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レスピーギの交響詩「ローマの松」 9月のコラムより

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イタリアの作曲家といえば、直ぐにオペラを想像しますが、レスピーギは珍しく器楽曲しか作曲していません。


そんな彼の代表作品は何と言っても「ローマ3部作」でしょう


それはローマの象徴とも言うべき「泉」、「松」、「祭」をテーマに作曲していますが、

単に情景を観光名所よろしく表現したものではなく、歴史的背景や作曲家のそのテーマに対する思い入れを感情豊かに込めています。


作曲された時期は13年間ほどに渡ってずれていますが、今日では一つの纏まった作品として扱われています。


中でも私が好きなのは「ローマの松」で、この曲が何処かの演奏会で取り上げられると、

少々遠い街であっても、わざわざ出かけてまで聴きたい曲の一つです。


それは最後の「アッピア街道の松」における、あの立体感溢れる音の洪水に浸りたいからです。


実際ローマの松は独特の形をしていて幹がス~と上に延び、

上部にだけ丸く柔らかな形の葉を付けていて心地良さそうな風情を醸しだしています。

これは不思議なことに他の所では余り見かけません。

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さて曲は4つのテーマで構成されていて、夫々の曲にレスピーギ自身が、どの様な情景なのか注釈を付けています。

その描かれた夫々の場所を訪れてみるのも興味深いものです。


1曲目は「ボルゲーゼ荘の松」、ローマの中心から程近い北にある大きな公園で、立派な松並木が続いています。

ここでは子供たちが賑やかに遊んでいる様子を表したそうで、おもちゃの楽器などが効果的に使われていますが、ローマの喧騒も現しているのではないでしょうか。


その公園内にあボルゲーゼ美術館は彫刻だけが展示されていますが、

ベルリーニの作品など他に類をみない繊細な表現で、エエッこれって本当に大理石なのと疑ってしまうほどの出来栄えに圧倒されます。

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2曲目は「カタコンバ付近の松」、ローマにはカタコンバが3箇所ほどあってレスピーギはどのカタコンバをイメージしたのかは不明です。


これらは、まだキリスト教弾圧時代のお墓で、厳粛な響きがコラールのように繰り返えされ厳かな雰囲気を出しています。

暫くして静かにトランペットのソロが浮かび上がりますが、夕暮れの寂しさの中に厳かで切ないほどの気分にさせられます。

曲は特徴的なメロディを弦で刻まれフーガのように重なりながら壮大な響きで終わります。


一転してピアノの軽やかなソロで3曲目「ジャニコロの松」が静かに始められます。

暫くして吹かれるクラリネットのソロは静かで柔らかく、まるであの柔らかな松の葉を表しているようです。

曲はグッと静かになりナイチンゲールの鳴き声がホールのあちこちから聞えてきます。

これは唯一、録音された音源をホールのあちこちのスピーカーから流していますが、物凄く綺麗な瞬間です。

実際、日が沈みかけると鳥たちは綺麗な声でよく鳴いていますよね。


このジャニコロの丘はローマが一望できる観光スポットの一つですが、あのペテロが逆さ十字架に付けられ処刑された場所でもあります。

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ティンパニーの低い連打で4曲目「アッピア街道の松」がいよいよ始まります。

それに木管たちが絡みだし不安定で怪しげな雰囲気を醸しだしています。

金管たちが絡みだすと行進曲風に進んでいきますが、これは古代ローマ軍が遠くからアッピア街道を凱旋して来る様子だそうで、段々と近づいてきます。

音量がマックスに差し掛かるころから、更に客席後方の両サイドに配置されたバンダが加わり

360度の立体的な音場に圧倒されます。

もうこれ以上ないほどの大きな音の洪水のなか打楽器郡の爆発と共に曲は閉じられます。

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by Atelier-Onuki | 2020-09-22 00:56 | コラム | Trackback | Comments(0)
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