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「ラトルとベルリン・フィル」エッセンの演奏会から

先日の日曜日は我が今シーズン演奏会のハイライトとも云える
ラトルとベルリン・フィルの演奏会がエッセンのフィルハーモニーであったので楽しみにして出掛けました。
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今回はドルトムントとエッセンによる“Ruhrresidens”と題された初めての共同プロジェクトで、
ラトルとベルリン・フィルの演奏会は3種類のプログラムで6公演と、
メンバーによる室内楽のプログラムも数公演あって、いわばベルリン・フィル週間といった様相でした。

私が行った日はその最終日で演目のハイライトはマーラーの6番でした。

この曲は何とこのエッセンでドイツ音楽家協会が主催しマーラー自身による指揮で初演されています。
まぁこの当時は産業革命の最盛期で、鉄鋼で栄えたこの街は初演をするほどの力があったのでしょうね。

ラトルとベルリン・フィルも丁度、マーラー・プロジェクトが6番辺りに差し掛かっていましたが、
この曲を選ぶ辺りはサスガです。

演奏会が始まる前にフィルハーモニーの隣にあるシェラトン・ホテルで娘の彼氏と待ち合わせ、
暫くお茶をしていたのですが、開演の3・40分前辺りから、
このホテルに泊まっている楽団員がパラパラと会場へ向かって行きます。
中庭からは未だ部屋で練習をしているフルートやオーボエの音が聞こえていました。

今日の曲は長いので会場へ向かう前にトイレに行っておきました。

帰って来ると彼氏君が「さっきラ・ラトルさんがここを歩いて・・・」と興奮気味です。
彼にとっては初めて聴くベルリン・フィルだそうで、演奏を聴くまえからテンションは高まっていました。

さて、演目はマーラーに先立ってリゲッティの「Atmospheres」という曲と
ワグナーの「ローエングリン」から前奏曲が組まれていました。

リゲッティの曲はフル編成のオーケストラですが、それほど大きな音を出す曲ではなく、
むしろ重なり合うハーモニーを重視した曲で、現代曲ながら調整された音楽で聴きやすいものです。

まぁ何といってもベルリン・フィルですからここまで綺麗に聴こえたのかも知れません。

曲は静かに終わりましたが、まるで続いている曲のようにローエングリンが始まりました。
恐らく一つの曲のような扱いを意図して演奏したのでしょう。

静かに面々と重なりあいながら奏でられるフレーズは“綺麗”の一言。・・・

ワグナー自身も初めてウィーン・フィルを指揮したときは、途中で指揮することが出来なくなり、
オーケストラに全てを委ね一言“ Schön シェーン!”(綺麗)と呟いたそうです。

曲はいよいよ盛り上がりシンバルが大きく斜め叩く辺りでは“ジーン”と胸を打つものを感じました。

シンバルは曲がグッと落ち着く直前に、もう一度、今度はシャンと聴こえないほど小さく叩きますが、
ここでも味わいがあって、ちゃんとサビを利かせていました。

曲は静かに終わりを告げましたが、
このままズ~と全曲やってくれないかと思うほどで、想像以上の素晴らしさでした。

休憩後はいよいよメイン演目マーラーの6番です。

この曲は作曲家マーラーとしては絶頂期の作品で、ありとあらゆる手法が盛り込まれた完成度の高い曲ですが、
その背景には既に不吉な現実が迫っている作品でもあります。

オーストリア南部のヴェルター湖畔の作曲小屋で作曲されたせいか、
至るところにアルプスを連想させるメロディや、カウベルが時折鳴らされさらにその雰囲気を盛り立てています。
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それに何といっても、興味深いのは最終楽章で叩かれるハンマーでしょうか。・・・

オーケストラだけの曲としては最大編成で、もう一睡の余地も無いほど奏者で埋め尽くされています。
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ザン・ザン・ザン・ザッザ・ザンとチェロとコントラバスによってキリッとした刻みで始められました。
あぁなんと弦の濁りがないクリアな響き・・・軽やかなのにふくよかさや深みを兼ね備えています。
時折アクセントで入る小太鼓なんか硬質な響きで小気味良くなんと格好良いことでしょうか・・・
(さっきシンバルを叩いていた同じオジサン)

