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指揮者カルロス・クライバーさんのこと-2 (5月のコラムから)

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ある日仕事から帰って来ると、大音量でヴェルディの「椿姫」が掛かっています。

それは暫く前に発売されたクライバーのレコードでヴェルディのオペラにしてはエラク緊張感が漂う、引き締まった演奏でした。

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数ヶ月前に「オテロ」を観た家内はすっかりクライバーの虜になっていました。

「良いな~、俺もクライバーが聴きたいなぁ~」と羨ましく思っていました。

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その後、ヨーロッパで住むようになり、ここだと聴く機会もあるだろうと音楽雑誌に出ている

演奏会予定を繁々と眺めていたのですが、中々クライバーの演奏会がありません。


当時はインターネットなど無い時代でしたが、ヨーロッパ中の演奏会予定が網羅されている

KonzertAlmanach”という分厚い年鑑を購入し、早々に指揮者の項目で探しましたが、

何処にもクライバーと言う名前が出てきませんでした。


その頃からクライバーはちょっと精神的に問題があるので中々指揮をしないのだと噂されだしました。・・・

事実、彼はお父さんエーリッヒが指示の書き込みを入れた楽譜しか使用せず、それもパート譜にまで拘っていたそうです。

その為、レパートリーがもの凄く狭く、曲目を全部思い起こす事ができるほどの少なさです。

練習時間も通常の倍くらい要求し、入念に準備されていました。


リハーサルに立ち会った人の話によると、彼はよくブツブツと独り言を呟くそうです。

「あぁエーリッヒだったら、如何しただろうなぁ~こうしただろうかなぁ・・・」と

そんなクライバーですが、一旦本番の指揮台に立つと別人のように、颯爽とした指揮姿で振り始めます。

音楽はスピードに乗り緊張感が全編に漂っていますが、変幻自在の動きにはしなやかさや叙情性も加わり、

聴衆のみならずオーケストラの奏者たちもグイグイとその魅了に引き込んでしまいます。


そんな折のある夜、広告塔の前を通ったらC a l r o s ・・・と目に入って来ました。

最初はラテン・バンドかなんかのポスターかと思いきや、何とKleiberと続いているではありませんか・・・ 

確かこのシーズンは予定されていなかったはずなのに・・・


それもそのはず、その日はちゃんと予定されていた別の演奏会が入っています。

急遽、決まったらしく何と開演は夜11時からです。

家に帰って早々に家内に報せた処、「へぇ、ありがとう!」と言っています。

この頃は子供が小さくどちらかが子守をしなければなりませんでした。

あ~ぁ又クライバーを取られてしまいました。


その後、数ヶ月の間にメータとイスラエル・フィルがそして何とムーティとウィーン・フィルで同じブラームスの2番を聴く機会がありました。


どちらも素晴らしい演奏で、特にムーティは歌に溢れた名演でしたが、

家内は「まぁクライバーに比べたら・・・」とフンとしていました。

まぁ切り札を出されては応酬の仕様がありませんでした。




by Atelier-Onuki | 2021-05-26 00:09 | コラム | Trackback | Comments(0)
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