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急遽の演目変更は「トスカ」が (11月のコラムから)

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ドイツやオーストリアの歌劇場では年間300日ほど毎日公演があるので、出演者が急に病気になった場合に備え、何人かの予備要員を抑えています。

それでも間に合わない場合は、出演できる人員によって演目を変更するのですが、大抵の場合は「トスカ」に決まることが多いようです。

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名作オペラですから大抵の歌劇場はレパートリーの一つとして舞台装置や衣裳など

直ぐに出せる状態で保管されていますし、歌手も主要な3人が揃えば何とかなるからです。


歌手の人たちも、よく上演される演目なので違う歌劇場も含め出演した経験があるはずで、リハーサルにもそれほど時間を取るが必要ないからです。


私が経験したのはウィーンの歌劇場でしたが、ある公演を観に行ったらポスターの地色がピンクになっていて、これは演目が変更になった事を報せています。

普段は薄い緑掛かったグレー地に文字だけで書かれた昔ながらのスタイルで、プレミア公演の時は黄色地になります。


それでもさすがウィーン・・・トスカ役になんとカティーヤ・リチャレッリが出演しました。

急遽シチリアから駆けつけたのか、それともウィーンの近くに滞在していたのかは分かりませんが、

カラヤンも「トスカ」の録音に際し彼女を主役に起用しているほどです。

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そんな真っ先に変更する演目に選ばれる「トスカ」ですが、割りとイージーに取り扱うと事故も起こり易い演目でもあります。


今までの例では2幕目にトスカに殺害されたスカルピアが仰向けに倒れますが、この後、弔いをする積もりで頭の両サイドに蝋燭の付いた蜀台を置きます。

これは台本にも指定されているのでどんな演出でも行われます。

それにヨーロッパの劇場は生火の使用が許可されています。

ある時、舞台と客席との間に空間の相違のため風が流れることがありますが、なんとスカルピアのカツラに火が付いてしまった事があったそうです。

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マリア・カラスとよく共演したティト・ゴッビは彼女の迫真の演技にこのシーンで毎回本当に殺されるのではと感じ怖かったそうです。

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それと3幕目での銃殺シーンでは、56人の兵士が一斉に銃を発砲するのですが、

音楽が高揚して来るので、彼らはもの凄く緊張するそうです。

しかも、演じているのは音楽をあまり知らない演劇学校の学生さんレベルです。

大抵はコーラスのリーダー・クラスが隊長役として、剣を振り下ろすなりの合図を決めているのですが、時折フライングをしてしまう人がいます。

そうなると大変で全員がつられて一斉放射・・・

打たれたはずのカヴァラドッシはうろたえながらも5秒遅れくらいでバッタリと倒れることになります。

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by Atelier-Onuki | 2020-11-25 00:15 | コラム | Trackback | Comments(0)
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