が高く、それぞれの階には大きなテラスが付いていて、
この町独特の建築文化なのかも知れませんね。
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大通りに出るとレトロ感溢れるカフェもあって誘われます。
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ブラームスが滞在したペンションはこのHauptstrasse(大通り)に面しているのですが先ずは湖まで下ってみました。

湖畔にでると「ブラームス・プロムナード」と書かれた小さなプレートも掛かっています。
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ボート小屋が立ち並ぶ素敵な小道を抜けるとパッーと景色が広がり湖畔越しにお城が建っている対岸や遠くアルプスの山々が見渡せます。
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グリーン・ベルトになっている湖畔には大勢の人達がノンビリと散策をしています。
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中央付近にある大きな柳の下には、直ぐそれがブラームスの碑であることが遠くからでも予測が付きました。
これは彼の生誕100周年を記念して建てられたそうですが、
碑に書かれている内容は「ヨハネス・ブラームス、作曲家、Tutzing、三作品」とサッパリしたものです。
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調べた処によると、その三作品とは弦楽四重奏op.51番の1と2、それに同じく弦楽四重奏の67番、
そしてあの「ハイドンの主題による変奏曲」、しかもピアノ連弾バージョンと管弦楽バージョンです。
(大局で云うと三作ですが、五作と云っても構わないかも知れませんね。)

何の目的でミュンヘンに来ていたかは分かりませんが、偶々Heyseさんと云う人がここへ連れて来たそうで、
すっかり気に入った彼は再びここを訪れ、5月から8月まで何と4ヶ月もの間滞在しています。

さていよいよ彼が滞在した家を探すべく大通りへとダラダラ坂を上って行きました。
Huputstrasse 74番地は通りから少し奥まった所に建っていました。
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どうも数年前に建て替えられたそうで、新しい建物ですが山荘風の立派なヴィラです。
暫く眺めた後、再び湖側の裏側へと回りました。
そこは先程通ったボート小屋が立ち並ぶ小道でした。
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ちょうど裏門の辺りには桟橋に出られる入り口があって、しっかりとした柵で仕切られているのですが、
門をソーと押すと何と無施錠ではありませんか。・・・
小さな広っぱに出るとそこから林のように茂った萱の間から三本の桟橋が伸びています。
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その中央桟橋の先端には何だかベンチのような物が見えています。
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迷わず行ってみると、まぁ「どうぞ、お座り下さい。」とばかりの佇まいで,座り心地の良さそうな籐のベンチが置かれていました。
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そこからは古風な塔が建っている岬の向こうに、ツーク・シュピッツを初めとする雪を湛えたアルプスの連山が堂々と横たわっている姿が見渡せます。
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ベンチにドッカと腰をおろし、おもむろにi-phoneを取り出しました。
そうですこの時のための「ハイドン・バリエーション」です。

処で、この原曲はハイドンではなかったとの説もありますが、私にはどうでも良いことで、このブラームスの曲が好きです。

低弦のピッチカートに乗ってオーボエが穏やかな主題を奏でだしました。
そりゃこんな風景に囲まれていたら、穏やかな気分で作曲が進められるでしょうね。

あの手この手とまるでパッチワークのように複雑で変化に富んだ変奏は、短いながらもどの変奏も聴き応えがあり飽きる事がありません。

7番目では私の好きなホルンが軽快な旋律を高らかに鳴らします。
これは堂々と連なるアルプスの連山を想起させてくれます。

そしてシミジミと始まった終曲は段々と盛り上がりをみせ、再び堂々とした主題を奏で、
それに乗った木管群はキラキラと彩を与え曲はクライマックスへと導かれていきます。
曲はグット音量とテンポを落としたかと思うと一気に加速し、まるで名残を惜しむような長い和音で閉じました。

いや~この心地よさは、まるでパラダイスに居るような気分になりました。

ブラームスさん素晴らしい曲を書いてくれてありがとう。・・・




by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2014-04-01 00:24 | ミュンヘン | Trackback | Comments(0)
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