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「ダニエル・ハーディングとマーラー・チェンバー・オーケストラ」のマーラー

先日はマーラーの交響曲2番いわゆる「復活」の演奏会があったのでドルトムントの演奏会場へ向かいました。
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この曲はマーラーが6年もの歳月をかけ、もの凄い気合を入れて作曲した交響曲なので、その内容はえらく深くて濃いものです。

オーケストラの編成も巨大で木管など各パート4本、金管に至っては10本ほど、
それに舞台の外には打楽器を含む金管のバンダが待機していますし、
打楽器もティンパニー2対にありとあらゆる打楽器が活躍します。
それに最終楽章ではオルガンも加わります。

さらにソプラノとアルトの独唱と大編成の合唱団が必要です。

まぁそんな訳でこの曲は演奏者にとっては準備が大変ですし、
コストもえらく掛かり主催者側にとっても相当な覚悟が必要なので、それほど頻繁には取り上げられません。

聴く側の私にとっても初めてこの曲をライヴで聴いて初めてその凄さに感銘し、
行けそうな街でこの曲の演奏会を見つけると極力聴きに行くようにしています。

というのも、ありとあらゆる楽器が登場しその複雑な演奏方や時折聴こえる不可解な響きはライヴに接してやっと奏法が確認できるし、
あの溢れるような音量はとても録音では捉え切れないからです。

今回はマーラー・チェンバー・オーケストラと長年ここの音楽監督を担っているダニエル・ハーディングとの演奏会でした。

このオーケストラは20年ほど前にクラウディオ・アバドと結成した若いオーケストラで
団員も比較的若い人が多いのですが、バイタリティに満ちた、やる気満々の演奏を心がけています。

元々は臨時編成的なオーケストラで根無し草のような存在でしたが、
数年まえからノルト・ライン・ウェストファーレン州が援助するようになり、現在はベルリンに居を構えて活動しているようです。

そんな関係からか今回の演奏会もこの州の北にあるドルトムントから、エッセン、そしてケルンの3都市で演奏会がありました。
(何故かデュッセルドルフは避けられています。)

この日のドルトムントにあるコンサート・ホールは商店街の中に埋もれていて、
ちょっと見はショッピング・センターかちょっと大きめの映画館にしか見えません。
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それでもこの10年ほど前に出来たホールはモダンで品の良いデザインです。
商店街というスペースの限られた空間ですが、コンパクトに上手く収められています。
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併設されているレストランは“Stravinski”と名付けられ彼の大きな肖像写真が何枚も壁に装飾として使われお洒落な雰囲気です。
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客席に向かう階段やロビーもコンパクトに設計され、
地上階のロビーに設置された両サイドの階段からスムースに客席へと向かえます。
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所々に設けられた休憩スペースもコンパクトでお洒落です。
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肝心のホール内ですが、これも客席数が1550席とコンパクト、
その分響きが充満しこの州ではエッセンと並んで素晴らしい音響のホールです。

この日などオーケストラと合唱団を会わせると250人ほどの出演者に対し、
ほぼ満席とは云え、この聴衆の数ですから贅沢としか云えません。
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ハーディングはこのオーケストラとは結成以来から客演として招かれ、2003年からは初代音楽監督に任命されています。
彼らの演奏も何度か聴いたことがあるのですが中々キビキビ溌剌とした心地よい印象を持っていました。
それに彼の場合テンポが自然で無理がなく、息づかいが良いと言うか、
アレッっと不可解な溜めなどもなく品が保たれています。
それはやはり習ったのがラトルとアバドですから師匠にも恵まれていたのでしょう。

この日も颯爽とハーディングが登場しました。
緊張感溢れる冒頭もキビキビとした棒捌きで運ばれこの不思議なリズムや雰囲気を醸し出し、
20分位の長い楽章も変化に富んだ表現で一気に進めて行きました。

二楽章は弦によって奏でられる静かで柔らかな表現は心地よい響きです。
チェロによる甘い夢見心地の旋律もふくよかで、身を委ねていました。
後半のピッチカートでのアンサンブルも見事、綺麗なバランスに満ちていました。

ティンパニーに一撃で始まる3楽章はこの不思議な内容をもつテーマを変化に富んだリズムで進められ、
オドロオドロした雰囲気も木管を中心に面白く表現されています。

曲はソプラノが歌いだす「原光」という副題をもつ楽章へと入って行きました。
静かながらも透き通った歌唱で、オーケストラ越しに声が浮き上がってきました。

そしていよいよ壮大な最終楽章へと途切れることなく移行していきます。
ここでは複雑を極めた音楽で途中からはホールの外からトランペットの掛け合いが遠吠えのような効果を表しています。

さらに軍楽隊の行進を連想させる響きも・・・
これはマーラーの少年時代の回想シーンか・・・

そして曲は希望を抱かせるようなホルンの響きに誘導されるように、荘厳な合唱が歌い始めます。

“Auferstehen!”「よみがえるのだ!」に始まる合唱は高まり一気に盛り上がりを見せ、オーケストラも最大の音量にまで達します。

先ほどまで外で吹いていたトランペット奏者たちも加わり金管はフルパワーです。
打楽器も叩きまくり、その上に鐘が効果的に加わり、オルガンも荘厳な響きでホールを揺るがし、
これ以上この音の洪水に耐えられなくなる寸前に最後の一撃でフィナーレとなりました。
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いやぁ又凄い音楽を聴かせてもらいました。

さぁ今度は5月、ウィーンでメータがこの曲を演奏します。
最近ちょっと病気ぎみで心配なのですが、今からワクワクしながら待っています。


by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2016-02-22 23:34 | ドイツ | Trackback | Comments(0)
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