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マーラー「アッター湖の作曲小屋」

「もう眺めなくても良いよ、それらは全て曲にしてしまったから。」と
マーラーの招きで初めてこのアッター湖畔を訪れ、険しい山々に感嘆しているワルターに語りかけられました。
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それは交響曲3番の一楽章を指しているそうですが、
この曲を初め凄い気合を入れて作曲された2番と共にこのアッター湖畔のシュタインバッハで作曲されています。

それにしても当時33歳だった彼はハンブルクの音楽監督だったので、
よくもまぁこんな辺鄙な所まで遥々やって来たものだと感心してしまいます。

それはマーラーの三つある作曲小屋の最初にあたり、きっと誰かの紹介があってこそ来れたのではないでしょうか。・・・

「一度は訪れてみたいなぁ~。」と長年思っていましたが、ちょっと行き辛い所だったので行きそびれていましたが、
何とかミュンヘンにいる内にと意を決して出かけました。

先ずはザルツブルクを目指しますが、この南バイエルンやオーストリア方面へは最近”Meridian”
と云う第三セクターが運営する様になり、列車は新しく綺麗になったし、何と云ってもスピード・アップされて快適です。
今までは2時間半の所要時間が30分も短縮され、「これは楽になったなぁ~」と実感できます。
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ザルツブルクでウィーン行きに乗り換えVöcklabruck(フェックラブルック)からバスに乗り継ぐのですが、
ウィーン行きと聞けば何だかこのまま乗り過ごしてウィーンまで行きたくなります。

バスは小さな村々や田園風景を抜け30分ほどでアッター湖畔を走りだします。
湖の南方に位置するシュタインバッハのSeefeld地区に入ると目的地はもう直ぐです。
Gasthaus Föttinger (ガストハウス フェッティンガー)とホテルの名前が付いた停留所で降りれば目の前にそのホテルが建っています。
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マーラーが来た当時からは名前が変更されましたが、正にこのホテルに滞在しています。

ホテルのレセプション脇のショーケースにはマーラーに関する資料などが展示されていて
「おお、これだこれだ!」と改めてその実感を感じ取っていました。

正面の壁にも肖像写真が掛けられていて、益々雰囲気を盛り上げています。

横にある小さなバーの入り口には、あのフリードリッヒ・グルダのポートレート写真も飾られていて、
「おお、彼も来たのだ!・・・」と暫く眺めていました。

階段室の一角にはピアノを中心に彼が滞在した当時の調度品が展示されていて、往時をしのぶ雰囲気を醸しだしています。
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暫く休息をして、いよいよ湖畔に建っている作曲小屋へと向かうことにしました。

ホテルの裏庭へ回るとそこはキャンピング場になっていて、キャンピングカーがずらりと並んでいます。
中にはここに住んでいるのかと思われるような人たちもいて、小さな家を増設したり、ちゃんと庭を造って花々を植えているところもあります。

昔見たことがあるマーラーが来たころの写真では周りに何もない光景でした。

まぁある程度は覚悟はしていましたが、「やはりここもか・・・」とちょっと寂しくなりました。
それでも小屋を見つけた時はそんな周りの事など忘れてしまい、グワッ~と気持ちが高ぶりました。
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それは小さいながらも、そこで作曲された曲の偉大さ故にその存在感を堂々と放っていました。
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入り口の鍵を開け、慎重に中へと歩を進めました。
突然、弦のトレモロと共にザバザバザンとお腹に響くようなコントラバスが刻みだしました。
センサーが反応して2番の冒頭が鳴り始めたのでした。

真ん中には古いピアノがドンと陣取り譜面台には2番の表紙がコピーながら置かれ、ここで生まれた事を暗示しています。
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壁と云う壁にはここに纏わるマーラーの年譜や作曲された曲に関する資料、
手紙のコピーやワルターがここに送った電報などが展示されていて感慨深く眺めていました。

窓からの景色も素敵なので湖畔からもこの小屋を眺めていました。
水はエメラルド・グリーンでとても澄んでいます。
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隣がダイビング・クラブになっていますが、この水を見るとそれも頷けます。

小屋の前にあるベンチに座り、湖面やあのワルターが見たと云われる険しい山とはどれのことだろうかと周りの山々を眺めていました。
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せっかくなので持参してきたi-phoneを取り出し、2番の最終楽章を聴きだしました。

ソプラノとアルトの二重唱で
「おお、あらゆるものにしみ渡る苦痛よ、わたしはお前から身を離した。」
「おお、あらゆるものを征服する死よ、いまやお前は征服された。」
と歌いだされ、それに合唱が加わり曲はドンドンと高揚していきます。

オルガンに鐘も加わりだすクライマックスは圧巻で、その壮大さ崇高さに唯々打ちのめされてしまいます。
その凄さに圧倒されしばし別世界に行ってしまった状態に陥っていました。

ふと我に帰ると興奮と感動のあまりに不審な東洋人を一人で演じていたことにハタと気が付きました。

あ~あ、またやってしまった。・・・


by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2014-05-06 21:10 | ザルツブルク | Trackback | Comments(0)
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