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ベートーヴェンの「フィデリオ」 ウィーン国立歌劇場の公演から

この日の公演は指揮者にペーター・シュナイダー、演出オットー・シェンク、
装置シュナイダー・シームッセンと大御所が揃い、安心して観ていられるものです。
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演出はもう数十年も前からのプロジェクトですし、指揮者のシュナイダーもオペラ・ハウスの叩上げで、
いわゆるカペルマイスターと王道路線です。

彼は昔デュッセルドルフの音楽監督をしていたので、
その頃はワグナーやシュトラウスの作品を何度か聴いた事がました。

それとこの「フィデリオ」はウィーンの歌劇場とは深い縁があって、特に大戦で空襲を受け殆どを失いましたが、
ようやく1955年に再開にこぎつけた最初の公演がカール・ベームの指揮でこの「フィデリオ」でした。
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それは苦難から開放されるという内容にもよりますが、ウィーン初演のこの作品は深い関わりもあり、
なによりもその音楽がもつ力強い推進力が人々に勇気や希望を与えるのしょうね。

ちょうど昨年がこの再演の60周年にあたり、ロビーでは(ゴブランの間)その展覧会が開催されていました。
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それにもう一つ今日の楽しみは「フィデリオ」序曲と
2幕への間奏曲として扱われている「レオノーレ3番」の序曲をこのオーケストラで聴く事です。

特に「レオノーレ3番」の序曲は、大昔からウィーン・フィルの録音で親しみ、その素晴らしい演奏を楽しんでいました。

最初はイッセルシュテットとの録音、その後はバーンスタインとのものでしたが、
いずれもウィーン・フィル独特のスタイルで特にフィナーレで叩かれるティンパニーの音が素晴らしく興奮したものでした。

というのはこのオーケストラのティンパニーは未だに革張りの古いタイプが使われていて、
そのズシンとお腹に響く渋くて味わいのある響きは他では聴けない感動的な音です。

それにここのティンパニー奏者はメチャクチャ上手い(ベルリンと双璧)・・・
たかが太鼓なのにオ~ッと思わずため息をついてしまうほど味わい深く惚れ惚れと聴き入ってしまいます。

それに伝統なのでしょうかこの曲のクライマックスではティンパニーの連打で盛り上がるのですが、
他のオーケストラよりダイナミックに大きな音で叩いていて、聴き終わったあとの達成感や満足度は格別です。

さて、この日の公演は通常のレパートリー公演にも関わらずトップにはキュッヒルさんが入っておられます。
彼が入ると演奏はさらに引き締まるのでこれは期待できます。

それに今日はちょっとサイドの席でオーケストラ・ピットからの直接音がガンガン伝わってくる場所です。

さぁシュナーダーが堂々と登場しました。
挨拶の後、手馴れた感じで序曲は振り下ろされました。

バン ババン・バン ババン・バンバ・バンバンバン・・・
この引き締まった出だしを聴いただけでコリャ良いなぁ~と、今日全般の素晴らしさが予測できそうす。

それほど長い曲ではありませんがフィナーレに向かって弦群がザバザバと揺れ動くあたりは
ゾクゾクするほどで(ここ好きなのです)最後までキリッとした演奏でした。

もう、この序曲を聴いただけでも満足して帰れそうです。

まぁオペラ自体はあの不器用で無骨なベートーヴェン好みの題材で、
芝居っ気にも乏しく面白みには欠けますが、さすが音楽は素晴らしく立派で聴き応えがあります。

この当時はオペラが流行っていて、似合わないにも関わらず彼も書いてみたかったのでしょうね。

さて、オペラの方は一気に飛ばして、いよいよ2幕目を迎えました。

お目当ての「レオノーレ3番」の序曲です。

この序曲は余りにも立派な曲で演奏時間もそこそこ長く、これ一曲で完結しているほどです。

そのせいか、どの箇所で演奏するかを巡って論議もされたようですが、
今はマーラーが決めたこの箇所で演奏されるのが通例になっています。

ベームなどは物語の筋が途切れてしまうとの理由で、一時これを演奏しなかった事もあったようですが、
聴衆としてはやはり是非とも聴きたい一曲です。

シュナーダーの演奏はもう確信に満ちたもので堂々としています。

中盤あのフルートが活躍するところはドキドキしながら迎えました。
それは余りにも難しく、多分ベートーヴェン時代の穴が開いただけのフルートでは吹けなったのではと云われています。

さすがウィーン・フィル(まぁオペラに入っている時は歌劇場管弦楽団ですが)、余裕をもって味わい深く吹き切りました。

いよいよ終盤に掛かり、ヴァイオリンから始まり段々と低弦へと一目散に刻まれて、フィナーレを迎えました。

金管群の堂々とした鳴りっぷり(でも全然煩くない・・・むしら心地良く身を任せ)・・・

そしてティンパニーのスゴイ連打が入り素晴らしいクライマックスを築きました。

いやぁ・・・大満足・・・ 

こんな演奏で聴きたかったのが、今、現実に・・・

当然ながらこの夜一番の喝采が沸き起こりました。

物語は無実の政治犯たちが解放され、声高々に 「Heil sei dem Tag!」(この日に敬礼 ! )と力強く歌います。
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私も心地よく一緒に歌っているような気分になりました。
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それほど長いオペラではありませんが、集中して観たせいか喉はカラカラです。

気分も良く、早く、おビール、おビール・・・
今夜は焼き鳥で一杯いくか !!


by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2016-06-01 00:32 | ウィーン | Trackback | Comments(0)
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