「ヘンゼルとグレーテル」バイエルン国立歌劇場の公演から

前回のブログでも書いたように、これは元旦に観に行こうと思っていたのですが、
「マグロ」の解凍に屈した形で結局は行けませんでした。

唯、昨シーズンにプレミエとしてモダンなスタイルで新演出されたこの演目は、一度観ておきたかったですし、
昨日が今シーズンの最終公演だったので14時からのマチネーを観に出かけました。

昼間ということもあってか、大勢の子供たちが来ています。
観客の殆どは家族連れで、和気藹々の雰囲気です。
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ロビーでは走り回る子供たちや、さっきまで元気に走り回っていた女の子が迷子になって突然泣き出し、
クローク係りの女性に抱っこされて一緒に母親を探しまわっている光景など微笑ましく眺めていました。

客席に付いても、子供たちは興奮ぎみで一番前の手摺に身を乗り出すように見ていたり、
立ったり座ったりとワクワクする気持ちが伝わってきます。
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熱い雰囲気のなかホルンの和音によって静かに序曲が始められました。

ステージ全面に大きな空の皿、粗末なナイフ、フォークが描かれたカーテンが現れ、
既に食べ物がない事を暗示しているようです。

序曲は神への感謝のテーマがロマンティックに奏でられ、その綺麗さにイカン、・・・
既にウルッと来てしまっています。

カーテンが上がり現れた小さな室内には古い冷蔵庫も置かれていて、
室内装飾からも時代はおよそ50年ほど前、比較的現代に近い時に設定されているようです。

ヘンゼルとグレーテルの衣裳や踊るシーンでの動きも現代風です。
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手伝いもせず遊んでばかりしていた子供たちを、帰宅した母親が森へとイチゴ積みに追いやってしまいます。

そこへホウキを売りに出かけていた父親が、「お祭りがあったので売り切れた!」と上機嫌で歌いながら帰って来ますが、
その歌詞の一節に“Hunger ist der beste Koch !”「空腹は最高の調理人だ!」と歌われます。

確かに的を得たセリフなのですが、この飽食時代に生きているものにとってはちょっと気の毒で切ない気分になってしまいます。

処でこの一家はホウキの製造、販売で生計をたてているのですが、
後に出てくる魔女はこのホウキに乗って空を飛び回ることと、因果関係を暗示しているのでしょうか?
もうこの辺は原作者にしか分からない所でしょうか。


さて、2幕目は森のシーンですが、ここでは室内・・・

それでも壁には木の葉が描かれた壁紙が貼られ、
壁際に立っているスーツ姿の6人は木の根っこの被り物姿で、充分森のシーンであることを暗示しています。

日が暮れだし道に迷ったことに気付いた不安一杯の二人の前には、安心して眠れるようにと、“砂の精“が現れますが、
ここでは黒子の歌手と動きを一体化した宇宙人のような裸でガリガリのお爺さんが出現します。

ちょっとグロテスクさのギリギリですが、その動きの扱いなど文楽のようだし、
シーンとしても綺麗な表現で感心すらしました。
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砂を振りかけるシーンでも、手からちゃんとキラキラと輝く砂を撒いていて、
子供たちも食い入るように見ていました。

普通は眠った後には天使たちが現れ、二人を守るシーンが展開するのですが、
ここでは大きな頭の被り物をつけたコックさんたちがユックリと現れ、
同時にステージ床からは魚の頭を被った給仕も登場します。

そしてヘンゼルとグレーテルは夢の中で、綺麗な衣裳に着替え、大きなテーブルはクロスが掛けられ食器や蜀台のセッティングを終えます。
再びコックさんたちは厳かに銀のお盆を手に登場し、もったいぶりながら一斉に蓋が開けられた中には、
美味しそうなありとあらゆる、本物のお菓子が乗っていました。
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一夜が明け、“朝露の精“に起こされますが、朝露は昨夜夢の中の食器類を流しでかいがいしく洗い、
その石鹸水を露がわりに撒いて起こす仕草はちょっと可愛くて笑えました。

いよいよ魔女が登場ですが、この辺からグロテスクさは増して行きます。

大きな口を開いて牙が出ているスクリーンが現れたシーンでは前に座っていた
6・7歳の男の子が怖がって小さな悲鳴と共に両手で目を被っていました。
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この辺は「未々ドイツの子は素朴だなぁ~」と安心します。

男声歌手が演じる太めの魔女は、老婆の設定でシワだらけ、これもグロテスクな表現です。

大きな冷蔵庫が開いた時などは、中に人の手や足が転がっていて、
“オット、こんなの子供見せて良いの??”と思ったのですが、
当の子供たちは食い入るように見ています。
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普通長いオペラなどの公演では、この辺で子供たちは退屈し落ちつかないことが多いのですが、
今日の子たちは益々食い入っていくようです。

まぁ最近はこれ位刺激があった方が興味が湧くのでしょうか。・・・

それでも限界は超えずに留まっている辺りはサスガです。
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最後はお菓子にされていた大勢の子供たちも息を吹き返し、
カマドの爆発と共に魔女のパンが出来上がります。
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皆は危機の極限から助かり、このオペラの大きなテーマの一つ“神に感謝”を捧げて幕となるのですが、
その直後に出演者全員がナイフとフォークを頭の上でカチャカチャと叩き、これから魔女のパンを一気に食べる暗示をして終ります。

途中のヘンゼルとグレーテルのお菓子を食べるシーンにしても、その食べっぷりは貪欲ですし、
我々農耕民族で貯蔵する文化圏の人種には理解しがたい感覚かもしれませんが、
狩猟民族のDNAの一旦を見たような気がしました。
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それでも全体的には見応え充分で、ジーンと来るシーンも度々あって、
地元でこれだけ質の高いオペラが観られるなんてつくづくありがたいなぁと思いました。

それにしてもこのオペラは物語りも良く出来ているし、何といっても音楽が聴き易い上に綺麗・・・タップリと楽しめた一日でした。


by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2015-01-06 00:29 | ミュンヘン | Trackback | Comments(0)
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