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「トレド」にて

マドリッドでもとても乾燥しているのですが、
今日は更にカラッカラッのラマンチャ地方、ドン・キホーテの世界へ向け出発しました。

途中バスからの光景は既に麦が刈り取られ黄金色に輝く畑に赤茶色の土が所々むき出しになっていて見ているだけで喉が渇いて来そうです。
それでも時折アマポールの赤い花が群生して和ませてくれます。

この赤茶色の土はダリの絵の中でも同じような色で再現されていて、真っ黒な影にダラット解けてしまいそうな時計など、
強烈な太陽光とこの灼熱の光景を「良く表現しているなぁ~」と改めて感心していました。

そうこうしている内に意外と早くトレドへ到着、45分程乗っただけでした。

バスターミナルは町外れにあってここから丘を目指さなければなりません。

タイミングが悪いことに街へ向かうバスが出た所だったので、覚悟をして歩いて行くことにしました。
見上げただけでも相当きつそうな距離です。
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城壁に囲まれた町へはピサグラ門を潜るとようやく旧市街地へと入ります。
更に坂道を上り、太陽門を抜け迷路のような小道を登っていくとやっと活気のある通りへでました。
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家々の窓からは無数の古風な旗が飾られていて、フト「ロメオとジュリエット」の舞台を思い起こさせました。
もっともこれはヴェローナでの話しですが。・・・
それでも中世の雰囲気をプンプン漂わせています。
どうも昨日までお祭りがあったようで、このような装飾がされていたようです。
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それに通りの中央には布の天井が長く張りめぐらされていて、出来るだけ日陰を作ろうとしています。
天井からは所々古風なランタンが吊り下げられこれが又雰囲気を醸しだしています。
このランタンの形や模様からはイスラムの影響を受け継いでいるのが伺われます。
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通りを抜けると活気あるソコドベールと云う広場に出ました。
広場を抜け、先ずはエル・グレコの特別展が開催されているサンタ・クルズ美術館を目指しました。
坂道をダラダラ下ると直ぐに見つかりましたが、既に多くの人々が並んでいます。
その割にチケット売り場は閑散としていて直ぐに行けたのですが、何と窓口には“SOLD-OUT”と書かれています。
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尋ねてみると混雑を避けるため、予約制になっているようです。
しかも入場時間まで指定されているようで、これでは一介の旅行者にはチャンスがありません。
名残惜しく眺めていると、中庭への入り口へはフリーで出入りしている人もいて覗いてみると小さいながらも素敵なパティオです。
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聞くところによると普段の常設展は無料で開放しているようで、まぁそれだけでも見ることにしました。
入り口は二階のようですが、ここへ上がる階段は凄く立派な彫刻が施されていて、そのスタイルは天使のモチーフが施されているにも関わらず、
イスラム文化の雰囲気がプンプン漂っています。
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この常設の展示品も石器時代からはじまり絵画も中々充実した内容ですが、特別展の方に人々が流れているので閑散としています。
十字型をした建物の中央は吹き抜けになっていて、そこから階下で開催されている様子が伺えます。

中央の四面に大型スクリーンでイメージ映像が流されています。
残念ながらここから絵を見ることが出来なくなっていますが、入場者はそれほど多くなく皆さんゆったりと鑑賞をしています。
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「な~んだ、これ位だったら入れてくれても良いのに・・・」と思いつつ奥の方の壁面を見ると何と3枚もグレコの絵が展示されていました。
その前では絵にはまったく関心のない子供たちがベンチに座り込んでトランプに興じていました。
まぁのんびりしたもので、ちょっと微笑ましく感じました。
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さて、この街には、もう二箇所グレコの絵を見られる所があるので、それらを目指しました。
まずはここから更に奥に建つカテドラルです。

