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「ツィマーマンとヤンソンス、バイエルン放送交響楽団の演奏会」から

ミュンヘンの今音楽シーズン一番の楽しみにしていた演奏会だったので、小雨の中イソイソと出かけました。

演目最初のブラームスのピアノ協奏曲「1番」は、とても好きな曲というよりも特に思い入れが強い曲です。

それは我が人生で初めてウィーンの楽友協会で聴いた曲だったからです。
しかもピアニストはこの日と同じツィマーマンで彼とこの曲に関しては私は特別な感情を抱いています。
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もう30年前の演奏会でしたが、指揮はバーンスタインで、あの冒頭ティンパニーの連打に乗ってオーケストラが目一杯の演奏をする所 ・・・

普段でも分厚くて奥行きのある音を醸し出すウィーン・フィルを相手に元気なバーンスタインがエネルギッシュに振るものですから、
コントラバスがガリガリ弾く所などまるでホール全体がグラグラ振れているような錯覚に陥るほどで、
腰が抜けそうになり 「目からウロコ」がバラバラと大量に落ちて行くのを感じていました。・・・

その豊かな響きと云い、円やかでトロケそうな音の洪水に包まれた身には全てが初めての体験で、
大きな感動と共に「俺は今まで何を聴いていたのだろう!」とショックすら感じました。

この日はツィマーマンの演奏を聴くのも初めてだったのですが、これ以上ないほど雄弁に鳴っているオーケストラの前で、
ひ弱そうな青年がピアノの前に座っていました。
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これを相手に「大丈夫かなぁ~」と正直心配をしていました。

オーケストラが長い長い主題を演奏し終え、段々と静かに落ち着きを保った辺りからピアノ・ソロが淡々と弾き始められました。

しかしなんの気負もないばかりか、静かな中にも芯の強いキラキラした響きで進められていきます。
これだけオーケストラに鳴らされたら「こりゃ気合充分で入ってくるだろうな!」と思っていましたが、
落ち着き払った堂々とした演奏で渡り合っていました。

この時ライヴ録音されたレコードやCDはその後ずっと愛聴していました。
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唯、後に分かったことですが、この日は運送会社の手違いで彼のピアノが届かなかったそうです。
渋々会場備えつきのピアノを使用したそうですが、彼はピアノの音に対して不満を持っていたそうです。
(まぁ我々聴衆にはそこまで分からない凄い演奏でしたが・・・)

この時から10年ほど経った頃、ケルンでバンベルク交響楽団とこの曲を共演する機会があったのでイソイソと出かけました。
あれから10年、彼の演奏スタイルはどう変化したのでしょうか。・・・

この日は指揮者がメッツマッハーで未だ若くて駆け出しの頃、そのせいもあってか、ピアニストがグイグイ引っ張っていくような印象を受けました。
相変わらずピアノの響きはキラキラと輝き芯のしっかりとした演奏でした。

そして、更に10年後位にベルリンでラトルと共演すると云うので、これは行かねばと楽しみにして出かけました。

もうこの頃はツィマーマンも押しも押されぬ巨匠の域に達していましたし、ラトルとベルリン・フィルもいよいよ絶頂期に入ろうとしていた頃でした。

彼らの演奏はとにかく、音に濁りがなく清涼、技術的にはそりゃ完璧で「ウ~ン、上手い!」とため息をもらしてしまう程です。

もうこれはツィマーマンにとっても一つの到達した領域にまで達した演奏だったのではないでしょうか。・・・

それ以来、同時期に録音されたCDも、この曲の愛聴盤として長らく聴いています。
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いやぁ~本題に入る前に長々と前置きを書いてしまいました。
まぁこの曲も前置きが長いので許してもらえるかしら?・・・

さてこの夜はツィマーマンが最近病気だったというので心配をしていたのですが、まぁ元気そうに登場してくれました。

ヤンソンスの指揮はガリガリ鳴らすのではなく、ちゃんとアクセントを付けながらも細部まで行き届いた丁寧な表現です。

オーケストラが一頻り主題を演奏し終え、いよいよピアノのソロが浮かび上がって来ますが、入りが実に自然でなんの気負いも感じさせませんでした。

曲は変化に富んだ楽想をドンドン進んで行きますが、オーケストラもピアノも集中力を持って実に内容の濃い表現です。
途中、ホルンのソロが出てくるところなど、もうウットリとして聴いていました。

「未だ終って欲しくないなぁ~」と惜しみながらも、この長い楽章が瞬く間にフィナーレを迎えてしまいました。

二楽章も綿々と丁寧に歌われ、途中不安定な音型でピアノがキラキラと連続音を弾くところでは、
月の明かりが湖にキラメク姿が映しだされているような情景を連想させました。

休みなく始まる三楽章へもスムースに移行し、流動的でリズミカルなメロディが変化に富んで次から次へと現れ、グイグイと盛り上がって行きます。
ここでも外面的な演奏ではなく、如何にも内容を重視した丁寧な表現です。

複雑なリズムがオーケストラとピアノとの間を行き来し、盛り上がったところでクライマックスは一気に閉じてしまいました。

もうツィマーマンにしろヤンソンスにしろ堂々とした巨匠の演奏スタイルでしたが、音楽は生き生きしていて新鮮な味わいも充分満喫することができました。

それにしてもブラームス自らピアノを弾いた、この曲の初演時で25歳と云う若さですから、いかに恐ろしき天才であったかが改めて思い知らされました。
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休憩後はショスタコーヴィチの交響曲「5番」でした。

ヤンソンスはこの曲を初演しショスタコーヴィチとも親交のあったムラヴィンスキーから招かれたアシスタント時代に彼から多くを学んだそうです。
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あの厳しい社会情勢のソ連時代に作曲されたこの曲には色んな思いや思想が秘められているそうで、
ショスタコーヴィチ自身が多くを語らなかったこともあり、色んな解釈がされているようです。

今健在の指揮者の中でもこの曲のことを一番知っていると思われるヤンソンスですが、
彼の解釈はそんな裏側の内容を穿り返す様な趣向ではなく、シンフォニーとして洗練された表現を目指しているようです。

中身の濃い演奏ですが曲折した感じなど一切受けず、輝きの中にもよく引き締まった聴き応え充分の演奏でした。

今夜の演奏会は中身が濃すぎるし、集中して聴いたせいかズッシリと疲れました。
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グッタリとして熟睡した朝は今シーズン初の雪景色でした。
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by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2014-11-07 23:50 | ミュンヘン | Trackback | Comments(0)
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