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ウィーン国立歌劇場 「トスカ」と「ドン・ジョヴァンニ」の公演から

今回のウィーン滞在中、コンサート以外にもオペラを2公演楽しむことができました。
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一つ目は「トスカ」で演出も美術もトラディショナルなので安心して楽しめます。
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指揮者アルミリャートもここのオペラ・ハウスの常連なので手馴れたものです。

トスカ役のムラヴェヴァ、カラヴァドッシ役のカレッヤも実力のある歌手で、演技を含め
良く演じていました。

2幕目トスカのアリア「歌に生き、愛に生き」や終幕のカラヴァドッシの
「星はきらめき」などは聴き応えのある熱唱で大きな喝采を浴びていました。

今回もう一つの楽しみは警視総監スカルピア役でターフェルがでる事でした。

歌唱の凄さは勿論ですが、この悪役を見事に演じていました。
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1幕目のフィナーレでは教会に響く荘厳なテ・デウムをバックにトスカへの嫉妬と欲望に燃え、
その思いを吐き出すように歌うシーンは圧巻で見事でした。
(私はこの部分が一番好きかも・・・)

それにしてもプッチーニは音のパースペクティヴを描くのが本当に得意で、
ここでも遠くから迫り来る革命軍が放つ大砲の音が聞こえスカルピアにも
危機が迫って来ているのを暗示しています。

このオペラは実際に存在した有名な歌手をモデルに創作された作品ですが、
舞台になった場所がはっきりとコジツケられています。

1幕目の教会は市内のサンタンドレア・デッラ・ヴァッレ教会、
2幕目のフェルレーゼ宮殿は現在フランス大使館、
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終幕のサンタンジェロ城は観光地としても有名です。

其々がそれらしくオペラの情景に相応しい所が選ばれていますが、
サンタンジェロ城など、先にオペラを観ていたせいか、
屋上の回廊へ行った時など「エェ~舞台装置にソックリ!!」と何とも本末転倒な思いが頭を過りました。


次の日は「ドン・ジョヴァンニ」でした。
この公演は2・3年前に新しく演出されたもので初めて観る舞台です。
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演出及び装置は若干モダンな処理をされていますが、全く違和感のない親しみ易いものです。

元々5度程度の傾斜が付けられている地舞台上に更に装置としての傾斜が付けられ奥行きを強調しています。

それも奥に対して高くなっているだけではなく、左右にも傾斜していて中々複雑な構造です。

シーンに合わせて降ろされるスクリーンにも斜めを強調したモチーフの背景で、
より奥行きを出したかったのと、ドン・ジョヴァンニという話しの歪な内容を表現したかったのでしょうか?

この舞台は2幕仕立てですが、各々12場もあり音楽を止めることなく
シーンの変更を進行して行かなくてはなりません。

これを滞りなく、どう変更して行くのか装置家にとっては1番難しい演目の1つでもあり、
かつ1番腕の見せどころでもあります。

この舞台は傾斜した床はそのままで、額縁のように設置された3ツのアーチは
柱や建物の入り口としての役割を果しているのですが、
これも其々違う角度で組み合わされ、更に歪な表現になっています。

其々のシーンに合わせて降ろされるスクリーンには建物や天井の写真がプリントされていますが、これも上手な写真処理がされているので納得ができます。
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私が携わっていた40年以上前など各シーンを精密に描いていたものですが、
時代は変わり写真やプロジェクターを駆使した装置が多くなりました。
でも、こんな最新技術を使いこなせるのなら、これで良いのはと思い知らされます。

さて、舞台はアダム・フィッシャーの指揮で序曲が始まりました。

その指揮ぶりは手馴れた感じで、ツボを得ています。
無理強いをするような所は1箇所もなく、凄く演奏しやすいだろうなと思います。

この人は時々便利屋のように代役で呼ばれることが多く気の毒なのですが、
「人柄のとても良い指揮者なのだろうな!」とその指揮ぶりから察することができました。

歌手陣も概ね揃っていました。

特に、ドン・ジョヴァンニを演じたテツィール、
それにコケティッシュで役柄にぴったりのツェルリーナを演じたカロールなどが特に印象に残りました。

最後、ドン・ジョヴァンニが地獄落ちするシーンなど奥の床が裂け、
真っ赤に燃える地獄へとテーブルから滑り落ちる演出はスペクタクル性もあり見事でした。
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まぁ両公演とも充分に楽しませてもらいましたが、
演奏会2つとオペラ2つの全公演にコンサート・マスターとしてストイデさんが入っておられました。

私なんぞ観ているだけでグッタリと疲れ果てているのに、
プレッシャーが掛かるコンマスとして出演するなんて、
どんな体力と気力の持ち主なのだろうと感心をしつつも、
病気とかならなければ良いが・・・とちょっと心配にもなりました。

このオーケストラには3人もコンマスが居るのですから上手に回して欲しいものです。

追記:処でこの歌劇場は今年で節目の150周年を迎えました。
   この歌劇場にある4箇所のロビーに展開しているカフェ・ゲルストナーも開場からの出店で、
   その150周年を祝い、お菓子で作った歌劇場の模型を展示していました。

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by Atelier-Onuki | 2019-12-14 01:40 | ウィーン | Trackback | Comments(0)
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