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指揮者カルロス・クライバーさんのこと-3 (6月のコラムから)

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クライバーを聴きたいと云う思いは募るばかりでしたが、

1989年のニューイヤー・コンサートに登場すると、音楽雑誌で大きく報じていました。


コリャ行かなければ・・・とは云え普段でもチケットの入手は至難の技、

ましてやクライバーとなれば異常な争奪戦になることが予想できました。


何冊もの音楽雑誌などで、音楽ツアーに強そうなあちこちの旅行代理店を見つけては片端から電話をかけて問い合わせました。

中には簡単に「アイヨッ、ありますあります!」って感じで受け答えする代理店があって、

こりゃ良かった直ぐに予約をしようとよくよく訊いてみると、な何とウィーン近郊のバーデンでの全く別物のニューイヤー・コンサート・・・
そりゃチケットある訳だし、そんなの普通わざわざデュッセルドルフから行きません。

ようやく信用できそうな代理店がミュンヘンにある事が分かりました。
当時はマルク時代で、一枚1200マルク(あの当時だと10万円以上の価値)でしたが、まぁクライバーですから覚悟は決めていました。

それにチケットはホテルに届けるとの事、多分彼らもウィーンの誰かに頼むのでしょう。

(当時は演奏会の10日前に売り出され、前夜は1晩中何度かの点呼を受けながら並んで1人2枚まで買うことが出来ました。)


実際、ホテルでチケットを手にするまでは本当にちゃんと来ているのかヤキモキしていました。


1月1日とうとう、その日がやってきました。

会場のムジーク・フェラインは花々で飾られ華やかな雰囲気ですが、更に何か異様な緊張感が漂っています。

いよいよオーケストラが登場しチューニングをし終え着席しました。

この落ち着いた辺りで指揮者が登場するのですが、中々出てきません。

彼は急なキャンセルも何度か犯してしているので「大丈夫かなぁ」と心配になってきました。

5分も待ったでしょうか、ちょっと緊張ぎみにやっと登場してきました。

始まる前から聴衆もオーケストラも緊迫しています。

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やっと最初の「加速度ワルツ」が奏でられました。

これこれ、陽光が差し込むなかのワルツ・・・なんと心地よい事でしょうか・・・

それでも若干硬い演奏で未々調子が出ないのでしょうか・・・ 

2曲目は「田園ポルカ」まぁポルカですから陽気な音楽で、しかも途中からオーケストラの人たちが歌うシーンがあります。

これですっかり肩の力が抜けたのか次の「トンボ」などは軽快ながらハッとする綺麗な瞬間が・・・

そして「こうもり」序曲、もう颯爽とした演奏で、音楽が生きいきしています。

そして最後の追い込み部分など、これ以上早く弾けないほどの猛スピードで閉じられました。


追記

クライバーはその後、1992年のニューイヤー・コンサートにも登場し、

更に素晴らしいワルツや軽快なポルカの演奏を繰り広げました。

そこで、沸々と疑問が湧いてきます。

確か彼はお父さんエーリッヒが指示用の書き込みを入れた楽譜しか取り上げなかったはずで、こんなにも沢山のレパートリーがあったのかという事です。

調べてみると、何とエーリッヒはウィーン生まれ・・・そりゃワルツやポルカも得意にしていたはずです。

事実、何曲か聴いた事がありましたが、何れもウィーン流のツボを得た素晴らしい演奏をしていました。

カルロスにも根底にウィーンの血が流れていたのですね。・・・納得



by Atelier-Onuki | 2021-06-21 19:49 | コラム | Trackback | Comments(0)
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