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「ルートヴィッヒ二世」の命日

先日ある調べ物をしていたら、6月13日の金曜日がちょうどルートヴィッヒ二世の命日だと分かりました。

せっかく近くに住んでいるので彼が入水自殺をしたシュタルンベルガー湖へ夕刻出かけました。
家から直線距離では近いのですが、電車だと遠回りをしなくてはならず、結局は1時間以上かかってしまいました。

シュタルンベルク北駅からバスに乗り継ぎベルクまで行けばあとは歩いて20分ほどの所です。
バスを降りてダラダラと坂道を下り、湖に沿って歩き出しました。
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私の前を近くの家から出てきたご家族が歩いておられますが、其々が手に小さな花を携えています。
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十字架が建っている湖畔にはパラパラと訪れている人たちがいて、皆さん神妙に佇んでいて彼の根強い人気を伺い知ることができました。
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歴史上は狂気の沙汰で自殺を図ったことになっていますが、バイエルンで彼の事を悪く云うのを聞いたことがありませんし、
むしろ未だに愛されている王様のようでです。

純粋で妄想家でもあった彼はワグナーに心酔し、自らを理想の騎士像ローエングリンとすり替え、
ディズニーランドのような発想でノイシュバンシュタイン城やリンダーホーフ城を建て一人で閉じこもりがちでした。

これらの巨額に上る建築費やワグナーへ巨大な援助、折りしも敗戦による巨額な賠償金の支払いなどが重なり、
浪費家のレッテルを貼られた彼はとうとう「気が可笑しくなった!」との宣告を受けて退位させられてしまいます。

この事件の真相は未だに明確ではなく、主治医を伴った入水自殺も謎に包まれたままです。

浪費をして建てたと云われるキーム・ゼーの宮殿を含む三つのお城は、
今ではすっかり大事な観光資源として地元に充分な還元をしています。

劇場史に関心のあった人達にとっては、リンダーホーフ城の洞窟は興味深いものです。
これはルートヴィッヒがワグナーの「タンホイザー」一幕目での“ヴィーナスの洞窟“に似せて作らせ、
自らはローエングリン気分で金の船を浮かべて妄想をしていたと云われていますが、
何と世界で初めて電気照明を取り付けたのでした。

それは蓄電池から供給される最も古い方式ですが、演出照明として初めて応用されました。
時を同じくして建設されたバイロイト祝祭劇場も同じ方式で、それは未だ光力に乏しい暗い照明でした。

戦後、暫くの閉鎖のあと1950年代に入って再開されますが、この暗い照明を逆手に取ったヴィーラント・ワグナーの演出は
その象徴的な装置や動きと共にワグナーの世界にピッタリで一大センセーショナルを引きおこしました。
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このヴィーラントが演出をしていた60年代半ばまでの時期は指揮者も大物がずらりと出演していましたし、
歌手もワグナー歌いと云われる伝説の大歌手たちが出演して、恐らくバイロイト上演史上の全盛期だったのでしょうね。

さて、丘の上に建つチャペレからシミジミと十字架を眺めてここを後にし、
少し下った所にある、お城ビア・ガーデンを目指しました。
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ここの事はこの対岸に住んでいるドイツ人スタッフから「ここのビア・ガーデンは特に夕方の眺めが良いぞぉ~」と聞いていました。
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湖畔に面した大きなビア・ガーデンで、折りしも披露宴をしているので大勢の人たちで賑わっています。
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奥のちょっと静かなテーブルに陣取り、取り合えずはビールです。
程よく冷えたビールはサラッと飲み干し、今日の気分は白ワインです。
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夕日を眺めながら静かにゆっくりと時間が過ぎていきました。


by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2014-06-18 23:02 | ミュンヘン | Trackback | Comments(0)
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