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モレ・シュル・ロワンのシスレー (1) (ドイツ・ニュース・ダイジェスト10月のコラムより)

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私は印象派の絵が大好きなのですが、中でもモネやセザンヌそしてシスレーが特に好きで、
こんな絵が描けたら良いなぁと何時も羨ましく眺めています。

ある時、マチスが「最も印象派らしい画家は誰か?」とピサロに尋ねたところ、
迷うことなく、「それはシスレーだよ!」と答えたそうです。

このパリ生れのイギリス人画家は控えめで物静かな性格だったそうです。

そんな性格が素直に表現された絵は穏やかで見る人に安らぎすら与えてくれます。

彼の絵は殆どが風景画で空やそれを映し出している水面に興味があったようです。

特に空は描くのが好きだったそうで、真っ先に空から描き始めたそうです。

そのためか彼の絵の描く絵には水平線が画面の中央よりも極端に下に構成され、
画面の大きなスペースを空に割り当てている絵が多いようです。

それは一般的な構図法からすればタブーで、
錯覚する癖がある人間の目には落ち着きの無い不安定な感覚を与えてしまいがちです。

それでもシスレーの絵には大きな空を通して、何処までも続いて行きそうな空間の広がりや、
その先にある何かに憧れすら感じ取ることができます。

彼は生涯にわたり一貫してそのスタイルを変えなかった画家でした。

実家は貿易商で豊かな生活を送っていましたが
普仏戦争で父の会社が倒産して以降は援助もなくなり困窮生活へと一転してしまいます。

オボッチャン育ちの大人しい性格だったこともあり売り込みなどには向いてなく、
絵自体もインパクトが弱かったので生涯に渡り売れなかったそうです。

ずっと懇願していたフランス国籍も最後まで得られることがなく、
妻ウジェニーが亡くなった1年後、失意のうちに59歳と云う若さで亡くなってしまいました。 

翌年ようやく「ポール・マルリーの洪水」が高値を付け落札されたそうですが、
もし彼らが生きていたらどれだけ喜んだことでしょうか。

さて、彼がこよなく愛し晩年の10年間を過ごした街
モレ・シュル・ロワンはパリから一時間ほど南に下った所にあります。

バルビゾンからフォンテーヌブローの森の先でロワン川とセーヌが合流する辺りです。

画家としての出発点でもあるバルビゾンは彼にとっては心の故郷だったかもしれません。

ある秋の日、この街へ訪れてみることにしました。 (続く)


by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2016-10-26 23:49 | 絵画 | Trackback | Comments(0)
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