昨夜はケルンのフィルハーモニーでブラームスのピアノ・トリオ全3曲の演奏会がありました。
ヴァイオリンにレオニダス・カヴァコス(ギリシャ)、チェロがゴーティエ・カプソン(フランス)、 ピアノがニコライ・ルガスキー(ロシア)と国際色豊かな組み合わせでした。 ![]() このピアノ・トリオは大好きな曲ですし全3曲纏めての演奏会は余りないし、 偶々持っているCDもカプソンが兄ルノーたちと組んだものだったので聴きに行く事にしました。 それに何と行っても聴きたかったのはブラームス21歳と若いときに作曲した1番のトリオでした。 これは若書きにも関わらず作曲家自身とても気に入っていたようで不備があった部分を 晩年に書き直したほどで、これはブラームス唯一の改訂作品です。 この曲を最初にライブで聴いたのは、十数年ほど前のルツェルン音楽祭でムター、プレヴィン、ハレルのトリオでした。 この頃はムターとプレヴィンが噂をされていた時期で、まぁ仲むつまじくハレルが気の毒なくらいでした。 それでも演奏はことのほか素晴らしく、図らずもジ~ンと込み上げてくるものがありました。 さて、この日は3番のトリオから逆の順で進められていきました。 演奏は気合が入り引き締まった演奏ですがあまり神経質にもならず、自然体の好感が持てるものです。 3番ではノスタルジックな3楽章など心地よく聴き入っていました。 2番でも緊張感のなかにも。その自然な音楽が保たれていました。 ちょっと寂しげで落ち着いた2楽章の旋律が流れている間は、 この曲の試演をしたアルタウス湖畔のヴィラを思い出していました。 ちょっと奥まったところにあるこの湖は水が飲めると云われるほど澄んでいて、 ちょっとした秘境でした。 ![]() ![]() 彼らもこれをメインにと最後の演目にもってきました。 ここでも気合充分ながらゆったりとしたピアノで歌うように弾かれ出し、 同じメロディをチェロが浪々と受け継ぎ、ヴァイオリンが更に加わって行きます。 曲は面々として歌われて行き、其々の楽器が時には和するように、 時には諭するかのように絡み合いながら一つのテーマが構築されて行きました。 チェロの刻みで始まった2楽章はピアノに引き継がれ更にヴァイオリンも同じメロディを刻み複雑に絡み合います。 途中ヴァイオリンで切ないメロディをちらっとだけ弾くと、今度は一転してピアノが伸びやかなメロディで受けます。 すかさずチェロそしてヴァイオリンと受け継がれ甘く切ないメロディを面々と歌い出します。 あぁここ、ここがダメなのです。・・・ ここでは何時も背中にゾクッとするものを禁じえません。・・・ これって何たる切なさ・・・なんたる甘さ・・・ ただ、ここではどうしてもムターたちの演奏を思い出してしまいます。 カヴァコスも立派に弾いていますが、目一杯感が漂っています。 ムターでは一杯意味を込めた目の詰まった音で余裕タップリに甘くも宝石のような響きで輝いていました。 ピアノのルガンスキーも真面目に模範的な演奏をしているのですが、どうも教科書的な範疇に感じてしまいます。 プレヴィンではもう自分勝手にコロコロ遊んでいるようでしたが、自由闊達に本質を捉えていました。 (この人はジャズ・ピアノを弾いていただけに、指が自由闊達に動いて本当に上手かった。) 音楽は木目が詰まっていて余裕綽々ながら完全に我々聴衆を虜にしてしまいました。 あぁ~また、こんな演奏が聴きたいのですが、離婚をしてしまった今はもう諦めるしかありません。 by Atelier Onuki ~ホームページもご覧ください~ 応援クリックありがとうございます! ![]() 人気ブログランキングへ
by Atelier-Onuki
| 2016-06-10 00:49
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