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ペペ・ロメロ と リアル オーケストラ シンフォニカ セヴィリア の演奏会から

先日といっても2週間も前になるのですが、ペペ・ロメロのケルンでの演奏会へ行ってきました。
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以前、彼の演奏を聴いたのは、未だお父さんのセレドニオも健在で、
ペペの兄弟も含めたギター一家によるアンサンブルでした。

演目は最初がビゼーの「アルルの女」から第Ⅰ組曲
タレバのフラメンコ風コンチェルト

休憩後はロドリーゴの「アラフェス協奏曲」と
再びビゼーの「アルルの女」から、今度は第Ⅱ組曲でした。

オーケストラはReal Orquesta Sinfónica de Sevillaといって名前すら聞いたことも無かったのですが、
恐らく鄙びた演奏をするのだろうなと、むしろ楽しみにしていました。

一曲目、それほど大きくない編成ながら「アルルの女」の前奏曲が
‘ジャン・ジャン・ジャン“と有名なテーマが力強くも、引き締まった響きで始められました。
「ウン、こりゃなかなかちゃんとしたオーケストラ!」と益々楽しみが膨らんで行きました。

もっと鄙びた音がするのかなぁと思っていましたが、若干の素朴さはあるものの堂々とした趣で、
木管などのソロ・パートも丁寧に雰囲気をもって演奏されました。

雰囲気も充分醸しだされ、セヴィリア(アンダルシア)とアルル(プロヴァンス)は
どちらも南なので気候も人情的にも似ているところがあるのかなぁと勝手なことを考えていました。

2曲目「メヌエット」に入り軽快にリズムが刻まれていきます。
曲が変奏しハープに乗って木管群が流れるようなメロディを吹く辺りは、
ミストラルに吹かれ丘の上を流れていく雲が目の前に浮かぶようです。

3曲目の「アダージョ」は好きな曲の一つですが、
ゆったりとした甘いメロディがサキソフォンのソロで切なく流れて行きます。
温かい陽が差し込む農家の庭先、お爺さんがベンチに座っていますが、
遠くへ嫁に行っていた幼馴染のお婆さんが訪ねてきて昔話をシミジミ話しているシーンです。

4曲目「カリオン」は3本のホルンによって力強く教会の鐘を響かせます。
「昼さがり」と勝手に思っているのですが、力強くも気だるい雰囲気が好きです。
この曲を聴くとゴッホが描いた「アルルの見える花咲く果樹園」が必ず目に浮かんできます。

この絵はミュンヘンのノイエ・ピナコテークにある一枚ですが、
とても好きな絵で何度も見に行ったことがありました。

画面手前には3本のポプラの幹がブルーで大胆に描かれ、
その向こうには農夫が働く果樹園が描かれていますが、
恐らくアーモンドの白い花々が満開に咲き誇っています。

さらにその奥にアルルの街並みが広がっていますが、
画面の左にはこの曲でイメージしている「カリオン」(鐘)を鳴らしている教会の鐘楼が描かれています。
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さて、休憩後はメインの「アランフェス協奏曲」でペペはこの曲を年間150回ほど取り上げるそうです。

幾ら作曲家と親しかったとはいえ、「まぁよくも厭きないものだなぁ~」と不謹慎な事を
考えてしまいます。

昔、スペインを周った時、この曲に憧れてアランフェス宮殿に行ったことがありました。

とても広大な敷地で閑散としていた印象があります。
ロドリーゴは幼少期に失明をしていますが、
スペイン内戦の時に破壊された宮殿や傷ついた人たちに思いを馳せ作曲をしたそうです。
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まぁ何といっても有名なのは2楽章のメロディで、その甘く切ない旋律は世界中で愛され、
ジャズを初め他のジャンルの音楽家たちも取り入れています。

さすがペペの演奏は手馴れたもので、全曲暗譜での演奏、
安心して聴き入る事ができました。

演奏スタイルも決して慣れなど感じさせず真剣な取り組みで、
曲の最後では見事な指さばきで決めました。

引き続き「アルルの女」の後半です。

1曲目の「パストラール」、穏やかな農村風景が描かれていますが、
ここでもゴッホの絵が浮かんできます。

それは「クロー平野の収穫」で柔らかな陽が照っている畑に力強く働く農夫たち、
それに荷車を引く馬や牛の姿がうかんで来るようです。
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曲は変奏してこの地方の踊りのリズムを素朴な小太鼓の伴奏に乗って刻みますが、ゆったりとしたテンポで何処と無く寂しげな印象で、
これから起こる悲劇を予感しているようです。

2曲目は「間奏曲」で悲劇的な印象を与える力強い前奏のあとホルンとサキソフォンによって
不安なハーモニーを吹いたあと、サキソフォンのソロで甘いメロディが奏でられます。

そのメロディの最終節にはシューベルトのアベ・マリアが暗示されています。

ハープの伴奏を伴い弦楽群が盛り上げていきますが、あくまでも悲劇的です。
最後ははっきりとアベ・マリアの旋律で締めくくられました。

3曲目の「メヌット」は昔この曲が吹きたくて一時フルートのまねごとを練習したほどでした。
ハープの伴奏にのって甘いメロディを静かにシミジミと吹かれます。

最後は「ファランドール」、この曲全体のテーマが最初の前奏曲同様に始まりますが、
途中からこの地方特有の踊りであるファランドールのメロディが乗っかってきます。

この2つのメロディが現れては入れ替わりを繰り返し、途中からは同時進行して行きます。

このドーデー作の短編小説「アルルの女」の悲しい物語を、
アルル地方の熱い舞踊音楽を背景に運命的な幕切れを閉じました。

この曲はこんなに名曲にも関わらず余り演奏会では取り上げられませんので、
とても貴重な体験でした。

オーケストラも気合の入った好感がもてる演奏で、とても楽しむことができました。

あぁまた「アルルの女」聴きたいなぁ~



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by Atelier-Onuki | 2019-04-02 00:36 | 音楽 | Trackback | Comments(0)
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