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「ブラームスの家」 バーデン・バーデンにて

先日バーゼルからの帰途、途中通過するバーデン・バーデンにも寄ってみることにしました。
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ここはドイツ随一の温泉保養地として知られていますが、私の興味はブラームスの家を訪れることでした。
(まぁ日本の温泉だったら良いのですが。・・・)

このころ彼は既にウィーンに住んでいたのですが、
クララ・シューマンが滞在していた10年間に渡り毎年5月から10月ころまで彼女に会うためにやって来たようです。
(本当に好きだったのですね。・・・)

シューマン没後、5人の子供を抱えていたクララは生計を立てるためにピアニストとして活躍をしていました。
彼女の腕前は有名でシューマンと結婚をする前からヨーロッパ中で知られていました。

このバーデン・バーデンではシューマン音楽祭も催されていた関係でこの地を選んだのでしょうか。

駅からバスに揺られること15分ほどで街中へ入って来ました。

駅も途中の町並みも殺風景で、これが保養地として有名なバーデン・バーデン?と
ガッカリしていたのですがさすが街に入って来ると瀟洒な家並みが現れ始めました。

街の中心らしき停留所で途中下車、お昼を取ることにしました。

目抜き通りにはお洒落なブランド店が連なっていますし、レストランも軒を連ねています。
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さあ一息入れたので、更にバスを乗り継いで郊外にある”リヒテンタール”(光の谷)と云う地区を目指しました。

バス停は”ブラームス・プラッツ”と明確です。

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暫く歩くと”ブラームス通り”の看板が直ぐに目に付きました。
ふと右側の広場(駐車場)にはクララ・シューマン広場と書かれています。
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更に歩を進め大通りにでると”Brahmshaus”と書かれた家の絵が付いた看板が立っています。
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ここはちょっと小高い所に家が建っていて、階段を登っていくことになりますが、
途中から何時か写真で見たことがある白い家が表れた時にはちょっとした興奮を覚えました。
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かの高名なドイツのピアニスト、ヴィルヘルム・ケンプさんがここを訪れた際には
「ここでひざまずいてから、上にあがるべきだろう!!」
と仰ったそうでパンフレットの巻頭語として載っていました。

ブラームスに敬意を表した、正に彼の温厚で謙虚な性格が現れた言葉だと思います。

折れ曲がった階段を登り裏側に回りこんだ所に入り口がありました。
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ベルを押すと、すぐさま賑やかに管理人の女性が現れました。

まぁ人懐っこく良く喋る人で「日本人?・ここへも良く来るよ・・・」、
「ドイツ語分かるの?・・・そりゃ良かった。」と細い階段を登りながら立て続けに質問されました。

上階の彼が借りていた部屋へ着いても説明は止まりません。

通された部屋は天井も低く、ちょっと暗い感じで昔の家ですから致し方ないのでしょうが、
むしろブラームスの性格には合っていたのかも知れません。
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彼はこの居間と奥の寝室の二部屋を借りていたそうで、天井、床、壁は
当事からのオリジナルで家具は同時代の物を入れているそうです。
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それにしても居間に貼ってあるブルーの壁紙が一際不釣合いで、これがオリジナルかと疑ってしまうほど派手に目だっていました。
(これが150年も前の意匠とは思えないほどモダンです。)
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寝室の窓からは高台と云うこともあって町並みや小高い山々を見渡すことができます。
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「フ~ム・・・この景色を見ながら構想を練っていたのか。・・・」と想像を膨らませていました。

ここでは彼の重要な作品の数々が生み出されています。

主な作品では「ドイチェス・レクイエム」、それに20年以上も悩みに悩みながら作曲をし続けた大作「交響曲1番」の仕上げ、
そしてペルチャッハで作曲をしていた「交響曲2番」の仕上げもここだそうです。
(いやぁ~感慨深いものが込み上げてきます。)

それに「ブラームスの子守唄」として有名な曲「Lullaby」もクララの誕生日に演奏をしたそうです。
(作曲家はこんな技が使えて羨ましい・・・)

