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音楽ファンは年間何枚レコードを買うのか ( 2月のコラムより )

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昔、まだ日本に住んでいた頃、ある音楽雑誌を定期購読していました。

その中に“海外楽信“という欄があって、アメリカやヨーロッパからの音楽トピックスが毎回報告されていました。


ある時、ウィーンからの記事で「音楽ファンは1年間にどれほどレコードを買うのか」

というタイトルで日本とウィーンの違いが書かれていました。


「日本では熱心なファンは年に200枚ほど、もの凄い人になると300枚も買う人がいるけれど、

ウィーンでは精々100枚ほどで、それも音楽関連に従事している専門家くらいだ。

一般の音楽ファンは“演奏会の思い出”に精々2~3枚程度だ。」と、「ヘエェ~少ないのだなぁ~」とちょっと驚きました。


決して裕福ではない私ですら年間100枚位は買っていましたし、

時折行きつけのレコード屋でどっさりと両手に紙袋を提げて帰って行くおじさんを羨ましく眺めていました。


“演奏会の思い出”に関しては、よく大物指揮者が来日すると、

「来日記念盤」と称して演奏会で取り上げられる演目を組み合わせたシリーズが何枚か発売されるので、皆さんこれを買われるのだと思っていました。


その後、ウィーンで住むようになり、憧れのムジーク・フェラインへウィーン・フィルを聴きにワクワクしながら出かけました。

バーンスタインとツィマーマンのピアノでブラームスのピアノ協奏曲1番です。

冒頭のティンパニーの一撃と共に弦がガリガリ引き始めますが、さすがバーンスタイン・・・

もの凄くダイナミックでもう体が音の洪水に包まれ、まるでホール全体が揺れ動いているようでした。


日本でもウィーン・フィルは聴いたことがありましたが、「いやぁ~本当はこんな音がしていたのだ~」と腰は抜けるは、

目からウロコがバラバラと何枚も落ちていきました。


この日から数ヶ月たったある日、レコード屋の前を通りかかりフト,ウィンドウを見ると「エェ!」この演奏会のジャケットが目に飛び込んできました。

そうだったのか・・・“演奏会の思い出”に買う1枚の意味は・・・

自分が居合わせた演奏会のライヴ録音が発売されれば、そりゃ買いますよね・・・

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後日、シューマンの4番をやはりバーンスタインで聴きました。

演奏に先立って彼自ら挨拶をし、「今日はライヴ録音をするので、咳は今の内に一杯やっておいて下さい」と笑いを誘っていました。

この日は終演後、再びバーンスタインが登場し、

「これから録音の録り直しをするけど、帰りたい人は帰って良いし、残りたい人はそのまま残って下さい。」と挨拶しました。

退出しかけていた人々も慌てて座席に戻りました。そして2楽章のヴァイオリン・ソロの所を何度も何度も録り直していました。

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by Atelier-Onuki | 2021-02-20 01:10 | コラム | Trackback | Comments(0)
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