又迷路のような小道を登ったり下ったり、途中は雰囲気のある繁華街など抜けてたどり着きました。
巨大なカテドラルには大勢の人々が押し寄せていて、チケットを買うにも一苦労をしました。
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内部も立派そのもので、かつてはこのトレドが首都としていかに繁栄したかが伺えます。
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中央にはドーンと一対のパイプオルガンが向かい合ってそびえ立っています。
昔、スカルラッティの曲で「二台のパイプオルガンの為のコラール」か何かをCDで聴いたことがあったのですが、
こんな曲はラテン系の大聖堂でしか演奏が出来ないなぁと思い出していました。

さてグレコが展示されている礼拝堂へと入っていきました。
まず、その天井画に圧倒されながらも正面を奥を見るとドーンと遠くからでもはっきりとグレコと分かる大きな絵が目に入ってきました。
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それは赤い服をまとったキリストがこれから十字架につけられるシーンを描いています。
これって先程サンタ・クルツにあった絵と同じではないですか。・・・
どのような関係なのかよく分からないまま壁面上部を見ると掛けられている絵の殆どがグレコで相当のコレクションです。

先ほどの正面にあるグレコの右側にも同じシーンを描いた別の画家による絵があり、これも相当のものです。
近づいて作者を見ると何とこれはゴヤではありませんか。・・・
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他にもカラバッジョなども展示されていて、やはりこのカテドラルの凄かった地位を察することができました。

名画に堪能しながらもこの聖堂の余りにも豪華絢爛さに、いささか重圧を覚えてきました。
重い足取りでカテドラルを後にしました。

さぁもうひと頑張り、更に歩いて今度はサント・トメ教会へ向かいました。
ここにもグレコが初めてその名声を高めた絵が一点展示されているそうです。

更に迷路の小道を下って行くと程なくすぐに見つかりました。

ここはちょっと小さな教会でチケット売り場から入ると直ぐにその絵があっけなく掛けられていました。

それはオルガス伯爵のお墓の前にある壁面で絵のタイトルも「オルガス伯爵の埋葬」と云って、
実はその伯爵が亡くなってから200年ほど後に依頼されて描いたそうです。
構図は十字架から降ろされるキリストそっくりな構成になっています。
その周辺に描かれている人物たちはこの絵を描いた当時のトレドにおける著名人たちだったそうです。
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グレコの絵では時々登場する自画像も後列左から6番目あたりに描かれていて、目が鑑賞者を直視するかのように描かれています。

最前列の左側にはちゃっかりと一人息子も描かれていて、ここからはよく見えませんでしたが
ポケットから覗いている白いハンカチ部分にグレコのサインが入っているそうです。

さて、ここを出て更に迷路になっているユダヤ人地区を、グレコ美術館に向かって下って行きました。

この迷路はセヴィリアのユダヤ人地区でもそうなのですが、けっして怪しいものではなく、
複雑な形をとることで多くの影を作ることができ、この灼熱を回避するための彼らの知恵だったそうです。

トレドでも一時ユダヤ人は追放されたそうですが、その後自発的に昔住んでいた地区に戻ってきたそうです。
当時としては読み書きが出来た彼らは珍重され、キリスト教に改宗をしたユダヤ人たちは政府の重要な地位に付いていたそうです。

所々レンガ作りの壁や床の隅っこには、象徴的なヘブライ文字がはめ込まれていて意味深げな雰囲気を醸しだしています。
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やっと広場に出てグレコ美術館に着きましたが、午後3時に閉館とありました。
まぁここにはグレコの絵はないそうなのであきらめて、この街を半分ほど取り囲んでいるタホ川の対岸へ向かいました。

この街の丘全体が城壁で囲まれた都市で、川向こうからの眺めは見ようによっては、まるで空中に浮かぶ島かと想像が膨らみます。
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この対岸にはポウサーダと云う国民休暇村みたいな立派な宿泊施設もあって、ここからの夜景はさぞかし綺麗だろうなと想像していました。
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一泊してもよかったのですが、この夜はオペラへ行くつもりをしていたので、後ろ髪を引かれつつもトレドを後にしました。



by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2014-06-15 21:52 | スペイン | Trackback | Comments(0)
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