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ヴェルディのオペラ「椿姫」のこと (ドイツ・ニュース・ダイジェスト 3月の記事から)

もし私が歌手だったらどんな役になりたいかなぁと、他愛もないことを考える事があります。

私は悪役が好きなので「ドン・ジョヴァンニ」とか「トスカ」でのスカルピア、「ホフマン物語」のミラクル博士なんかもやってみたいなぁなんて思うのですが、
実は・・・「ヴィオレッタ役で出られたら良いだろうな~」なんて、とんでもない事を思うことがあります。

こう書くと「ハハァこいつはアチラ系のやつか・・・」と思われるかも知れませんが、それは断じて違いましてごくごく普通の男子です。

と言うのも昔々、トスカニーニが振った「椿姫」のリハーサル盤を聴いたことがありました。

そこではどうもヴィオレッタ役が休んでいて、代わりにトスカニーニご自身がそのパートを歌っているものでした。
シワガレ声で殆ど鼻歌程度、周りの歌手と合わせているだけなのですが、これが実に味わい深くて、
その内「アレッ・・・ヴィオレッタって男だったけ!」と錯覚をしてしまうほど物凄く上手い歌唱でした。

さて、この「椿姫」と云う和訳ですが中々上手な訳だと思います。
原題は「La Traviata」で“道を踏み外す”とか“悪の道へ導く”とかの意味で不吉なタイトルが付けられています。
日本に紹介された当初は「淪落の恋」なんて古風で味わいのある呼び方をされていた時代もありました。
その内、アレクサンドル・デュマ・フィスが原作小説に付けていたタイトル
「La Dame aux camellias」(椿の花の貴婦人)からヒントを得て今日のタイトルになりました。

この小説を書いたデュマは「三銃士」を書いたお父さんと同姓同名の息子で、実在の人物をモデルにしています。

当時、その美貌と気品の高さで有名な娼婦だったマルグリット・ゴーチェ(オペラでのヴィオレッタ)が亡くなりました。
その所有品を競売するポスターを見かけ興味を抱いたデュマはそこで「マノンレスコー」の本を購入したそうです。

暫く時が経ったころ、ある男が訪ねてきてその本を譲ってほしいと頼みました。
よくよく事情を訊いてみると、彼がその本を贈った張本人アルマン(オペラではアルフレード)で、思い出の品だから是非とも譲り受けたいと懇願しました。

そして、「もう一度彼女に会いたい!」と懇願し、強く引き止めたにも関わらず彼に付き添いお墓を掘り返す所から物語りは始まります。
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このデュマが発表した小説「La Dame aux camellias」(椿の花の貴婦人)は人気がでて数年後には戯曲化され劇場に登ることになります。

これを観たヴェルディは、ちょうどこのアルマン(アルフレード)と同じ様な生活をパリで過ごしていたので、いたく感銘しオペラ化することを決意します。
オペラではヴィオレッタとアルフレードの出会いから彼女が死ぬまでの物語ですが、終幕など私は涙なくして観る事ができません。

それはやっと誤解が解けアルフレードが会いに来るとの手紙を病床のベッドに横たわりながら語るように歌われるシーンですが、
胸元に抱きしめられた手紙はシワクチャで途中からは見ていないのに次々と歌われます。
もう何度読み返したことなのでしょうか・・・いや~そのシーンが思い浮かんで来るだけでジーンとなってきます。
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一度ウィーンで観たときも、私の横に座っていた大男がこのシーンで大きな肩をワナワナ震わせながら目に一杯涙を溜めていました。

二人の仲を裂いたアルフレードの父親ジェルモンは悪く思われがちですが、彼らの関係が故郷プロヴァンスでも噂されたために、
娘の結婚に支障をきたしているこの状況を断ち切るのは、当時の社会常識からすれば、いたし方がない行動だったでしょう。

問題は若いとは言えアルフレートの思慮浅い世間知らずな行いでこんな結末になってしまいました。

パリ郊外での贅沢な暮らしもヴィオレッタが密かに自分の所有品を売って生計を立てていたのも知らず、
ジェルモンに懇願され致し方なく社交界に戻った彼女なのに、
自分を裏切ったと勘違いをして乗り込み、カードで稼いだ札束を“これが返礼“とばかり皆の前で彼女に投げつけ大きな侮辱を与えてしまいます。

長い日々が過ぎやっと誤解が解けたころにはヴィオレッタに死が迫っていました。

それでもアルフレードとやっと再会ができた彼女は、「私は未だ生きたい!」と神に懇願します。

意を決したように自分の肖像画が描かれたロケットをアルフレードに託し、「もし、清らかな女性と出会い結婚をしたら、これを渡して下さい。
天国からあなた方の幸せを祈っている者からと。」 またこのシーンでもグット込み上げてくるものを感じてしまいます。

彼女は思いを伝え終えると、フワッと立ち上がり「不思議だわ~新しい力がわいてくるようだわ~嬉しい!」と
幸せだった日々を思い出しながら床に倒れ息を引き取ってしまいます。まだ23歳という若さで・・・

(彼女のお墓は“Alphonsine Plessis”アルフォンシー・プレシと云う本名が刻まれモンマルトル墓地に眠っています。)
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by Atelier-Onuki | 2016-03-23 01:19 | 音楽 | Trackback | Comments(0)
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