ブラームスとシュトラウスは・・・

「変えれぬものは、変えられぬ 唯忘れる事のみ幸せかな!」と云ったのは
あの優美なワルツや楽しく軽妙なポルカを作曲したヨハン・シュトラウス二世でした。
彼は作曲された曲想とは裏腹に、とても考え込み思い悩む性格でした。

一方で楽想にそのままの性格が現れているブラームスは渋くて奥深い人でした。

この全く違った趣の音楽を作曲した二人は時を同じくしてウィーンで活躍をしていましたが、その似かよった性格ゆえ、
自然と交流が始まり意外と仲が良かったようです。
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事実ブラームスは8歳年上のシュトラウスに対し、(どう見てもブラームスの方が年上に見えるのですが・・・)
その卓越した管弦楽法には大変敬意を払っていたようです。

ある時シュトラウス夫人が扇子を差し出し、ブラームスにサインを求めた処、五線を引いた上に「美しく青きドナウ」の冒頭を書き、
「残念ながらブラームスの作にあらず。」と書き記したそうです。

そんな二人もシーズン中は演奏家としても忙しく、作曲は主に夏休みの休暇中に集中して作曲されたようです。
彼らもマーラーと同じく「夏休み作曲家」とも言えるでしょうか。・・・

そんな中、彼らはザルツカンマーグートの“バート・イシュル”へ良く出かけたようです。
ここは文字通りBad(温泉)が出るので古くから保養地として栄え皇帝フランツ・ヨーゼフも毎年夏に訪れています。

今から120年ほど前のある年、バード・イシュルで作曲されていたブラームスのピアノ三重奏の二番が、
ここよりもっと山奥に入ったAltaussee(アルタウス湖)湖畔に建つワグナーさんと云う人の館で試演される運びになったそうです。

この湖は山奥だけにまだ訪れる人も少なく、ちょっとした秘境だそうです。
この館も今はホテルになっているとの事で、ちょっと寄り道することにしました。

アッター湖のシュタインバッハからバスでWeissenbach(バイセンバッハ)で乗り換え先ずはバート・イシュルを目指すのですが、
時刻表を見るとこのバイセンバッハからのバスには”Rufbus”と書いてあって乗りたいバスの
一時間前に電話を掛けて確認をしなければなりません。

恐らく普段から乗客が少ないのでこんなシステムになっているのでしょう。

誰もいない停留所でちょっぴり不安になりながら待っていると、暫くして来ました来ました・・・
まるでタクシーのようなミニバンがやって来ました。

ミニバンはドンドン山道に入って行き延々と景勝路線を走ります。
結局はバート・イシュルに到着するのに40分もの道のりでした。
たった一人の乗客のためにわざわざやって来てこんなにも長い距離を走ってくれ、
とても申し訳ない気持ちになり何度もお礼の言葉を掛けることになりました。
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バート・イシュルで少し時間があったので町をブラブラしてみました。

さすが保養地だけあって小さいながらも活気があり建物も様式が整っていて趣きがあります。
歩行者天国の一角にファサードがピンク色の”Zauner"という可愛いカフェが、・・・
看板には双頭の鷲のマークと共に“Hofzuckerbäcker”と書かれていて、ここが皇室ご用達である事を示しています。
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ここで軽く昼食を取ることにしました。
内装も伝統的なウィーン風ですが、何処となく地方色も漂わせています。
ここに限らずザルツブルクやインスブルックにあるウィーン風のカフェでも同じような事を感じるのですが、
やはり何処かにローカル独特の雰囲気が加味されているようです。
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さて、一息入れたので、ここから列車に乗って更に南東へ、途中ハルシュタットを湖越しに見ながらBad Ausseeを目指します。
ここからはバスで30分ほど乗れば終点がAltausseeです。

このBad Ausseeも鄙びていますが、温泉が出る関係上ここも保養地だったそうで、あのクララ・シューマンも滞在しています。
「ひょっとしてそんな事もあったのでブラームスはここまでやって来たのかなぁ~」と勝手な想像をしていました。

Altausseeはこれだけ奥に入っているので流石に鄙びた村です。
水も綺麗で何でもここの水は飲めるほどの純度だそうです。
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それとこの湖はヒットラーの財宝が何処かに埋蔵されているとの噂もあります。
何でも塩鉱の奥深くには美術品の数々が、そして湖の奥底には金塊がとの事です。
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ここを訪れた音楽家はブラームスのみならず、マーラーもこの近くで「少年の不思議な角笛」や交響曲の4番の一楽章を作曲していますし、
リヒャルト・シュトラウスもホーフマンスタールと訪れていたようです。
もっともマーラーは何度もバート・イシュル滞在中のブラームスを訪ねていますし、
この辺は辺鄙な所にも関わらず一時ちょっと大作曲家達で賑わっていたのですね。
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さて、ブラームスが滞在した館には、ピアノ三重奏が試演された部屋が「ブラームス・サロン」として残っています。
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湖が見渡せる落ち着いたサロンでブラームスの肖像写真を始め、関係者など当時の写真が飾られています。
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その隣の部屋からテラスに出られるのですが、そこはガラス張りの明るく心地よいウィンター・ガーデン風になっています。
しかもここが喫煙サロンになっていて、殆ど利用する人もなく当然ながら我が隋一の「お気に入り部屋」となりました。
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I-phoneを取り出し当時を偲びながら聴くピアノ・トリオは至福の一時をもたらしてくれました。

そうそう、この二人はウィーンの中央墓地に行ってまでも仲良く隣り合わせに眠っています。
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一方はドナウの乙女たちに囲まれ、片や今なお悩み続けるように・・・

by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2014-05-12 00:50 | ザルツブルク | Trackback | Comments(0)
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