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ムーティとウィーン・フィルの演奏会

先週ウィーンへ行ったのは1週間の滞在でウィーン・フィルの演奏会を2つも聴けたからです。

こんなに短期間で2公演を聴けるチャンスは数年に1度ある程度ですし、
しかも今回はヤンソンスとムーティという豪華な顔ぶれだったからです。

残念ながらヤンソンスは演奏会の初日に亡くなってしまいましたが、
気を入れなおして、ムーティの演奏会へと足を運びました。

演目は1曲目がブッフビンダーのピアノで
ベートーヴェンのピアノ協奏曲5番、「皇帝」、
休憩後の2曲目はストラヴィンスキーの「妖精のキス」ディヴェルティメント、
3曲目はレスピーギの「ローマの松」でした。

大きな拍手と共に2人が登場しましたが、背格好と言い、年齢と言い、
ロングの髪型までソックリな2人が登場し一瞬どちらが誰か分からないほどでした。
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ダ~ンとオーケストラの一撃で始められ、すぐさまピアノが連打で対応しますが、
もうこの瞬間で「オォこれだ!」と感心させられます。

これぞ王道の堂々とした演奏で、安心して身を委ねられます。

ブッフビンダーはこの10数年ベートーヴェンのピアノ協奏曲に力をいれていて、
2年ほど前にはウィーン・フィルと弾き振りで全曲演奏会を行ったほどです。

演奏は終始堂々と手馴れたもので、正に正統派の演奏です。
叙情的なところも流れるような綺麗さで滞る事無く進められて行きます。

2楽章のあの静かで夢見心地のところもハッとタメ息が思わず出てしまいそうな美しさでした。
ピアニッシモから途切れることなくスムースに3楽章へと移行していきました。
オーケストラもフォルテで堂々としたテーマを奏でだし、グイグイと盛り上がっていきます。

いやぁ~こんな立派な曲を作曲したベートーヴェンも凄いし、
それを見事に表現している奏者たちにも大いに感心致しました。

幼い頃からウィーンで育ったブッフビンダーは聴衆からも好意的に受け止められているようで、
終演後は盛大な拍手で答えていました。

さて、2曲目の「妖精のキス」は元来バレエ音楽として作曲されていますが、
後に演奏会用に編曲されたディヴェルティメントが演奏されました。

正直あまり馴染みのない曲なので、
やはりムーティが昔フィラデルフィア管を振った映像で数回予習をしていました。

フルートのソロによって静かに始められましたが、やはり未だピンと来ません。

2曲のスイス舞曲はチェロのソロがハープの伴奏を伴って奏でられます。
そこにクラリネットが甘いメロディを浮かび上がらせ、まるで室内楽を聴いているような雰囲気です。
これは綺麗・・・ウットリと夢を見ているような心地に・・・
しばし天井を眺めながら聴き入っていました。

因みにウィーン・フィルもこの曲を取り上げるのは始めてだったそうです。

さぁいよいよ「ローマの松」です。

レスピーギはローマ3部作として、この「ローマの松」、「ローマの泉」、「ローマの祭り」
とローマ独特の情景を作曲していますが、やはり「松」が一番の名曲です。

確かにローマの松は特長的な形をしていて、
幹がス~と延びた上の方だけにフワフワとした円形の葉を付けています。
不思議なことにこのような形の松は他の地域ではあまり見かけたことがありません。

大きな拍手が鳴り止まぬ間にサッと振り返りながらムーティのタクトが振り下ろされました。
会場にザワメキが残るなかキラキラと「ボルゲーゼ荘の松」が鳴りだしました。

これはこの公園にある松の木陰で遊ぶ子供たちの様子を描いているそうで、
鳴り子などのオモチャを連想するような打楽器がいっぱい鳴っていてキラキラを賑やかに奏されます。

打楽器奏者がマックスで必要なので、トライアングルはティンパニー奏者が叩いている有様です。

その上にアチコチの金管が鳴り出し、これはローマの喧騒を表現しているのでしょうか?

それでも流石はウィーン・フィル喧しさは一切なく、むしろ心地よい響きです。

音量がマックスに達しパタッと音楽は止まると、低音の弦楽器で静かに「カタコンバの松」が奏でられ出しました。

厳かで荘厳なメロディが重なるなかバルコニー席の奥からソロのトランペットの甘いメロディが聴こえてきます。

まぁ何とも立体感のある表現でしょうか・・・まるで夕日が沈んで行くかのようです。

すぐさまザバザバ・ザバザバ・ザバザバ・ザバザバ・ザバザバン・バン・バンと弦楽器
で刻まれますが、まるでフーガの様に、この特徴的なメロディが続き、
盛り上りみせたあと、静かにクレッシェンドしながら消えて行きます。

コロコロとしたピアノの音でロマンティックに「ジャニコロの松」が始められました。

それにクラリネットの甘いメロディに弦楽器が対応していきます。
チェロのソロとクラリネットが絡み合うなかオーボエが切ないメロディで加わります。

再びクラリネットのソロが静かに吹き出したころ、
会場のアチコチからナイチンゲールの鳴き声が聞こえてきますが、
ここも立体感に溢れていて夢見心地の瞬間が訪れます。
夕方でしょうか・・・ウットリとするところです。

そういえばコロッセオの前の松並木には夕方になると無数のナイチンゲールが集まってきていました。

曲はハープと弦楽によって静かに閉じられると、静かにティンパニーの連打で「アッピア街道の松」が始まりました。

不安定なメロディの弦にバス・クラリネットが不気味な旋律を加えコールアングレが更に不安さを増して行きます。

曲はホルンの遠吠えが始まると序々に行進曲風になって行きます。

これは古のローマ軍がアッピア街道を凱旋してくる様子を表現しているそうです。

行進が近づくにつれ金管楽器が段々と増して行き、
バルコニー両サイドに配置されたバンダが加わり出すと曲はマックスの音量へと高まって行きます。

360度の音の洪水にホールは崩れんばかりに響いています。

曲は長いフォルテッシモの一撃で閉じられました。

そりゃブラボーまじりの拍手もマックスに達しました。

2度目、挨拶に現れたムーティはバルコニーの聴衆に向かって
「ちょっとバンダが煩くて御免なさい!」とドイツ語交じりの英語で誤っていて、微笑ましい光景でした。
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まぁこの曲をこの最高の演奏で聴けただけでも
「ホント、ウィーンまで来て良かった!!」とツクヅク感じていました。


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by Atelier-Onuki | 2019-12-12 01:03 | ウィーン | Trackback | Comments(0)
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