もう最初からウットリです。

曲はガラリと雰囲気を変え柔らかくロマンティックな旋律へと移りますが、
ここでもトロケそうな響きで、益々身を委ねて行きます。

この日座っている席は第一ヴァイオリン末席の真上なので響きがそりゃ豊かに伝わって来ます。

特にチェロとコントラバスは正面を向いていますから、こちらにグァングァンと響いてきます。

軽やかで濁りの無い響きの弦群はフォルテッシモになっても心地よく、全くの煩さを感じません。
それでいてふくよかさや深みが伴っていて純粋な響きです。

あぁ同じような音を出しているのですが、この目の詰まった響きの質は数段違うようです。

散りばめられたトランペットやホルンのソロも“上手い”・・・ウットリとしてしまいます。

30分近くと長く万華鏡のような1楽章は怒涛を打つように終ってしまいました。

2楽章にはラトルさんはアダージョをもってきました。
(マーラー自身が入れ替えたこともあり、指揮者の解釈によって2楽章と3楽章を入れ替えられます)

ゆったりと弦によって始められたメロディーは何と甘美なことでしょうか。・・・
もうこの辺でウットリとしているのですが、これに木管が怪しげな旋律で絡んできます。
どこか懐かしい雰囲気が醸され、山岳地方を連想させるような長閑さも感じられます。
途中、コロン、コロンと鳴らされるカウベルもその雰囲気を助長しています。
マーラーってやっぱりアルプス的な作曲家だなぁ・・・
それは森の中の小屋で作曲をしていたからでしょうか。・・・

ティンパニーとコントラバスの刻みで3楽章が始まりました。
この風刺風の楽章も、複雑なアンサンブルを見事にコントロールされ、
煌めくような音楽のディティールが手に取るように伝わってきます。

盛り上がっては盛り下がり、奇妙な旋律が複雑に絡み合い、
その精神分裂的なヨジレタ音楽ですが、綺麗に統制され見事なバランス感覚です。
チューバとトロンボーンで怪しげなサビを入れますが、ここでも品の良さを保っています。

チェレスタやハープを伴った怪しげで萌え出でるような響きではじまる4楽章は、
休みを入れずに続けて始まりました。

この甘美な雰囲気も打楽器群によって打ち消され、益々怪しげな雰囲気を木管や金管が絡み、
半ばヤケクソぎみの感じで打楽器も乗っかって不気味な雰囲気です。

ジワジワと金管群が主旋律らしき旋律を組み立てて行き、段々と盛り上がりをみせるかと思いきや
今度は突風のような木管が邪魔をしたかと思うと、
急に落ち着いた雰囲気になりカウベルなどが加わり牧歌的な穏やかさに・・・

支離滅裂とも云えそうな音楽が勢いを取り戻し、グイグイと進むなか、
とうとう一度目のハンマーが打ち落とされます。

これは何かの運命なのでしょうか、それとも打ち消すための物なのか・・・

色んな説が論されていますがマーラー自身も打つ回数を含め迷っていましたから、
結局はなんとも言えませんが・・・まぁ大きな特注のハンマーでした。

結局、ラトルは2度打つ方の解釈でした。(バーンスタインは3度)

曲は大伽藍のフィナーレに入り、一旦静かに落ち着き終るかに思わせた後、
ジャ~ン・バン・バン・バン!と大きな一撃で閉じました。

いやぁ~それにしても素晴らしかった。
もうこれ以上を求めるのは難しいほどの演奏でした。

ベルリン・フィル恐るべし・・・(ラトルさんベルリンを去らないで・・・)

こんな素晴らしいオーケストラが地元にあったらなぁと叶わぬ事を思っていました。
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それにしてもローエングリンの演奏は飛びっきり素晴らしかった。






by Atelier Onuki
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by Atelier-Onuki | 2017-03-03 02:05 | 音楽 | Trackback | Comments(0)
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