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デュダメルとマーラー室内管弦楽団、ケルンの演奏会から

先週は月曜日から3日連続でケルンの演奏会へ行く予定でしたが、
月曜日のポリーニが延期になってしまい結局はデュダメルだけを2日連続で聴く事になりました。

それにしてもポリーニの健康状態が心配で、
5月に予定されていたブッパータールでの演奏会が6月に延期され、
さらに9月に延期、それも又ケルンも含め延期されました。

公式にはインフルエンザと発表されていますが、
世界中での演奏会をキャンセルしていて、その状態が心配されます。

さて、デュダメルとマーラー室内管弦楽団は2日間に渡っての公演で、
初日はシューベルトの交響曲3番とマーラーの交響曲4番、
2日目がやはりシューベルトの交響曲5番とブラームスの交響曲4番という組み合わせでした。
デュダメルとマーラー室内管弦楽団、ケルンの演奏会から_a0280569_2175362.jpg

シューベルトの交響曲3番は小さな交響曲で、
未だドイツ舞曲を大きく発展させたような未熟なところもありますが、愛らしい素敵な曲です。

それにしても18歳での作曲というは驚くばかり、しかも4楽章辺りの弦の刻み方など
やがて生れる最後の“偉大な交響曲”の楽想を予感させられます。

デュダメルもこんな地味な曲を選ぶあたり、正統派の指揮者として進んでいく覚悟の表れかも知れません。

ダ~ンと控えめに弾かれ、木管に乗ってヴァイオリンが可愛く刻み始めますが、
響きは柔らかく軽妙で、「オオ・・中々やるなぁ」と感心・・・

曲は颯爽と進んで、そこそこ長い1楽章はあっと云う間に終ってしまいました。
2楽章に入り軽妙さは変わらないのですが、ここでの楽想の親しみ易さは、
まるでドイツ舞曲が連続して発展しているようです。
3楽章も颯爽たる演奏で歯切れ良く進んで行きます。
4楽章でも勢い良く進みますがあくまでも丁寧さは失われていません。
ここでの弦の連続した刻み方など、前に書きましたが、
もうすでに最後の交響曲へ発展していくかの予感が満載です。

続くマーラーの交響曲4番もシャンシャンシャンシャンと鈴の音を伴って軽妙に始められました。
この曲は巨大な編成が多いマーラーの中では小さな編成で可愛く、かつ奇妙なところも満載の曲です。
まぁ「子供の不思議な角笛」から派生した曲で、文学的にもちょっと奇妙な内容を持っています。

それでも風光明媚な秘境アルタウス湖で楽想が練られたせいか、
随所にハッとするような綺麗な箇所も現れ天国的な響きに浸ることができます。

4楽章の歌詞の内容からか「大いなる歓びへの賛歌」なんて副題が誰かによって付けられています。

デュダメルの演奏はここでも軽妙かつ柔らかい表現で進められていきます。
テンポも心地よいし、ちょっとしたリタルダントなどテンポを動かすシーンでも自然体で嫌味がありません。
オーケストラもさすがにマーラーと冠しているだけに手馴れた感じで、
自信を持って演奏しているようです。

それにしてもこのオーケストラの管は木管も金管も中々の腕前です。

ちょっとした新しい工夫も仕掛けられていて、例えば4楽章の歌唱が一旦終ったあと、
フルートのソロが浮き上がりますが、ここでは息を半分ほど抜けるように吹くので、
まるで荒涼とした風景に風が漂っているような感じがします。

これは後に作曲される「大地の歌」でも似たような効果をもたらし、
東洋的な侘びや寂の世界を表現しているかのようです。

軽妙な中にも味わいのある演奏でとても楽しく聴く事ができました。

それにこの日の演奏会は、嬉しい事に終演後ケルンの地ビール「Kölsch」を振舞ってくれていました。
乾いた喉に、この軽いビールは助かります。
グビグビと一気に2杯も頂きました。

さて、2日目の演奏会はシューベルトの交響曲5番とブラームスの交響曲4番の組み合わせです。

この演目も中々の正統派・・・昔のウィーン・フィルの演目を彷彿させるようです。

シューベルトの5番は19歳での作曲にも関わらず既に完成された作品で、
5月ウィーンに吹く爽やかな風を連想させてくれます。
演奏も軽妙かつ爽やかで心地よい一時でした。

後半はブラームスの4番・・・彼の晩年の交響曲で古典的な手法ながら、
新しい試みもされていてリズムや楽器間のアンサンブルも複雑で難しい作品です。
しかも内容的にも晩年の深い感慨が込められているので、その辺をどう表現するのかも難しいところです。

デュダメルはここでも若干速めのテンポで軽妙な表現です。

1楽章の複雑に楽器が絡み合うシーンではちょっと乗り切れなかった部分もありましたが
、シミジミ歌い上げられた2楽章、そしてトライアングルを伴った勢いのある3楽章、
そしてもっともシミジミと歌われている4楽章へと入りました。

バッハの楽想からヒントを得て書かれた聴きどころ、
シャコンヌの部分ではフルートのソロが丁寧にシミシミと歌い上げました。

デュダメルはこの曲でも軽妙かつ爽やかに聴かせました。

「この曲はもっと渋く重厚な響きで聴きたい!」と思うのは普通なのでしょうが、
このオーケストラの発足当時からアバトと共に目指した‘室内楽的なまでの精密なアンサンブル“を考えると、
これはこれで充分満足の出来る演奏だったと思います。

何はともあれ、とても良く鍛えられた演奏レヴェルや、
音楽をするというバイタリティに溢れた姿勢は充分伝わってくる好感のもてる演奏会でした。

この夜もビールが振舞われるのを期待して、そっと‘海苔ピー“を忍ばせていたのですが、残念ながらアテが外れてしまいました。



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by Atelier-Onuki | 2018-09-20 21:10 | 音楽 | Trackback | Comments(0)
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