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「ダニエル・ハーディングとBRの演奏会から」

当日は夕方から小雨交じりの雪が降って、如何しようかなと思いながらも頑張って会場のヘラクレス・ザールを目指しました。
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演目はモーツァルトの交響曲39番から41番まで、いわゆる後期三大交響曲と云われる3曲でした。

彼の最後の交響曲で、なんと6週間で3曲を書き上げたと言われていますが三大と言われるだけの名曲です。

謎も多く、どうしてこのような曲を誰からの依頼もなく、そしてモーツァルトの交響曲が
ウィーンでは演奏されなくなってきたこの時期に書いたのだろうか、とか云々。

事実40番以外は彼自身がその演奏を聴く機会すらなかったのではと言われています。

この3曲だけで構成された演奏会もそれほど機会がないのですが、
アーノンクールはこれは一つの大きな構想を元に3曲が構成されているので、3曲を同時に演奏するべきだと言っています。

今回も改めて聴いてみるとなるほど39番の1楽章はまるでオペラの序曲を聴くようで、
これから展開していくワクワクとした期待感を漂わせています。

中間に置かれた40番はティンパニーもトランペットも外され、
派手さも力強さも抑えられた悲劇的でシミジミとした内容です。

最後堂々とした内容の41番の最終楽章は大フィナーレとなり、この曲のフィナーレという位置づけよりも彼の交響曲、
否彼の人生のフィナーレを表出していると言ったら大袈裟でしょうか?

さて、当日のオーケストラ配置を見ると、ヴァイオリンは左右に別れコントラバスは左隅に4台、
ティンパニーも小ぶりの古典的なタイプ、トランペットもオリジナル楽器に近い形です。
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ティンパニーを伴った39番の冒頭は堂々とした響きで、グイグイ進んでいく勢いは新鮮さを感じさせます。

時折、木管のハーモニーに金管のシワガレタような響きが乗っかってきて、面白い音声効果を与えていました。

早いパーセージでのリズムの刻み方も独特で、伝統的なはっきりとした刻ませ方ではなく、後ろの方はちょっと引きずるようにレガートさせています。
と言って完全なピリオド奏法ではないようです。

一転して2楽章のゆったりとした部分では丁寧にテンポを落とし、ふくよかで柔らかい表現です。

終楽章も溌剌としたリズムの中フィナーレを迎えクライマックスの直前でガクッとテンポを落してリタルダントしましたが、
ここではちょっとオーケストラもタイミングが合わずギクシャクしていました。

40番はシミジミとしながらも、テンポやアタックにも独特のアクセントを加えたりと変化に富んだ表現でした。

最後の41番は、終始堂々とした表現でこの日一番の出来だったと思います。

このBRのオーケストラは戦後に創設され歴史も浅いし、
放送オーケストラという性質上どんな表現やスタイルにも柔軟に対応する能力を発揮する優れたオーケストラですので、
今回ハーディングの意欲的で斬新なアイデアにも真摯な対応が出来ていたと思われます。

普通ドイツの伝統的なオーケストラには“Omas Nähkasten”「お婆ちゃんの裁縫箱」と言う表現があるそうで、
それは“あるべき物があるべき所にある”と言う意味から、何か斬新な演奏方法を強いられた場合に、
「俺達はズ~ト、お婆ちゃんの時代からこの方法でやって来たのだ!」と言う場合に用いられるそうです。

このBRを持ってしても時折ギコチナクなっていた場面も否めませんでしたが、
ハーディングにはちゃんとした才能もコンセプトあるし、ドイツ正統派の音楽に対して真面目に取り組んでいる人ですから
これから段々と自分のものになって行くと大指揮者になる期待感を抱かせる一日でした。
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by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2015-03-01 21:40 | ミュンヘン | Trackback | Comments(0)
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