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生粋のウィーン子は (2月のコラムより)

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                              シューベルトの生家



ウィーンといえば“音楽の都”が代名詞です。


それは他に類をみないほどの多くの大作曲家が何代にも渡って活躍したからです。


古くはハイドンからモーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス、ブルックナー、

マーラー、R.シュトラウス、ヴォルフ、シェーンベルクなど枚挙に暇がありません。


それにウィーンの代表的音楽と言えば“ワルツ”・・・

その作曲家の代表と言えばヨハン・シュトラウスでしょうね。


しかし、これだけ多くの作曲家が居たのですが、その内生粋のウィーン子の作曲家はシューベルトたった一人です。


気が弱く優しかった彼の音楽には激しい箇所が見当たりません。

それでも怒りも表現しているのですが、やや控えめにアタックされます。


あの有名な完成された「未完成交響曲」でも、1楽章でサラサラと舞う落ち葉のような表現を淡々と奏で甘美なメロディが続きますが、

その内辛かったことや悲しかった事などが思い出され、それを断ち切るかのように

ジャ~ン、ジャ~、ジャ、ジャンと刻まれますが、決して刺激的ではなく慎ましい表現です。


31歳という早世ながら彼の作品はピアノ曲を初め室内楽や交響曲、そして宗教音楽まで幅広いジャンルに跨っていますが、

彼の最大の功績は何といっても“歌曲”でしょう。


「美しき水車小屋の娘」、「冬の旅」、「白鳥の歌」に代表される歌曲集を初め、

何と600曲以上の歌曲を作曲しています。


彼は天性のメロディ・メーカーで歩いているだけでも、そのテンポや雰囲気から自然に次から次からとメロディが浮かんできたそうです。


田舎道を散歩していたある時、庭先から洗濯をする女性の歌声が聴こえてきたそうです。

とても綺麗な歌だったので彼は「その曲は誰の歌ですか?」と尋ねたそうですが、

目をパチクチさせながら彼を指差し「あ、あなたですよ!」と答えたとエピソードが残っています。


メロディに溢れた彼の音楽は、それが交響曲であっても、もし歌詞を付けたら歌えるほどです。

貧しきながらも仲間に恵まれた彼には「シューベルティアーデ」と呼ばれる音楽サロンのような集まりがあり、多くの友人に恵まれていました。


ただ、唯一叶えられなかったのは恋人の存在です。


もし、彼の恋が成就し、結婚そして子供が生まれ、幸せな家庭を築いていたなら、

このような名曲の数々は生れなかっただろうと云われています。


憧れはそのまま遠い所で夢として残っている方が、綺麗な思い出だけが膨らんで行くのでしょうね・・・



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by Atelier-Onuki | 2022-02-22 01:25 | コラム | Trackback | Comments(0)
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