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ハイティンクとヨーロッパ室内管弦楽団の演奏会から

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先日の日曜日はハイティンクとヨーロッパ室内管弦楽団の演奏会がケルンでありました。

演目はモーツァルトの交響曲38番「プラハ」と
マーラーの「子供の不思議な角笛」でした。

ハイティンクも高齢なので聴く機会があればなるべく聴いておこうと出かけました。
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ヨーロッパ室内管もアバドによって創立されてから、かれこれ38年が経過します。
あのころはヨーロッパのユースオーケストラから優秀な奏者を集めて作られた
若いオーケストラでしたが、さすが7割ほどの奏者が年配の域になってしまいました。
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オーケストラが出揃い、いよいよハイティンクの登場かと思われましたが、
会場のマネージャーらしき人がマイクを手に出てきました。

こんな時は大抵碌なお知らせしかないので「あぁ急に体調を崩したのかなぁ~」と
半ば諦めぎみに聞き入ると、なんとこのコンサートに出演してくれるハイティンクに
対するお礼と来月90歳になる旨のお祝いの言葉で一安心致しました。

やっと登場となりましたが、ゆっくりと階段の手摺を持ち、
片側には介助の人が支えていて痛々しさすら感じました。

ステージ上でも介助の人と杖をつきながら、ゆっくりと中央まで到着しました。

かれこれ3年ほど前に聴いた時はヨチヨチながらも一人で杖もなく歩いて来られましたが、
この3年間で急に老け込まれたようです。

指揮台にもハイチェアーが置かれていて何とか座れました。

それでも振り下ろされた指揮棒からは「ダ~ン!」と締まりのある響きで始められました。
バイオリンがチャラチャラチャンと刻みながらクレッシェンドして行くあたりもモーツァルトらしい優雅なで心地よい響きがかもし出されています。
テンポも小気味良くだれた感じはありません。

この曲は「フィガロの結婚」の上演に先立ってモーツァルト自身の指揮によってプラハで初演されたので「プラハ」と言う副題が付いているそうです。
「あの小さいながらも愛らしい「エステート劇場」で演奏でされていたのだなぁ~」と
想像を膨らませていました。

色んな事を思い浮かべながら聴き終えていました。
まぁ全体的には良くも悪くもハイティンクらしく、無難に纏めたなぁ~という印象でした。

このオーケストラでのモーツァルトといえば、10数年前に聴いたアーノンクールとの
29番の交響曲が思い出されます。

それは2楽章で弱音を利かせた衣擦れのようで、
この世とも思えないような綺麗な響きにゾクッとし鳥肌がザァ~と立ったのを忘れる事ができません。

さて、後半はお目当てのマーラーの「子供の不思議な角笛」です。

これはドイツの古い民謡集から編纂して作曲された歌曲集で、
その奇妙で不思議な世界観が描かれています。

それでも元々が民謡や童謡ですので、マーラーにしては深刻な部分は少なく、
とても聴きやすい曲で大好きな曲です。
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ソリスト2人の登場と共にゆっくりと介助に助けながら登場されました。
まぁそんな訳で会場は割れんばかりの拍手ですが、これに圧倒された私は小さく拍手をしていました。

唯、この曲はややこしい事に、纏まった歌曲集として一気に作曲されたのではなく、
バラバラに作曲されたあとから10曲が編纂されました。

その後、追加された曲もあり指揮者によって解釈はバラバラ・・・

数曲カットしたり、逆に加えたり、順番を変えたり、歌手もソプラノとバリトンですが
歌う曲が変えられたり、場合によっては一人で歌いきったりとややこしく、私もよく分かっていません。

一般的には「歩哨の夜の歌」から始められますが、どうも違う曲が流れてきました。
「最初はエェ?・・・」と?マークがず~と続いていました。

2曲目で「むだな骨折り」が出てきてやっと聴き慣れた曲となりました。
これはソプラノとバリトンとのコミカルなやり取りですが、表情豊かに表現しています。
それも大げさな表現ではなく、とても好感がもてます。

歌手の二人は未だ若い領域の人たちでしたが、よく通る張りのある声ながら、けして声を張り上げることがない、とても実力のある人たちだと思います。
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3曲目の「不幸な時の慰め」もソプラノがとてもチャーミングに歌い上げました。

そして私の好きな6曲目「魚に説教をするパドヴァの聖アントニウス」は
何とも奇妙な話しを不気味ながらもコミカルな異次元の世界を表現しています。

この曲はマーラー自身もとても気に入っていたようで、交響曲2番でも3楽章で全く同じテーマと音楽を引用しています。

ハイティンクもモーツァルトよりもマーラーの方があっているのか、この変幻自在の音楽を操っています。
まぁ何といってもマーラーの音楽には仕掛けも多く、うねったり、歪んだりしながらも
ハッとするようなロマンティックで綺麗なメロディも浮かび上がります。

曲はデュエットによう「美しいラッパの鳴り響くところ」を終えと所で、
なんとハイティンクは楽譜を閉じてしまいました。

ちょっと焦ったソプラノが指揮台へ、すかさず歩み寄り、
これから演奏しなければならない最後の曲のページを開きました。

ハイティンクも我に帰ったように、「おお・そうだった!」とばかり彼女の肩をトントンと叩いていました。

一瞬どうなることやらと焦りましたが、ことなく無事に最後まで演奏を終えました。

又もや割れんばかりの拍手喝さいでしたが、ステージ脇まで下がったハイティンクは
そこでもう一度挨拶をして退場しました。

普通なら拍手に答えて何度もステージに登場するのですが、
この日はオーケストラも気を利かせ彼が退場した後、
直ぐに回り近所の奏者と握手をして退場して行きました。

ハイティンクがコンセルトヘボウと2度目に来日した1968年は、
私は浪人時代で丁度ポスターの課題がでた時、
このコンサートのポスターをオーケストラのシルエットで描いて作ったのを思い出します。

この頃はコンセルトヘボウのコンサートなんて憧れ中の憧れでしたが、
如何せん浪人性には高値の花で、単なる憧れでしかありませんでした。

あれからかれこれ50年・・・長い年月が過ぎてしまいました。


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by Atelier-Onuki | 2019-02-14 00:41 | 音楽 | Trackback | Comments(0)
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