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セザンヌを訪ねて 7  ビベミュスの「石切り場」 (ドイツ・ニュース・ダイジェスト 3月のコラムより)

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セザンヌの画風は晩年になるに従って、より知的で論理的な画法の傾向が強まってきます。

目の前のモチーフを感じるままに描くのではなく、
純粋に形と色の世界を彼流に組み立てなおし構築していきます。

山や木々、人や静物など自然の形状も幾何学的な形に構成し円、球、円錐に分析し
そして、正三角形には不動の安定感を見出していました。

この時期の彼の作品を観るとき、描かれているモチーフの輪郭線を外し、
すこし目を細めて純粋に形と色の作品として観賞してみると、
それは実に絶妙なバランスで構成されています。

この頃から影も描かず無視し始めているようです。

そんな彼が晩年好んで出かけたのはビベミュスの「石切り場」でした。
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ここはセザンヌが生れる前に起こった建設ブームの時に掘り出されたそうで、
彼は若い頃からゾラたちと訪れ興味を抱いていたようです。
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小高い山はかなり深く掘り下げられ、まるで迷路のような谷になっています。
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ほぼ垂直に掘られた岩肌は明るい茶褐色で
「これこれ・・・セザンヌが描いていた色と同じだ !」と俄かに気持ちが高ぶって行きます。
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所々、通り抜けられるようにトンネル状の岩もありますが、これが正三角形の形をしていて
「ここでも構図のインスピレーションを受けたのだろうな~」と感慨に耽っていました。
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彼が描いた場所には絵のコピーが取り付けられていて、興味深く観賞できます。

ちょっと広くなった高台では数枚描いて、その一枚には岸壁の向こうにサント・ヴィクトワール山が
描かれていますが、この位置からは見えません。
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恐らく別の場所から見えるヴィクトワール山を合成しているようで、
画面を構成するという意識がしっかりと見て取れます。
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彼は石切り場内にポツンと建つ古い家をアトリエとして借りていたそうです。
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ここに数日間滞在し制作をしていたようですが、街からはかなり遠いので
60歳を過ぎているにも関わらず軍隊で乗馬の手ほどきを受け通っていたそうです。
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なんの変哲もない石切り場だと、それほど期待をしないで行ったのですが、
イヤイヤとても興味深い所でした。

ここへは観光案内所で申し込み、町外れの駐車場で指定された時間に集合し
ガイドさんと一緒でないと入山することが出来ません。
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by Atelier-Onuki | 2019-03-16 21:42 | コラム | Trackback | Comments(0)
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