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「ニコラウス・アーノンクールさん逝去によせて」・・・

昨夜、アーノンクールさんが亡くなられたとショッキングなニュースが飛び込んできました。
「ニコラウス・アーノンクールさん逝去によせて」・・・_a0280569_0295422.jpg

ここ10年ほど体調を崩されたり、
昨年12月にはとうとう引退を宣言されたりしたので心配はしていたのですが86歳での逝去でした。

夫人で共同研究者だったアリスさんが、

「彼は家族の環の中で安らかに眠りました。・・・ 
悲しみと感謝の気持ちでいっぱいです。・・・
彼との共同作業は奇跡的な驚きに満ちていました。」
と彼らの公式ウェヴサイトで表明されました。

彼の音楽界に与えた業績は計り知れないものがあり、多大な影響を与えました。

当初はチェリストとしてスタートし、60年ほど前には夫人のアリスさんと協力し、
オリジナル楽器によるオーケストラ「 ウィーン・コンツェルトゥス・ムジーク 」を結成されバロック音楽を中心に活躍されていました。

その後、段々と作曲家の時代順に辿りハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンと進み
近年ではドヴォルザークやなんとバルトークまで手掛けられるようになりました。

かつて19世紀ころから進んだ楽器の改良、そして演奏会場が拡大するにつれ編成も大きくなり、
楽器の配置や演奏方法も大きく豊かな響きを求めて変化して行き、
特に古典時代の作曲家が生きていた時代からは大きな変貌が繰り返されてきました。
(これはこれでより良き音楽を模索するための真摯な試みだったし、
 事実、私はこの19世紀的な演奏が大好きです。)

さて、アーノンクールさんは最初に古典時代の作曲家の原点に迫るべく、オリジナル楽譜の研究はもとより、
手紙なども頼りに作曲家がどのような状況下でどのような気持ちを込めて作曲したのか夫人と共に徹底的に研究されました。
(尤も最終的には作曲家のみぞ知るところでしょうが、その作曲家とて色んな解釈に対して柔軟なのではないでしょうか。 
 要はその音楽が人の心に如何に響いてくるかどうかが重要な事かと思います。・・・)

勿論、彼が発表する前からもこのような研究者がいて、幾多の試演が行われ録音も聴いたことがありました。
唯、これらは「フーン、こんな演奏をしていたのだ!」と参考的に聴いた程度で、
音楽的には面白い域にまでは達していませんでした。

そこへ登場したアーノンクールさんは音楽的にも芸術的にも飛躍的に豊かな音楽を表現し、
発表をする度に世間をアッと驚かせました。

私が最初に彼の演奏を聴いたのは1991年に発売されたベートーヴェンの交響曲全集でした。
今まで聴き親しんだベートーヴェンが遠い昔の演奏のように感じ、これらの作品が昨日作曲されたような新鮮な響きに驚きました。
それはヨーロッパ室内管との演奏でグラーツでの演奏会のライヴ録音でした。
モダン楽器のオーケストラですがピリオド奏法で演奏され、トランペットとティンパニーだけはオリジナル楽器を入れていました。

このベートーヴェン交響曲全集は大きな話題となり、その後、オリジナル演奏、ピリオド奏法が流行るきっかけを作ったのではないでしょうか。
現在も多くの音楽家がピリオド奏法に取り組み、一つの主流的な存在かと思われるほどですが、
やはりアーノンクールさんは別格でほんの一部の演奏家を除いて、違う次元の高い音楽を創造されていました。

(処でこの録音に立ち会った人から聞いたのですが、アーノンクールとテルデックのプロデューサーは長年親しくしていて、
お互い敬意を払っているそうなのですが、二人の会話は丁寧な言葉使いで、「あなた」と言う表現も「Du」ではなく「Sie」で呼び合っていたそうです。
ドイツ語には日本語以外では唯一「あなた」には“敬称”と“親称”があります。
普通これ位親しくなれば「Du」(おまえ)で呼び合うのが一般的ですが、さすが育ちの良さを伺わせたそうです。
彼の長ったらしいフルネーム “Johannes Nicolaus Graf de la Fontaine und d’Harnoncourt-Unverzagt“
から察すると彼の遠い先祖は“de”が付くことからラテンかフランス系の相当位の高い貴族ではないでしょうか。)
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彼の演奏会も足繁く通いましたが、思い出深いものではウィーンで聴いたハイドンの交響曲103番、
いわゆる「太鼓連打」と命名された曲です。
最初に長々とジョークを交えた彼のレクチャーで始まりました。
彼の演奏会では一般的な解釈と違うので、このような説明が時々行われます。

最初にティンパニーがドロドロと連打して始まるのですが、
ここではエッと思うほどティンパニー奏者が自由?に叩きまくりどこまで行くのと思うほどでした。
曲は作曲家の性格を良く捉えたお茶目な遊びの心満載ながら、
様式や品格が充分保たれた上質のハイドンでした。

もう一つ、ケルンでヨーロッパ室内管と聴いたモーツァルトの29番の交響曲でした。
あの2楽章におけるヴァイオリン群の絶妙な弱音効果は、背筋がゾクゾクするほどで、
この世の音とは思えない綺麗な響きでした。

この曲のCDもあり演奏自体は同じように演奏しているのですが、残念ながら相当想像を膨らませないとこの感じが伝わって来ません。
録音にはやはり限界があるようです。

結局は一昨年コンツェルトゥス・ムジークスとで聴いたベートーヴェンの1番と3番のシンフォニーが彼の演奏を聴けた最後でした。
このオリジナル楽器のオーケストラと、また新しい解釈によるベートーヴェン・シリーズが始まったばかりで、CDもやっと1枚リリースされた所でした。

もうアーノンクールのあとには、ここまでの人は現れないと思います。

我々音楽ファンは大きな財産をまた一つ失くしてしまいましたが、
彼の与えてくれた掛け替えのない音楽に感謝しつつ、安らかなご冥福をお祈りいたします。・・・

by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2016-03-08 00:31 | 音楽 | Trackback | Comments(0)
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