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ベルリオーズのこと (6月のコラムから)

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フランスの作曲家ベルリオーズは他に類を得ないほどの奇才で奇想天外な曲を多く作曲しました。


時代はやっとロマン派に入った初期で、例えば代表作の「幻想交響曲」は1830年初演ですから200年近く前で、

これはベートーヴェンの「弟9番」の交響曲初演からたった6年しか経っていません。


ベートーヴェンもこの曲では交響曲に合唱を加えるという新しい試みもしていますが、

ベルリオーズの「幻想交響曲」では、まるで一足飛びに新時代に入ったような奇想天外な発想で展開されます。


まず交響曲の概念になかった物語を取り入れ、楽章も5楽章という新しい構成です。

また、この時期、管楽器は新しい楽器が発案されたり、従来の楽器も飛躍的に改良され演奏時術が向上し、

作曲家の創作意欲を掻き立てています。


また、後にワグナーが提唱したライト・モチーフ(一定の人物や状況を象徴的に表すメロディで繰り返し現れる)ですが、

その50年ほど前にもうイデー・フィクセという言い方で効果的に多用されています。


楽章には其々タイトルが付けられ場面の設定を作曲家自ら解説をしています。


さて、ベースになった物語は、ベルリオーズ自らの失恋体験をもとに構成されています。

イギリスからやって来たシェイクスピア劇団がパリで「ロメオとジュリエット」を公演しますが、

それを観たベルリオーズはジュリエット役のハリオット・スミッソンにすっかり惚れこみ、

あの手この手で接触を試みますが、相手にされず振られてしまいます。

失意のどん底に落ちた彼は、なんとアヘン自殺を試みます。(実際には未遂か・・・)


ただ、致死量には足りず生死境をさまよう内に悪夢が襲い、夢の中で彼女を殺してしまいます。

罪に問われ、結局は断頭の刑に、一瞬現れる彼女の面影も一刀両断、オーケストラの全奏で打ち消されます。

そして最後は魔物の饗宴と進んで行きます。


この曲は何といっても音楽がハチャメチャでサイケデリックな世界へと引きずり込まれます。

3楽章「野の風景」ではコーラングレの哀愁を帯びたメロディと舞台裏で応答するオーボエは牧童のやり取りが叙情的、

最後にティンパニー4セットでの遠雷の表現など味わい深いものです。


最終楽章では魔物の饗宴は音の洪水となりますが、コル・レーニョ といって弓の木の部分で弦を叩き、

骸骨が踊り、骨がカチャカチャ当る様を表現するなど聴き所満載です。

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追記 : このスミッソンとは後々、結婚するまでに至りますが、言葉の壁もあり
     結局は不幸な結婚生活で早々に離婚をしてしまったそうです。
     彼らが暮らしたモンマルトルの家はユトリロが描いていていますが、
     実際、訪れた処、もうそこには跡地であるとのプレートが立っているだけでした。
     人気曲だけに録音は物凄くたくさんありますが、私はミュンシュとパリ管の一枚を
     愛聴しています。

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by Atelier-Onuki | 2022-06-21 00:03 | コラム | Trackback | Comments(0)
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