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指揮者カルロ・マリア・ジュリーニさんのこと (3月のコラムより)

 
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                   ボルツァーノの裏通り


カルロ・マリア・ジュリーニさん(1914年~2005年)は南イタリア出身でローマのサンタ・チェチーリア国立アカデミーでヴィオラ奏者として学ばれました。

このヴィオラを選んだ時点で彼の控えめな人間性が伺われます。


その後、指揮者に転向され若い頃は筋肉質でエネルギッシュな演奏をされていましたが、

晩年イタリアに戻って来られてからは落ち着いたテンポの暖かい演奏になって行きます。


彼の演奏に初めて接したのはシカゴ交響楽団と録音した「展覧会の絵」でした。

これには余白にラヴェルの「マ・メール・ロア」などが入っていましたが、

ムソルグスキーの作で原曲がピアノ版「展覧会の絵」をオーケストレーションした

ラヴェルの作品をカップリングするなんてお洒落だなと感心して聴いていました。


シカゴやロスアンジェルスでも音楽監督として活躍されていたのですが、

奥様が病気になられたのを機にイタリアのボルツァーノに戻られ、

看病に時間が取れるよう何処にも属さずフリーとして活動されました。


場所もヨーロッパに限定されましたがベルリン・フィルやウィーン・フィルなど超一流のオーケストラから招かれていました。

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このボルツァーノは少年時代に過ごした街なのですが、

この辺りはオーストリア帝国の領土だったので、自然にドイツ語や文化を吸収されました。

そんな訳で彼はイタリア音楽も演奏されましたが、むしろドイツ音楽の方に重点をおかれていたようです。


それでもさすがイタリアの血がそうさせるのか、渋いドイツ音楽でも幾分の明るさがあります。

それに何と言っても音楽に対する謙虚さで、丁寧な表現の中、彼の人間性の暖かさや真摯さが浮き上がってきます。


何度かライヴ演奏を聴く機会がありましたが、ゆったりとしたテンポの中メロディラインが

綺麗に浮かび上がり「とても良い音楽を聴かせてもらったなぁ」と至福の時を味あわせてもらいました。


中でも白眉はアムステルダムで聴いたブラームスの交響曲1番でした。

4楽章の序奏が終った後、弦のトレモロに乗ってホルンが浮かび上がる所では、

霧が立ちこめた湖の彼方、森の奥からホルンが聴こえて来たかの情景が浮かびました。

そしてオーケストラ後方にあるパイプオルガンに沿ってユラユラ登っていく音が見えました。


彼は音楽本来の良さを引き出すために、作品に対し謙虚に向かい合い丁寧で暖かい音楽を表現してくれました。



by Atelier-Onuki | 2021-03-23 00:47 | コラム | Trackback | Comments(0)
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