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ネルソンスとボストン交響楽団 「マーラー9番」の演奏会から

今回のウィーンでは偶々マーラーの交響曲を取り上げた公演が続いていて、マーラー週間にするつもりでしたが、
予定の一つだったウェーベルン交響楽団の指揮者が当初予定されていたデュダメルから違う指揮に変更されました。
その代役の人は私的にはあまり好みではないので、この公演は見送りました。

といってこの日のネルソンスにもそれほど興味はないのですが、
ボストン交響楽団は小澤さんとのヨーロッパ最終ツアーの折りに聴いて以来えらい久しぶりだったので行く事にしました。

会場は満席で観客の熱気が感じられるほどです。
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殆どは地元の人たちだと思われますが、ウィーンでアメリカのオーケストラを聴く機会は少ないので大勢集まったのでしょう。
(ウィーンに住んでいると贅沢になり、偶にはウィーン・フィル以外も聴きたいなぁなんてとんでもない欲望に駆られる時があります。 
結局は「やっぱりウィーン・フィルの方が良いなぁ。」なんて勝手な事を云っていますが、彼らもその確認をしに来たのでしょうか?)

さて、今日の座席は2階ロジェのサイド2列目です。
ステージの半分くらいは見えるでしょうか、背伸びをして辛うじて指揮者が見える席です。
1階のロジェもそうですが、このサイド席2・3列目は椅子が置いてあるだけなので、
聴きやすい方向を向けたり、座りやすいポジションに自分で調整致します。

この日も周り近所と申し合わせながら動かしましたが、後ろのオジイサンは何だかゴソゴソとトラぶっているようです。
振り返ってみると3列目のハイ・チェアーをステージ側に向けようとした処、台座から足が抜けてしまい焦っています。
周りは皆立って協力し、何とか向きを変えられました。
「イヤー、ありがとう・・・これで足が延ばせて楽だわ~」と開演前の微笑ましい光景に包まれました。

さて、オーケストラは全員と言って良いほどの人が既にスタンバイをして各々が物凄い勢いで練習を繰り返しています。

このマーラーの9番は演奏がとても難しいらしく、早めから練習に取り組んでいるのでしょうが、その気合は充分伝わってきます。

いよいよ、ネルソンスが登場しました。

朝靄の彼方から聞えてくるようなコントラバスの静かな刻みはハープに導かれ、管が不気味なサビをつけると、
弦によってビャ~ン、ビャ~ンと柔らかく引きずるように最初のテーマが現れます。

マーラーは9番目の交響曲を書くのを異常に恐れていて、
この曲の直前に作曲された交響曲は9番と言うタイトルを避け、「大地の歌」として発表されました。
(ベートーヴェンが9番の交響曲を発表後、間もなくして死んだことから。)

その最後の曲「告別」の終わりはこのメロディでEwig(永遠に)と繰り返し奏でられますが、
この9番では冒頭でその同じメロディ・ラインを引きずって繋がっています。

曲は間もなく盛り上がりを見せ、楽器の饗宴よろしく鳴り響きますが、
これは彼が作曲をしていたドブラッハ周辺の険しい山々を現しているようです。

それにしてもこのオーケストラは上手い。・・・
金管はもとより弦も柔らかく深い味わいもあり、アメリカで最もヨーロッパ的な響きのするオーケストラだと言われるのが肯けます。

1楽章も後半に入りグット音量を落として、
甘いヴァイオリンのソロ部分を過ぎると再び激しくなり一頻り云いたい事を全部ぶつけて落ち着くと、
また不吉で憂鬱な感情に陥ります。
何だかヤケクソぎみの歩みが刻まれると、遠くからのイメージで鐘の音が聞えてきます。

ここではトブラッハの作曲小屋を思い出していました。
この山の中腹にある小屋へは夕刻に訪れていましたが、折りしも麓の村から教会の鐘が聞えてきました。
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暫く「ああ良いな~。」と感傷に浸りながら聞いていたのですが、
ふと気が付くとこれはこの部分で鳴る鐘と同じメロディーでカンコン~、カンコン~と響いています。
音程も全く同じで、きっとマーラーもこれを聞いて取り入れたのではないでしょうか。
(実際にはこの教会の鐘はもう一種類、違う鳴り方があります。)
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曲は名残惜しむように何度も同じ音型を繰り返し、ハープに導きられながら静かで絶妙なピチカートで閉じました。

ファゴットのおどけたような吹き出しで始まる風刺的な趣の2楽章は迫りつつある死に対し
半ば皮肉れた気持ちを表しているようです。

今度はトランペットのおどけたような一吹きではじまる3楽章では更に開き直り、踏ん切りが付いたように思われますが、
曲は直ぐに感傷的になり、過去の追憶が走馬灯のように次から次へと現れては消え、
ヤケクソ気味ながらも悶え苦しんでいる有様が浮かび上がります。

この病弱で気難しい作曲家にとって恋多き妻アルマとの関係もグロピウスを巡って最悪の状態で、
その心の苦しみや葛藤が渦巻いているようです。

そしていよいよ死に向かい合う決意を面々と語られる4楽章へと突入して行きました。

甘いメロディがどこまで続くのかと思われるほど名残惜しみながら(或いは未練がましく)綴られ、最後の一絞りのクライマックスを築き上げます。
グット落された音量は凄い緊張感をもって静かに静かに締めくくられます。

特にこの楽章ではネルソンスもオーケストラも、凄い緊張感をもって引き締まった演奏をしきり、
曲はいよいよ消え入るような音で聞えるか聞えないほどの繰り返しで最後を迎えました。

奏者も聴衆も固唾を呑むような瞬間が訪れました。

その時、遠くギャラリエの方から・・・コンコロ・コンコロ・コッコッ・コン・・・とI-phoneの
軽快なマリンバの響きがこだましました。 (バカヤロ~ !!!)

よりによってこの一番の聴き所で・・・ この長い曲を集中して耐えながらやっと辿りついた至福の瞬間に・・・

誰だか分かりませんが、周りの人たちが真っ赤になって憤慨している様子が浮かびます。

何とか最後の数秒前には消えましたが、人事ながら冷や汗が出ていました。

大昔、ベルティーニの指揮でこの曲の素晴らしい演奏を聴いたときも
この部分で一番前に座っていた人が居眠りでもしていたのでしょうか、
荷物をガシャンと落してしまい、この演奏会を台無しにした事がありました。

まぁそれでも誰も動かない長~い静寂の後、パラパラと始まった拍手は大喝采へと広がっていきました。
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それにしてもこのオーケストラは上手くて味わいも素晴らしく、
こんなオーケストラが地元にあったら良いだろうなぁとボストンの人たちを羨ましく思っていました。

マーラーのゴツイ曲を続けて聴いたので、明日は久しぶりにお墓参りでも行こうかな・・・



by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2016-05-29 23:52 | ウィーン | Trackback | Comments(0)
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