さて、キッチンがあった部屋には古い写真や楽譜などが展示されています。

ショーケースには小物と共にブラームスのデスマスクとクララの石膏手形が展示されていました。

デスマスクは写真で見るよりも痩せた感じで、恐らく死後ちょっと収縮した状態で石膏取りをしたのでしょうか、
あまりブラームスらしくありませんでした。
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クララの手形は大きくて逞しく、さすがピアニストだけあって堂々とした立派な手でした。
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上に飾られている指輪はメンデルスゾーンがクララに贈ったそうですが、
表面がガラスで出来た指輪の中にはメンデルスゾーンの髪の毛が入っているそうです。
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これなど我々日本人には理解しがたい感覚ですが、良くカトリック教会などに展示されている
聖人の体の一部とかに通じる感覚がバック・グランドにあるのでしょうか。・・・

帰り際、小さな受付の後ろをふとみるとピエール・ブーレーズの写真が飾られていました。
下には日付が書かれていて 2008年9月にここを訪ねて来られたようです。
(因みにブーレーズと云う表現は日本での慣例に従いましたが、ブゥレーと云わないと通じません。)
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管理人さんによると途中あった修道院の先にはクララが住んでいた家もあるそうで、
手書きの余り上手ではない地図を見ながら説明してくれました。

折角なのでここも訪れるべくダラダラと道を下って行きました。

途中の修道院も立派なので少しだけ覗いてから、外に出ると道が川を挟んで分かれていました。

さて、どちらに向かうべきか・・・
地図だと確か大通りに面していたので暫く探しましたが見付からず???

修道院まで引き返して、今度は橋を渡り川に沿って歩き出しました。
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この川沿いには瀟洒な家が立ち並び中々素敵な雰囲気です。
並木道も広々していて、その先は森へと連なっています。
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それにしても、これじゃ全く見当が付きません。

ちょうど前から地元の人らしきオジイサンが歩いてきたので尋ねてみました。
「エ~ッと・・・確か表通りだったような???」と彼もちょっと不確かな感じです。

そこへ彼の知り合いらしきご婦人が歩いて来られました。

「アア~、この人なら知っているよ・・・」・・・「クララの家・・・云々・・・」・・・

「知っている・知っている・・・一緒に付いて来なさい。」と心強い返事・・・

彼女は歩いてきた道を150mほども逆戻りしてくれ、

「ホラ・・・あそこの白い家・・・あれがクララが住んでいた家よ・・・、
唯、彼女が住んで居た頃は一階建てだったの・・・今の大家さんが改築をして三階建てにしたのだけれど、
彼女も音楽好きで、二階部分はホールになっていて時々演奏会をやっているのよっ・・・」とニコヤカに話してくれました。
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ここで突然「コンニチワ・・・アリガトウ」と日本語が彼女の口から発せられました。
「エッ、日本語を喋るのですか?」・・・「一度、日本へ行ったことがあるの・・・」
「では、良い一日を・・・」と挨拶を交わし、彼女は又逆方向へ歩いて行かれました。
(因みにこの家の正面は大通りにも面していました。)
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暫く感慨深く眺めた後、川に沿って歩いてみました。
すぐ左手にはブルー系の花々で爽やかに植え込まれた公園が現れました。

東屋が建っていたので歩を進めると直ぐ前の木陰にブラームスのブロンズ像が立っていました。
向こうの方にはクララらしき像も立っているようです。
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あっちへ行ったり来たりして眺めていましたが、この30mほどの距離をおいて立っている二人の像は、
お互いの微妙な関係を実に上手く表した間隔だなぁと感心をしていました。
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何だか切なくも微笑ましい気持ちになりながらボチボチと帰路に付きました。・・・


by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2015-07-09 06:01 | ドイツ | Trackback | Comments(2)
Commented by marburg_bara_iro at 2015-07-14 22:32
たいへん興味深く、拝見しました。
行きたくてもなかなか行けない場所ですが、わくわくしながら、まるで旅をしてきたような気分に浸っています。
ブラームスのお部屋の壁紙はすてきですね!
ピアノが上手になるかしらとクララの手形の真似をしてみたり…ありがとうございます。
Commented by Atelier-Onuki at 2015-07-15 07:17
コメントありがとうございました。
少しはお楽しみ頂けたようで嬉しい限りです。
ピアノをなさっているのですね。・・・
クララの手は本当に逞しく男である私の手よりずっと大きく立派でした。
でもラローチャさんなど小さな手ながら、とてもしっかりとした良い演奏をされていましたね。・・・
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