![]() ドイツやオーストリアの歌劇場では年間300日ほど毎日公演があるので、出演者が急に病気になった場合に備え、何人かの予備要員を抑えています。 それでも間に合わない場合は、出演できる人員によって演目を変更するのですが、大抵の場合は「トスカ」に決まることが多いようです。 ![]() 名作オペラですから大抵の歌劇場はレパートリーの一つとして舞台装置や衣裳など 直ぐに出せる状態で保管されていますし、歌手も主要な3人が揃えば何とかなるからです。 歌手の人たちも、よく上演される演目なので違う歌劇場も含め出演した経験があるはずで、リハーサルにもそれほど時間を取るが必要ないからです。 私が経験したのはウィーンの歌劇場でしたが、ある公演を観に行ったらポスターの地色がピンクになっていて、これは演目が変更になった事を報せています。 普段は薄い緑掛かったグレー地に文字だけで書かれた昔ながらのスタイルで、プレミア公演の時は黄色地になります。 それでもさすがウィーン・・・トスカ役になんとカティーヤ・リチャレッリが出演しました。 急遽シチリアから駆けつけたのか、それともウィーンの近くに滞在していたのかは分かりませんが、 カラヤンも「トスカ」の録音に際し彼女を主役に起用しているほどです。 ![]() そんな真っ先に変更する演目に選ばれる「トスカ」ですが、割りとイージーに取り扱うと事故も起こり易い演目でもあります。 今までの例では2幕目にトスカに殺害されたスカルピアが仰向けに倒れますが、この後、弔いをする積もりで頭の両サイドに蝋燭の付いた蜀台を置きます。 これは台本にも指定されているのでどんな演出でも行われます。 それにヨーロッパの劇場は生火の使用が許可されています。 ある時、舞台と客席との間に空間の相違のため風が流れることがありますが、なんとスカルピアのカツラに火が付いてしまった事があったそうです。 ![]() マリア・カラスとよく共演したティト・ゴッビは彼女の迫真の演技にこのシーンで毎回本当に殺されるのではと感じ怖かったそうです。 ![]() それと3幕目での銃殺シーンでは、5・6人の兵士が一斉に銃を発砲するのですが、 音楽が高揚して来るので、彼らはもの凄く緊張するそうです。 しかも、演じているのは音楽をあまり知らない演劇学校の学生さんレベルです。 大抵はコーラスのリーダー・クラスが隊長役として、剣を振り下ろすなりの合図を決めているのですが、時折フライングをしてしまう人がいます。 そうなると大変で全員がつられて一斉放射・・・ 打たれたはずのカヴァラドッシはうろたえながらも5秒遅れくらいでバッタリと倒れることになります。 ![]()
by Atelier-Onuki
| 2020-11-25 00:15
| コラム
|
Trackback
|
Comments(0)
|
カテゴリ
全体 ウィーン ミュンヘン ザルツブルク デュッセルドルフ チロル ドイツ フランス イタリア イギリス スイス スペイン アメリカ チェコ 日本 オペラ 音楽 絵画 所感 オランダ オーストリア コラム ベルギー 未分類 以前の記事
2023年 05月 2023年 04月 2023年 03月 2023年 02月 2023年 01月 2022年 12月 2022年 11月 2022年 10月 2022年 09月 2022年 08月 2022年 07月 2022年 06月 2022年 05月 2022年 04月 2022年 03月 2022年 02月 2022年 01月 2021年 12月 2021年 11月 2021年 10月 2021年 09月 2021年 08月 2021年 07月 2021年 06月 2021年 05月 2021年 04月 2021年 03月 2021年 02月 2021年 01月 2020年 12月 2020年 11月 2020年 10月 2020年 09月 2020年 08月 2020年 07月 2020年 06月 2020年 05月 2020年 04月 2020年 03月 2020年 02月 2020年 01月 2019年 12月 2019年 11月 2019年 10月 2019年 09月 2019年 08月 2019年 07月 2019年 06月 2019年 05月 2019年 04月 2019年 03月 2019年 02月 2019年 01月 2018年 12月 2018年 11月 2018年 10月 2018年 09月 2018年 08月 2018年 07月 2018年 06月 2018年 05月 2018年 04月 2018年 03月 2018年 02月 2018年 01月 2017年 12月 2017年 11月 2017年 10月 2017年 09月 2017年 08月 2017年 07月 2017年 06月 2017年 05月 2017年 04月 2017年 03月 2017年 02月 2017年 01月 2016年 12月 2016年 11月 2016年 10月 2016年 09月 2016年 08月 2016年 07月 2016年 06月 2016年 05月 2016年 04月 2016年 03月 2016年 02月 2016年 01月 2015年 12月 2015年 11月 2015年 10月 2015年 09月 2015年 08月 2015年 07月 2015年 06月 2015年 05月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 12月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 09月 2014年 08月 2014年 07月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 04月 2014年 03月 2014年 02月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 03月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 最新のコメント
■お問いあわせ■
mail ☆ atelier-onuki.com (☆は@に直して下さい) こちらのメールアドレスまでお願いいたします。 ■Atelier Onuki■ www.atelier-onuki.com こちらで今まで書き溜めてきた作品の数々を紹介しています。 ご覧いただけますと幸いです。 ■ドイツ・ニュースダイジェスト■ 毎月第三週(金曜)発行のニュースダイジェストでも”水彩画から覗く芸術の世界”『Nebenweg』というタイトルで水彩画とコラムを寄稿しています。こちらも見ていただけたら幸いです。 当サイト内の画像および 文章の無断転載を 禁止します。 タグ
ブログパーツ
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||