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「コンセルトヘボウとフランツ・ウェルダー・メスト」のはずが・・・

先週末はケルンでアムステルダム・コンセルトヘボウの演奏会があったのでイソイソと出かけました。
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当初はメストが振る予定でしたが病気の為キャンセル、予定されていたソプラノも病気でダブル・キャンセルです。

代役は Lorenzo Viotti と云う若い指揮者でその名前すら聞いたことがありませんでした。
何でも昨年のザルツブルク音楽祭の若い指揮者コンクールでアワードを取ったとか、未だ25・6歳という若い指揮者です。
スイス出身ですがイタリアとフランス人のハーフとかで、ウィーンの音大で打楽器と指揮を勉強したそうです。
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演目も一部変更されシューベルトの3番の交響曲が2番に、
ウェーベルンの歌曲がマーラーの「さすらう若人の歌」に(これはこちらの方が嬉しい)・・・、
後半のJ.シュトラウスのワルツはそのままと云う構成でした。

シューベルトの2番の交響曲は18歳の時に作曲されたもので、確かに楽曲の構成など単純で拙い部分もありますが、
さすが天才メロディ・メーカーだけあって至るところに親しみ易いメロディーに溢れています。
特に2楽章のメロディーなど一度聴いたら忘れられないほどの綺麗な曲です。
一般的にはベートーヴェンのロンドに似ていると言われていますが、私には後に作曲された「ロザムンデ序曲」を連想させられました。

若い Viotti の溌剌とした演奏はこのシューベルト若書きの作品にはピッタリとあっているようです。
キビキビとしたテンポで進められますが、決して荒っぽいところなどなく、むしろ丁寧な表現で感心させられました。
全体的にはサッパリ目の演奏ですが様式感はちゃんと保たれていて好感がもてました。

続くマーラーの「さすらう若人の歌」は大好きな曲ですし、昔良く聴いたレコードがコンセルトヘボウをヘルマン・プライと組んだハイティンク盤で、
この曲をこのオーケストラで聴くのは感慨深いものがあります。
この曲もマーラーが25・6歳くらいの時に作曲しています。

内容的にはシューベルトの「水車小屋の娘」と良く似ているのですが、
若い見習い職人の恋への憧れと失恋を描いた物語で、あの若かった頃が懐かしく思い出せます。
シューベルトの場合は絶望で終ってしまいますが、マーラーでは遠くに菩提樹を見つけ、そこで安らぎを得て終るので救われます。

さて、Viottiの演奏は予想通り溌剌とした初々しいもので、この曲にもピッタリ、・・・
バリトンのMarkus Werbaもやや細いながら通りの良い清涼な声で清々しく表現してくれました。
テンポや節回しなど、もったいぶった所が微塵もなく気持ちよく聴く事ができました。
それにしてもこのオーケストラは上手い。・・・
ヴァイオリンなど絹がすれるような感じでチュルチュル奏でられると、背中にゾクッとするものを感じます。
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休憩後はシュトラウスのワルツ集で、これは当初予定されていたオーストリア出身の
メストだったら意味があったかも知れませんが、あえて予定曲をそのまま取り上げなくても良かったのでないでしょうか。
( 後で知ったのですが、メストの曾祖父はJ.シュトラウスがデヴューした
 ウィーン郊外にあるカフェ・ドンマイヤーの経営者だったそうで、この作曲家とは縁が深かったのですね。)
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尤もこの日の演奏が悪かったと云う事ではありませんが、まぁ普通に良い演奏でした。・・・
唯、ワルツをウィーン・フィル以外の主要なオーケストラが取り上げることは滅多にありませんし、
どの様な演奏になるのか興味深いところもあります。

実は20数年前にコンセルトヘボウとアーノンクールのワルツを聴いた事がありました。
まぁ野外コンサートと云うこともあったのですが、余り面白くなくて休憩後に帰ってしまいました。
ウィーン・フィル以外ではさすがカラヤンがベルリン・フィルを振った演奏が素晴らしく、3枚組みのレコードを良く聴いていました。

さて、ワルツは「うわき心」に始まって「トンボ」や「チャルダッシュ」など、アンコールには「トリッチ・トラッチ・ポルカ」と盛りだくさんです。

最後にシュトラウスと仲が良かったオッフェンバッハの「ホフマン物語」から舟歌を演奏してくれましたが、
大好きな曲ですしロマンティックで丁寧な表現は品格も保たれウットリとして聴いていました。

この夜、一番の出来ではなかったでしょうか。・・・
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又、将来が楽しみな指揮者が一人現れたようです。・・・


by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2016-03-03 01:54 | ドイツ | Trackback | Comments(0)
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